85話
「音楽を聴く…意味が分からん…たっく、本を読むなんて回りくどい事をさせやがって…」
ハジメは本を読み終わると、動く椅子から飛びのきアルバスのもとに向かおうとするが飛びのいた椅子がハジメめがけて突進してくる。
「おいおい!ウソだろっ!」
しかし、椅子はハジメの言葉を理解していないのか勢いを緩める様子はない。ハジメも無駄だとわかると、方向をかえ椅子の突進から走って逃げる。
入り組んだ迷路のような本棚で椅子と鬼ごっこをするハジメ。しかし、椅子は本棚に突撃し、撃破しながら突っ込んでくる。すると、突然入り組んだ迷路のような本棚はウソのように真っ直ぐになった。両サイドには本棚があり、前にしか道はない。そして、後ろからはスピードを緩めない椅子が迫る。
「だあああ!畜生!!!」
『達人の旋律』を聞きながらひたすら直線を走る。500mほど走ると、急にあたりが開けた。
「騒がしいね。ハジメ君」
「はぁはぁ…お前がやったんだろ…アルバスっ!」
「まあまあ、そんな怒らないでくれ。君もどうだい?」
そういうと、机の上のティーカップにお茶を注ぐ。一連の動作が、無駄がないかつ綺麗だった。
ハジメが見惚れていると後ろから走ってきた椅子の突進にぶつかりハジメは吹き飛んだ。
「おやおや。大丈夫かい?」
「だ、大丈夫じゃねーよ…」
吹き飛んだ先には本棚があり、本のおかげで衝撃が吸収されたようだ。
ハジメはため息をつきつつ、アルバスが座っている机に向かう。椅子も飽きたのか、机に向かう。
ハジメが机につくと、椅子がふとももに当たったので腰かける。
ふと、横をみると泣きながらケーキを食い漁る影子がいた。
「おい!アルバス!影子に何したんだ!」
「だ、大丈夫っ…ひくっ。嬉しいの…ひくっ!」
頬をケーキで膨らまし、両手に持ったフォークを机に立てて言う影子。しかし、口調から本当に泣かされたわけではないようだ。
「そうか。聞きたいことはすんだのか?」
「うんっ…ぐすっ…」
「そうか。ケーキうまいか?」
「うん…」
「俺にも一口くれないか?」
ハジメはいたずらに、口を開けると、影子はそっとケーキを一口サイズに切り口に運んでくる。ハジメの口にあともう少しというところで、横からアルバスが口を広げてケーキに食らいつく。
「うーむ!やはり、うまいな」
「お前ってやつは…はぁ…」
「もぐもぐ…ゴクリ。それで、本はどうだったんだい?」
「わけわからん。過去の話ばかりで、参考にならん。てか、神曲を聞いても自我を失わない方法がわからん」
「書いてあったと思うけど。まあ、知りたいと願うものには教えてあげないとね、知識を持つものとしての義務だもんね」
そういうと、アルバスは椅子から立ち上がり指を弾く。すると、本が広がっていた世界は一瞬で跡形もなくなくなり、今見えるのはどこまでも広がる高原だ。
「それじゃあ、『神曲』の 《地獄篇》を聴いてごらん」
「だから、その聞くってなんだよ!」
「そうじゃない。聴くんだ。」
そういうと、アルバスの姿がドロドロに溶け地面に吸い込まれた。同時に地面から黒い肌をもった犬の頭に人間の体をもつ人間もどきが次々に出てくる。
マジかよ…




