トラック18 リターンとリスク
「そ、そんなことより、みなさんどうしたんですか?」
「ワシが説明しよう!」
幼女が掛け布団をガバッと退かしベッドから飛びおりた。そして、指を軽く弾くとカーテンが閉まり一気に部屋が暗くなった。目の前には立体プロジェクターのように映像が流れる。
映像は、炎の海に立っている俺…みな倒れている光景…俺がやったのか?…全く記憶にない…
リカは映像と俺の表情を見ながら、震えてる。
「大丈夫か?…」
「う、うん…あれは、ハジメっちじゃないよね…?」
「わからない…覚えてないんだ…」
「そう…」
30分程度で映像が終わった。カーテンが再び開き、窓から光が差す…
「以上だ!ハジメ!わかったか?」
「あ、ああ…俺が…マジで俺がやったのか?」
「そこのロリちゃんが怪我人を一瞬で治して、火事になったタタラ場を全て元どおりに直した…化け物よ…」
幼女は、ルーシー嬢のロリという言葉を聞いてほおを膨らませる…
「誰がロリだぁ!…ナメとるな?」
「ごめんごめん。かわいいわよ」
「うん?かわいい?しょうか?まあ、わかれば良い!」
幼女は顔を赤くして満面の笑みだ。単純なやつだな…
その前にこの幼女は誰なんだ…頭の角、指を弾くだけでカーテンを閉める、ヤツハ嬢の突進を逸らしたあの音…あの時聞こえた音は、俺のスキルと同じ感覚だった…まさか、こいつも音楽を使えるのか?…
「なあ、お前は誰なんだ?…」
「ああ!忘れておったわい自己紹介が遅れたな!!」
そう言うと幼女は、急に宙にフワフワと浮くと俺の目の前までくる。しかし、止まれないのかフラついている
「ワシはアムドゥスキアス!親友の、ブレーメンにちと頼まれてな?」
「お前、喋り方変えられないのか?何を言っているかわからん…」
ピオが指摘すると、口を尖らせ指を弾く。すると、ファンファーレの音とともに煙が幼女を包み込む。煙が消えると、一体のユニコーンが立っていた。雄々しい一本の角に真っ黒な毛並み…おお!黒いユニコーン…
「ああ!やはりこの姿が一番良いな!おっと、改めようか…ワシは悪魔・アムドゥスキアス。爵位は公爵じゃ。」
「あ、悪魔だって?」
「ああ。悪魔じゃ。まあ、ワシは何もせぬよ。命も興味はない。」
「それで…悪魔が「おい!馬野郎!今ブレーメンって言ったな!」」
ゲルグが俺の言葉を遮ってくる。俺とヤツハ嬢とリカ以外が、アムドゥスキアスの『ブレーメン』発言から目を見開いて固まっている。
ああ…確か音楽の神であるブレーメンってこの国の建国の中心人物だったんだよな…
「ああ。そうじゃ!ブレーメンじゃが?」
「ど、どこにいるんだ!教えてくれ!なあ!」
ゲルグがユニコーン状態のアムドゥスキアスの首を掴みかかる。それを、ルーシー嬢とドワーフが止めにかかる…
「は、離せ小僧!ブレーメンには会えぬ。奴は神になったからの。」
「な、なぜ!なんの!いつ!」
「聞けと言っておるじゃろ…!ブレーメンは、16年前に音楽の神になった。お主らに理由は言えぬ。じゃから、肉体はもうない」
すると、止めていたドワーフとルーシー嬢が吹き出す。表情からみて嬉しそうだ…しかし、ゲルグは力が抜けたのか肩を落としている。
「がはははっ!ブレーメンめ!神になったか!」
「ふふふ…ブレーメンさんが音楽の神様…」
「16年前…先輩…」
「まあ、それぞれ思うことはあると思うが、今はハジメの話じゃ。少し、二人にしてくれんかの?」
そういうと、すぐにヤツハ嬢が俺を抱きしめアムドゥスキアスを睨む…
俺はヤツハ嬢を、ポンポンと背中を叩き軽くうなずくと複雑そうな表情になり、渋々解放された…
「ふざけるな!もっと!先輩の話をっ!」
「落ち着け!ゲルグ!…」
「ちょっとまて。やはり…こいつは勇者なのか…」
ピオさんが低い声で聞くと、ユニコーンはコクリと頷く…。他のみんなは、真剣な表情で部屋から出て行く…
二人きり?いや、一人と一匹?か?
「では、お主が何故、ああなったかを説明せねばな…その前に何か変わったことはあったか?」
「あった。スピーカーで音楽を流そうとしたら、例えることができないくらいの音が聞こえた…」
「やはり、その音から説明しよう。その音は、"蝕蟲の鳴き声”と言って…この世界中のの生物の断末魔の叫びを合わせたものだ。聞いたものは自我を失う。自我を失ったものは、"触蟲の鳴き声”のさらなる音の強化のため断末魔の叫びを集め始める…意識がなくなっても音によって操られる。操られた後、自我を取り戻す…苦痛じゃな…多くの人間が犠牲になったのぉ…夫がこの音を聞き、愛する親を子供を…妻を殺した。一番ひどかったのは、王国騎士団の副団長だったか?部下を殺し、守るべき国民を殺した…最後、自ら腹を切り団長に介錯を頼んでおったの…」
どこか遠くを見ている、アムドゥスキアス。どこか、さみしそうだ…
「その”蝕蟲の鳴き声”は消せないのか?」
「”蝕蟲の鳴き声”は、『神曲』じゃから消すことはできん。『神曲』とは神の音楽じゃ。神曲はもともとあった{地獄編}・{煉獄篇}・{天国編}に加えて、ブレーメンの作った{現世編}じゃ…。因みに”蝕蟲の鳴き声”は{地獄編}じゃ…。かつて魔王が好んでいた音楽じゃ。まさか、こんなところで見つかるとわの…音楽神のブレーメンは、『神曲』を編曲し安心できる音楽に変える…それがあいつの神になった理由じゃ…」
そうだったのか…。チートには欠点があるけど…音楽は身を滅ぼす…てか。陽気なものだと思っていたな…音楽って何なんだ…
「なんで、そんな強い『神曲』を…ブレーメンは、俺に?…」
「ブレーメンは『神曲』の編曲で忙しい。しかし、この世界では『神曲』の危機があるから、お主に託したのじゃ…音楽好きのお主なら。との?しっかし、このザマか!あいつも見る目がないの〜」
ほっとけよ…こいつ…本当に悪魔だな…
「まあよい。話がずれてしまったな。その、"蝕蟲の鳴き声"は『神曲』を聞いた者の心に入り込む。まあ、ほかにも厄介な音楽はあるが…今はいいじゃろ。お主は『神曲』を扱えるからの…一番危険性があったのじゃが…ブレーメンめ…爪が甘い…」
「なら、どうすりゃあいいんだ?」
「そのためにワシがわざわざ来たのじゃ。」
ファンファーレの音とともに、ユニコーンの姿から再び幼女の姿に変わった。
今日中に次話投稿するつもりです。




