第2話 絶望との抱擁 3
カイが施設に入れられて1ヶ月が過ぎた。
今日は特別演習である。
ため息を吐きながら、実技場へ向かう。
周りには子供たちが20人ほど集まっている。
中には金髪の女子もいる。
カイは周りをチラチラしていただけなので、
髪しか見えなかったが。
だが、ドリィの姿が見当たらない。
それどころか半数ほどが見知らぬ顔だった。
しばらく辺りをキョロキョロ見回していると
中年がやってきた。
気だるげな顔で髪はボサボサだ。
名前は───
ーーーモルト教官は、今日も変わらないな。
二日酔いなのかな。
カイは相変わらずの感想を述べる。
ということは、毎日二日酔いだ。
モルト教官がやる気0で話す。
「あー、よし、全員揃ったな?これから、あー、バスへ乗り込む。あー、行先は言えん。んー、加えて一人一つだけ、基礎装備以外の装備品を持ち込める。以上だ。」
「もうちょい説明あんだろうがよ、全く」
カナタがいつものように悪態をつく。
「それも訓練の一貫ってことでしょ?」
カイが呆れ顔で答えると、
「まぁ、そう考えることにするわ」
という、ありきたりな返事が来た。
■■■
周りが次々と自己紹介していく中、カイだけは話しかけることができずにいた。
昔から初対面は苦手だ。
一通り顔合わせが終わったあと、教官の説明通りそれぞれ武器庫を漁り始める。
「カイ、お前は何にするんだ?」
「秘密。カナタは?」
「俺はライフルかな。」
「お前、射撃得意だもんな」
カイは、ぶっきらぼうに話す。
すると突然短髪の少年は、
「...ところでよーカイ。」
ーーーなんだコイツ急にニヤニヤしだして。
「バスの席なんだけどよ、俺は絶対お前の隣な?、絶対だぞ? フフッ、逃がさないぜハニー?」
カナタは肩を抱いてくる。
ーーーやめろ。僕にそう言う趣味はない!
「やめろよ、周りからそういう噂出てるんだから。」
カイはしっかりと拒否する。
カナタの陽キャぶりには昔から
辟易していた。
しかし友達が少ないカイにとっては羨ましい限りであった。
施設に入って1週間後、カナタが居たことに心底驚いた。
だが、天涯孤独の身になったカイには非常に有難く感じた。
「恥ずかしがるなよぉ」
カナタがカイの肩をさすさすしてくる。
ーーー......?こいつがそういう趣味なのか...?
カイは内心で恐怖を覚える。
「べ、別に恥ずかしいわけじゃ...」
カイは俯きながらもじもじした。
完全にウケの行動だ。
カイは天然で、保護欲をそそるのかもしれない。
周りの孤児たちがジロジロとカイを見てくる。
ーーーやめろ、僕はちゃんと女の子が好きなんだ!
内心で誤解を必死に解こうとするも、人に話しかける覚悟は無いのであった。
■■■
「あー、武器とか装備、漁ったかー?
じゃあ、乗れー」
相変わらずやる気のない声が聞こえてくる。
子供たちはそれぞれバスへ向かう。
が、教官を乗せずに出発した。
周りが動揺する。
ーーーまぁ、無線があるから大丈夫だろ。
カイは自分を納得させるように言い聞かせる。
しかし、車内は不可解な点が多い。
周りの窓は一切光を通さない。
明かりは車内の照明だけだ。
ーーー...不気味だ。
恐らくカイだけがそう思っていたであろう。
なぜならば───
「ねぇ、これ何の訓練なんだろう」
「知らね、なんか野草採取とかじゃね?」
「食べられる昆虫採取かもな!アハハハ!」
「おしっこ、したい」
他の子供は騒いでいたからである。
ーーー能天気なやつらだ。
だが、家族を失ってもこれだけ明るくいられるのは施設のお陰だろう。
衣食住は完璧。訓練は厳しいが教官は基本優しい。
怒鳴られることはほとんど無い。
ましてや体罰なんて聞いた事がない。恵まれすぎてて逆に怖い。
「なぁ、カイ」
何やら真剣な表情で、短髪の少年は切り出す。
「なに?」
「何があっても俺がお前を守るからな」
カイは、急にどうした?と問いたくなったが、空気を読んで、
「大丈夫、ありがとう」
そう答えた。
さっきまであんなテンションだったのに、急に真面目になる。
長年の付き合いとは言え、未だに読めないやつだ。
カナタと他愛のない会話を続けていると、突然耳鳴りがした───




