表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
169/240

顕現

 炎が渦巻き、ラガルの体を包む。

 青い揺らめきは次第に赤に変わり、周囲の物を焦がし溶かしていく。


 ぐにゃりと溶けたように空間すら歪ませる熱。

 ティーソエルは思わず一歩後ずさった。

 ウラガフの肌がチリと焦げる。


 熱さに涙が滲んだ。


 視界が霞んだところで、ラガルの薄青の髪が溶ける様に伸びていった。

 あっという間に腰元まで達した髪は、全体が濃い紫に変わっていく。


 熱風に髪が靡き、瞳が見える。

 その目は相変わらず光を映さなかったが、やけに鋭くなっている。


 ラガルは笑いながら、ぎこちなく手を動かした。

 手を握ったり、開いたりしながら、炎を出しては消している。


「ヘェ……いいじゃん、なかなか。

 ホントだったんだな。秘術ってやつは。」


 妙に軽い声がラガルから聞こえた。

 髪を掻き上げると、彼は周りを見渡す。


 ウラガフも唾を飲んで、言葉が出ない。

 だが、確信があった。

 これは、“コルプトではない”と。


「……エンルフ?」


 ティーソエルが恐る恐るというふうに、聞く。

 ラガルはゆっくりと頷こうとしたが、急にハッとした表情で口を動かす。

 その顔は苦しんでいるようにも見えた。

 

「違う、俺は。」


「すごい!」


 ティーソエルが紅色の頬をして、ラガルに言う。

 そして石の台を指差すと、興奮した様子で言った。


「溶けちゃった!」


 そのままラガルに抱きつくとティーソエルは、明るい声のまま話す。


「ねえ、できるよ。ボクらなら。

 世界樹なんていらない、()の目なんていらない。

 僕らで世界を作り直そう、お兄ちゃん。」

 

 ――灰の目。

 その言葉を聞いた瞬間、胸の奥がカッと熱くなった。

 腹の底から感じたこともない何かが湧き上がってくる。

 無意識のうちに炎が漏れ出た。

 膨張し、自分でも止められない。


 ラガルは一瞬、動きを止めたが、炎が噴き出ていくのに一種の陶酔を覚えていた。


「……ああ、殺そう一匹残らず。」


 自然と言葉が出る。

 それに自分でも驚いた。

 地の果てから響く声にティーソエルは手を叩く。


 ウラガフは影に囚われたまま、震えていた。

 何が起こってるのかわからない。

 いや、わかりたくなかった。


 よりによってティーソエルに裏切られたなど。

 もしも影が体を縛っていなかったら、膝から崩れ落ちてしまいそうだった。


 頭が揺れる。

 心が闇の中へと放り込まれる。


 呆けていると、ラガルと目が合った。

 その目は動揺しているようで、いつもの感情のない瞳ではない。


 憎いのに目が離せない。


「う、ウラガフ。」


 ラガルは何かを言いかけたが、それが止まる。

 ティーソエルがラガルの手を取って、体を引き寄せたからだ。


 そしてそのまま影に沈むと、二人の姿は見えなくなった。


 取り残されたウラガフから、影が引く。

 そしてそのまま、地面に膝をつくとウラガフの手から剣が滑りおちる。


「……嘘だ、嘘……だ。」


 剣がカラカラと音を立てた。

 否定しようにも、現実だという証拠は何も変わらない。

 せめて夢であればよかったのに。


 ウラガフは温度のない床に爪を立てる。

 痛みも何も感じなかった。


 天地がひっくり返ったかのような感覚だけが体を支配して、息が荒くなる。


 倒れることもできない体を自分の意識だけが支えて、ウラガフはどうすることもできない虚無の中にいた。

 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ