第12話 夢と発現
混沌とした不明瞭で不気味な空間にいる。
そこに手を伸ばすだけで触れられそうな、
だが手を伸ばすとすぐに消えてしまいそうな、
そんな不可解な現象を予測してしまう。
(僕は、その光に手を……)
◆
僕は歳下の女の子と公園で砂遊びをしていた。
髪は綺麗な黒で、瞳は美しい茶色。
「はい、これ───のぶん」
女の子は僕に砂団子を渡してきた。
僕は食べるふりをする。
「うん、さすがお前だな」
「えへへ……それほどでも」
女の子は僕が褒めると恥ずかしそうに言った。
だけど、そんな幸せを壊すように男女三人組がやってくる。
「あっれ〜また───と遊んでるの?あ、そっか!友達いないもんね!」
「なんで女の子なのに自分のことボクっていうの?恥ずかしー!」
「俺が本当の遊びを教えてやるよ!あはは!」
女の子はすぐに泣き出してしまった。
「ふぇ……ボ、ボク……ぐすっ、
───みたいに強ぐ……なりだぐで……ぐすっ」
それを見て僕は我慢ができなかった。
唯一いる男の子に飛びかかる。
女の子を守る、それもあるけど何より悪者が許せなかった。
「やんのか?お前!」
男の子は体が大きいけど、僕は怯まず殴り続けた。
僕も殴られるけど、それよりしつこく。
他の女の子たちはすぐに逃げていった。
でも、僕を"───"と呼ぶ女の子だけは逃げなかった。
「がんばれ!負けるな!」
その言葉で僕の拳に最大級の力が入った。
気づけば男の子の顔は腫れ上がり───
「きょ、今日はこの辺にしといてやるよ……」
そう言って逃げていった。
それを見た女の子はすぐに僕のもとへ駆け寄ってきた。
「だ……大丈夫?」
「あぁ!全然平気だ!
お前の良さを分からないやつには教えてやらないとな!」
僕は女の子の頭を撫でる。
「だから、もう泣くな」
突如、僕の世界が遠くなる───
『───とう───ちゃ───だ───き!!!』
『───も、───だぞ!』
『───が───もん!』
◆
「えっ……な、なんだよこれ……」
カイは涙が止まらなかった。
拭えど拭えど溢れてくる。
寝起きに泣くのは人生で"初めて"だ。
こんなに虚しくて、やるせない気持ちも初めてだ。
「だ、誰なんだよ!僕はあんな女の子知らない!」
その言葉とは反対にカイの涙はしばらく止まらなかった。
まるで大切な"誰か"を思い出そうとしているように。
時間が経ち、ひとしきり涙が落ち着くと夢の内容を振り返る。
だが、断片的にしか思い出せなかった。
「なんだったんだ……まるで自分じゃない"誰か"の……」
混乱が拭えなかったが、夢の中で唯一"興奮"した場面は覚えていた。
それは───
「悪者を退治するのは最高に気持ちが良いな」
先ほどの涙を忘れたような笑顔でカイは呟いた。




