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クレイン・クレイドル  作者: 倉利来
第1部第3章:萌芽する何か
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第9話 親友の思い

カイは薄紫の眼差しで、身も凍らせるほど冷酷に眼前の人物を見つめる。

そして、そのままぶっきらぼうに言葉を放った。


「一応、話だけは聞いてやる」


カナタは俯いたまま、「ありがとう」と答えた。

握りしめた拳が小刻みに震えている。

反対に虚ろな瞳は焦土の一点を見つめている。

カナタの心はまるで、今この場所に存在しないようだった。


流石の彼でも今回ばかりは、はらわたが煮えくり返った。


「どうしてですか!」


彼は非情な王に問う。それに対し、王は一言告げた。


「合理的な判断だよ。」


王はまるで彼の様子をうかがっているかのようだ。

一呼吸置いて更に説明する。


「こうでもしなければ、"少年"は自分の有用性に気付けないだろう。」


彼は反論しようとするが、それを遮るように王は続ける。


「それにいつまでも臆病なままでは兵力にならんだろう?"少年"のカコンは実用性があるのか、

何度でも生き返るのか、それを今回は試す。」


ようやく王の淡々とした説明が終わった。

しかし、それと同時に抑えていた激情がとめどなく湧き出る。

それが彼の口から意図せず溢れ出た。


「だからと言って、こんな……アイツはまだ11歳の子供です!こんなやり方では心が壊れてしまいます!

俺は……俺はようやく生きる意味を見つけたんです!アイツが俺の前からいなくなったら、俺は生きる意味を失う!」


これほど叫んだのは自分の人生で初めてだったかもしれない。

それもそのはず、彼は"少年"に他の人間には向けない感情を抱いていたからだ。

そのせいで言葉が止まらない。


だが、一呼吸置く。

自分は冷静だ。

そう言い聞かせる。


息を呑み、吐き出し、心の中の怒りという異物を取り除く。

そうすると、思考はクリアになり始めた。


(……むしろこれはチャンスかもしれない。交渉の余地がある。)


彼は、先ほどまでの激情が嘘であったかのように

冷静に話し始めた。


「どうしても今回の訓練を行うというのなら、一つ"約束"してください。」


王は彼の言葉に対して不敵な笑みを浮かべた。


「先ほどの叫びも含め、お前が私に口答えするとはな……フ、フフッ……ハッハッハ!面白い!聞いてやろう!」


なぜだろうか、王は彼の言うことに賛同した。

普段はあれだけ非情だと言うのに。

気に入られているのだろうか。


いや、王にとっては───に過ぎないのかもしれない。


突如、彼の思考が途切れ始める───


「カ───の───を、───ください。」


「それはできんな、"彼女"は私の───」


「では、どうすれば?」


「もし、"少年"が"彼女"を倒すことができたなら───」


カナタはハッと気付く。


(俺は今、どこにいる?)


乾いた空気が、それを運ぶ風が頬を撫でる。

太陽の日差しがうるさい。

やけに口が乾いている。


そうだ、今からカイに話さなければ。

緊張などとっくに克服したと思っていたのに。


「どうした?早く言ってみろよ。僕を見殺しにするよりは簡単だろ?」


カイは今までにないほど冷たい声で自分に言う。

その声に威圧され、思わず息を呑む。

乾いた喉が余計刺激されるのを感じた。


しかし、それをきっかけに集中できた。

緊張という異物を中和する行為に。


(よし、大丈夫だ。)


その確信とは裏腹に、カナタは俯きながら震える唇を開く。


「今回の訓練はお前のためだったんだ」


ようやく発したその言葉に自分でも吐き気を覚えた。


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