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クレイン・クレイドル  作者: 倉利来
第1章 エンドレス・ペイン
7/8

第2話 絶望との抱擁 3

カイが施設に入れられて1ヶ月が過ぎた。

今日は特別演習である。



ため息を吐きながら、実技場へ向かう。



周りには子供たちが20人ほど集まっている。

中には金髪の女子もいる。


カイは周りをチラチラしていただけなので、

髪しか見えなかったが。


だが、ドリィの姿が見当たらない。

それどころか半数ほどが見知らぬ顔だった。



しばらく辺りをキョロキョロ見回していると



中年がやってきた。

気だるげな顔で髪はボサボサだ。

名前は───




ーーーモルト教官は、今日も変わらないな。

二日酔いなのかな。


カイは相変わらずの感想を述べる。

ということは、毎日二日酔いだ。




モルト教官がやる気0で話す。


「あー、よし、全員揃ったな?これから、あー、バスへ乗り込む。あー、行先は言えん。んー、加えて一人一つだけ、基礎装備以外の装備品を持ち込める。以上だ。」




「もうちょい説明あんだろうがよ、全く」


カナタがいつものように悪態をつく。



「それも訓練の一貫ってことでしょ?」


カイが呆れ顔で答えると、


「まぁ、そう考えることにするわ」


という、ありきたりな返事が来た。


■■■



周りが次々と自己紹介していく中、カイだけは話しかけることができずにいた。


昔から初対面は苦手だ。




一通り顔合わせが終わったあと、教官の説明通りそれぞれ武器庫を漁り始める。


「カイ、お前は何にするんだ?」


「秘密。カナタは?」


「俺はライフルかな。」


「お前、射撃得意だもんな」


カイは、ぶっきらぼうに話す。

すると突然短髪の少年は、


「...ところでよーカイ。」



ーーーなんだコイツ急にニヤニヤしだして。



「バスの席なんだけどよ、俺は絶対お前の隣な?、絶対だぞ? フフッ、逃がさないぜハニー?」



カナタは肩を抱いてくる。



ーーーやめろ。僕にそう言う趣味はない!



「やめろよ、周りからそういう噂出てるんだから。」


カイはしっかりと拒否する。


カナタの陽キャぶりには昔から

辟易へきえきしていた。


しかし友達が少ないカイにとっては羨ましい限りであった。


施設に入って1週間後、カナタが居たことに心底驚いた。

だが、天涯孤独の身になったカイには非常に有難く感じた。


「恥ずかしがるなよぉ」


カナタがカイの肩をさすさすしてくる。





ーーー......?こいつがそういう趣味なのか...?


カイは内心で恐怖を覚える。


「べ、別に恥ずかしいわけじゃ...」


カイは俯きながらもじもじした。


完全にウケの行動だ。

カイは天然で、保護欲をそそるのかもしれない。


周りの孤児たちがジロジロとカイを見てくる。


ーーーやめろ、僕はちゃんと女の子が好きなんだ!


内心で誤解を必死に解こうとするも、人に話しかける覚悟は無いのであった。


■■■



「あー、武器とか装備、漁ったかー?

じゃあ、乗れー」


相変わらずやる気のない声が聞こえてくる。


子供たちはそれぞれバスへ向かう。

が、教官を乗せずに出発した。

周りが動揺する。



ーーーまぁ、無線があるから大丈夫だろ。


カイは自分を納得させるように言い聞かせる。


しかし、車内は不可解な点が多い。

周りの窓は一切光を通さない。

明かりは車内の照明だけだ。


ーーー...不気味だ。


恐らくカイだけがそう思っていたであろう。


なぜならば───



「ねぇ、これ何の訓練なんだろう」

「知らね、なんか野草採取とかじゃね?」

「食べられる昆虫採取かもな!アハハハ!」

「おしっこ、したい」





他の子供は騒いでいたからである。


ーーー能天気なやつらだ。


だが、家族を失ってもこれだけ明るくいられるのは施設のお陰だろう。


衣食住は完璧。訓練は厳しいが教官は基本優しい。

怒鳴られることはほとんど無い。

ましてや体罰なんて聞いた事がない。恵まれすぎてて逆に怖い。


「なぁ、カイ」


何やら真剣な表情で、短髪の少年は切り出す。


「なに?」




「何があっても俺がお前を守るからな」


カイは、急にどうした?と問いたくなったが、空気を読んで、


「大丈夫、ありがとう」


そう答えた。


さっきまであんなテンションだったのに、急に真面目になる。

長年の付き合いとは言え、未だに読めないやつだ。


カナタと他愛のない会話を続けていると、突然耳鳴りがした───

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