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クレイン・クレイドル  作者: 倉利来
第1部第6章:秘密話
22/25

第21話 ガラスの思い

今日から第1部第6章でございます。

カイは眼前の少女から一切目を離さないでいた。

彼女の瞳の震えを感じる。

しかし、彼女も必死に自分を見つめているのが分かった。

自分の嘘を───いや、罪を受け入れるように。


「秘密にしてて、ごめんなさい……私、以前の訓練でカイ君を試したんです。」


(試した……?一体どういうことなんだ……?)


カイは顎に手を当てて考え込んだ。

それと同時にグラシィも何かを思い出しているように俯く。


彼女は一体何を思い出しているのだろうか───


今から数週間前、私は偉い人に呼び出されました。


内容は、とある男の子の護衛です。

男の子の名前は、カイ・マスダ。

写真を見せてもらいました。

少しくせのある艶やかな黒髪で、瞳は薄紫。

それに、女の子のような綺麗な顔をしていました。

私は、とある男の子のことを思い出し、うっとりしてしまいました。

偉い人が話しています。ですが、私は上の空です。

可愛いなぁ。

それしか考えられません。


「あー、そいつには最後死んでもらうけどな」


偉い人が訳の分からないことを言った瞬間、我に返りました。

もう一度、偉い人に説明してもらいます。

しかし、何度聞いても結果は同じです。


「あー、なんだお前、不満あるのか。あー、でも従わなかったら、分かるよな?」


護衛という言葉を信じた私がバカでした。

私は従うしかありませんでした。


更に何週間か過ぎて、訓練の時間がやって来ました。

私は一目見て、カイ君のことが分かりました。

でも、人見知りな私は話しかけることはできませんでした。


しばらくすると、みんな武器庫を漁り始めます。

私は男子二人の会話をこっそり盗み聞きしていました。


「カイ、お前は何にするんだ?」


「秘密。カナタは?」


「俺はライトセーバーかな」


「お前知ってんのか?てか、そんな宇宙戦争っぽいのはここに無いだろ」


「ははっ、冗談だよ。やっぱ……これしかないっしょ」


「お前、射撃得意だもんな」


あれは、カイ君と……もう一人の男の子は直接会ったことはありませんが、協力者です。

偉い人が言っていました。

名前は、カナタ・モノミ。

悪い人では無さそうですが、少し苦手です。

私はカイ君みたいな大人しい人とお喋りするのが好きです。

でも、今日は……


「うっ……」


涙が出そうになりました。

だけど、我慢しなくちゃ。

逆らったら死ぬよりも酷い目に遭わされます。

私は武器を取るフリをして武器庫を後にします。


後ろからカイ君の叫び声が聞こえたのは気のせいでしょうか?

私はそのままバスに乗り込みます。


しばらく一人でぼんやりしていると、想定外のことが起きました。


「うわぁぁぁぁぁ!」


「運転手さん、殺されちゃったよ!」


「どうしようどうしようどうしようどうしよう」


みんなの叫び声が聞こえます。

これは偉い人も言ってませんでした。

私は少し動揺しましたが、カナタ君は全く大丈夫そうでした。


「みんな、落ち着け!非常出口から外に出るぞ!」


そう言ってみんなを誘導します。

すごいなぁ。

私には絶対できません。

私はカナタ君のリーダーシップに感心しながら外に出ました。

風が強いせいで、周りの声は全然聞こえません。

カイ君とカナタ君も降りてきます。

私はカイ君をぼーっと見つめます。

本当にあの子に似ています。

懐かしい思い出に浸っていると───


「みんな、とにかく岩壁に隠れるんだ!5人位のチームに分かれて!それから配給のトランシーバーを装備するんだ!」


カナタ君のありえない大声が聞こえました。

私は割と近くにいたので、鼓膜が破れそうでした。

やっぱり少し苦手です。

でも流石です。

20人ほどの小隊は彼の一声でまとまり始めます。

私は、そのままカイ君とカナタ君のもとへ駆け寄ります。


しばらくして、偉い人の声がトランシーバーから流れます。


『あー、おう、お前ら聞こえてるか。言い忘れてたが、あー、今日は実践訓練だ。架魂カコンが使えるやつは惜しみ無く使えよ。えーと、敵軍を殲滅するまでこの訓練は終わらないからな。じゃあ。』


私は、とっさに運転手さんのことを話そうとしましたが、我に返りやめました。

後で偉い人に聞いたら、本当に事故だったそうです。


程なくして、カナタ君がチームのみんなに呼びかけます。


「この中でカコンを使えるやつはいるか?」


『よし』と私は心の中で思います。

偉い人の言った通りになっています。


「あ、あの……私、使えます。グラシィ、グラシィ・ラーレです。」


私は震えた声で言いました。


続けて、カナタ君が自己紹介します。

カイ君も少し目を逸らしながら言います。


「よ、よろしく」


可愛いなぁ。

でも、カイ君の表情を見ている内にやっぱり悲しくなってしまいました。

私の思いには気付く訳もなく、カナタ君が狙撃の準備をします。

私は、カコンを使ってるフリをすればいいです。

ちなみに、カナタ君のカコンは十数km先まで見えたり、透視もできるそうです。


えっちです。

やっぱり少し苦手です。


気付けば、カナタ君の狙撃に感動したフリをした他のグループがやって来ました。

ん?でも一人本気のような……。

そんなことを考えているうちに一人の女子がカイ君に声を掛けます。


「ねぇ、カイ君?高倍率の双眼鏡持ってるの君だけだったよね。少し貸してくれないかな?」


あれ?おかしいな。

私が聞いたのは、カイ君と一緒に敵陣へ向かいその後で……。

辛くなるので思い出すのはやめました。

気になってカナタ君の方を見ると、彼も驚いていました。

一方のカイ君はドギマギしていました。


「あ……いいけど」


やっぱり女の子に慣れていない様子です。


こんなに美形なのに。

しかし、直後───


「待って、なんで僕が高倍率の双眼鏡を持っていることを知ってるの?」


私は驚きました。

カイ君は私が思っていたよりも頭の回転が速かったからです。


他の人たちはそれを聞いて、焦った様子でカイ君を取り押さえていました。

偉い人が言っていましたが、他グループの女子が余計なことを言ったようです。


計画の変更がこっそりと伝えられました。

……それも残酷な計画に。


私とカナタ君は、カイ君を拘束するのを手伝いませんでした。

いや、手伝えませんでした。


カイ君がずっと涙目で訴え続けているのを見て、私は泣きそうになりました。

でも、私より酷い状態のカナタ君を見て落ち着きました。

彼はずっと泣いていました。

私は、無敵に思えるカナタ君の弱点を見た気がします。


しばらくして、小隊全員で隠れながら進みます。

それでも銃撃で負傷者は出てしまいます。

負傷者は岩陰に隠して、進みます。


カイ君のことは、体がいちばん大きい男の子が背負っています。

敵陣まであと少しの岩壁まで来ました。

大きい男の子がカイ君を降ろしました。

それを見たカナタ君はカイ君に一言告げます。


「走れ」


カイ君は迷わず走っていきます。

私は隠れながら、慌ててカコンをかけました。

カイ君の体が透明になっていきます。

これで敵に気づかれることはありません。

他の人たちは、カイ君のことは見向きもせず遠くへ避難します。

けれど、私は絶対にカイ君から目を離しません。

だって、離したら敵に気付かれちゃうから。


カコンの身体能力強化もあってか、カイ君はすぐに敵陣まで辿り着きました。

それを見たカナタ君は震える声で言います。


「教官、カイが到着しました」


直後目の前が砂煙に覆われます。

耳を貫くような轟音と、大地が震える余韻が続きます。

でも私は決して目を離しません。

カイ君、そして自分から逃げたくないから。


不安でしたが、砂煙が収まったあと、ちゃんとカイ君は立っていました。

私は迷わず、走り出します。

彼のカコンを知っていても心配です。

痛くて苦しかったはずだから。


ちらっと後ろを向くと、カナタ君がフラフラとした足取りでついてきます。

他のみんなは既に、見えないほど遠くに逃げています。

自分たちの罪から目を背けるように。

私は、カイ君の所まで辿り着くと今までの我慢が全て壊れて、思わず抱きしめてしまいました。


「ごめ、ごめんなさい……ご、ごべんなざい」


涙が止まりません。

カイ君が生きていて本当に良かった。


「グラシィ、さん……?」


カイ君は戸惑っているようです。

肌の温もりをものすごく感じます。


ん……??肌の温もり?


「は、はい。グラシィです……ってええ!」


そうです。あまりにも温もりが伝わりすぎていることに気付くべきでした。


初めて男の子のをあんな距離で見ました……一瞬ですが。

私は顔を覆ったまま、支給品の衣類を渡します。


■■■

私は不意に過去のことを思い出していましたが、そんな場合ではありません。


今からカイ君に全部話さなきゃ。

そう思い改めてカイ君の顔を見ます。


カイ君と目が合いました。

やっぱり可愛いです。

でも、恥ずかしいです。


だけど、ここで逃げたらカイ君に嫌われちゃう。

私は頑張って中々開かない口を開きました。

頑張れグラシィ!!

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