第1話 雪解、迅雷、そして廻離(かいり) 2
「ガチャ」
玄関の扉が開き、冷たい外気と共に
妻が帰ってきた。
ジンは即座に
「ユキーーー!」
と叫んで抱きつこうとしたが、思いっきりビンタされた。
「あ、ごめんなさい。つい反射的に」
ーーー俺、そんなに拒否されてたの?
ジンは酷く落胆する。
ーーーでも、夫婦仲は悪く無いよな?...
そうだよな!?
ジンは再び、自問自答を繰り返した。
「あれ?カイは?」
ユキが怪訝そうに当たりを見回す。
「すまん、俺の料理で」
ジンがそれだけ言うと納得したようで、ユキは
リビングへ向かっていった。
こんなありふれた光景がジン•マスダの日常である。
ーーー邪魔者がいるとするならば、
いや、考えるのはやめよう。
ジンはそう心中で呟いた。
■■■
「もう、なに?この物体Xは?」
「ハンバーグだよ、お袋。」
カイが即答する。
「もう、あなた料理なんて出来ないんだからカイの前で見栄を張らないの!」
「はい、すみませんでした。」
「よろしい」
何故かジンはユキに頭を撫でてもらっていた。
ーーーきっと、俺は今世紀最大に幸せな顔をしているだろう。
「もう、親父は相変わらずガキだな。」
「カイもさっき俺になでられて喜んでただろ?」
「ッ...!喜んでねぇし!」
「そうか。じゃあこのなでなでは俺専用だな。」
ジンは、カイを優越感に満ちた目でニヤリと見つめる。
頭上ではユキのため息が聞こえた。
しばらくすると我慢できなくなったカイも、ユキに頭を差し出していた。
「はいはい、2人共よしよし」
ーーー自分で言うが妻はなんでこんな俺と結婚してくれたんだろう。
と、毎度のことながらジンは思っていた。
■■■
ユキが改めて料理を作っていると、一斉に携帯が鳴り出した。
「キュオォォォォォ!キュオォォォォォ!同盟軍による攻撃を確認!同盟軍による攻撃を確認!今すぐ地下シェルターに避難してください!」
ーーーなん、だと。
同盟軍━━━ロシア連邦、中国、北朝鮮。
ここ日本には数年、近づきもしていなかったはずの連中が、なぜ今。
「今すぐ避難だ!」
ジンはすぐさま声を張り上げた。
ーーー正に青天の霹靂、
こんな幸せな時間にとんだ邪魔者が入ってしまったな。
ジンはため息を漏らす。
地下シェルターがあるから大丈夫だとは言え、油断できる状況ではない。
「親父...」
カイが心配そうな顔でジンを見つめる。
「大丈夫だ、俺がついてる。ユキ、カイ外に出るぞ!」
ジンは妻と息子を連れてリビングから玄関へと駆ける。
ドアノブに手をかけ、扉を開けた瞬間───




