喪失の名
「私が選ばれるはずだったんだ。」
ウラガフは虚ろな目で呟いた。
「私が……エンルフに。」
「何を言ってる。ラガルはどうした!」
「ラガル……?コルプトのことか……。」
ウラガフは口を震わせながら、言葉を紡いでいく。
喉を抑えていたイーヴァの手に雫が落ちた。
見れば、ウラガフの頬に涙が伝っている。
「やつに封印を解かせた……。」
「なんのだ!」
「……エンルフの魂だ。」
それを聞いてイーヴァの表情は険しくなる。
何か嫌な予感が背を伝った。
「コルプトに取られた……何もかも!」
自棄になったかのように言葉を吐き捨てるウラガフ。
その声は荒んでいた。
そしてウラガフは項垂れる。
彼の体から力が抜けていくのをイーヴァは感じた。
「……取り込んだんだ。」
勢いが落ちたウラガフの声が響く。
「エンルフの魂を……あいつが。」
そこまで言ってイーヴァがウラガフを解放する。
表情は呆気に取られていた。
ケホケホと咳をするウラガフに、メフェルは近づいて聞いた。
「どこにいるのラガルは。」
「わから……ない。」
涙目で見上げるウラガフに、メフェルは手を差し伸べる。
そのまま引き起こすと、辺りを見渡す。
気がつけば看守がいなかった。
「私たちに敵対する理由はないわ。」
メフェルは看守のいた付近に、自分の武器を見つけると手に取る。
各々の武器を回収すると、牢を出るべく階段を登る。
幸いまだ追手は来てないようだった。
「どこへ行くんだ。」
ウラガフがメフェルに問う。
後ろを振り向かないままメフェルは答えた。
「あの人を探しに行くのよ。」
シーナは言い切るメフェルが本気だとわかった。
きっとラガルがどこへ行っても、草の根を掻き分けて彼を探し出すだろう。
そう思うと、敵わないと思った。
「ぼ、僕も探します。」
シーナは口を開いた。
メフェルには敵わなくとも、ラガルへの想いが揺らいでいても。
もしも、ウラガフの言ったことが本当ならば、尚更探さなければいけない。
脳裏にはあの予言の光景が焼き付いていた。
「次はアタシがかっこいいとこ見せなくちゃ。」
ミムラスは赤くなった目を擦りながら、銃を構えてみせた。
イーヴァが、額を触りながら深く頷く。
「私を連れて行け。」
ウラガフが言った。
その言葉にメフェルは眉を上げる。
ウラガフは剣を引き抜くと、地面に立てた。
「私がコルプトを殺す。」
剣が石を打つ音だけが、やけに大きく響いた。




