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導かれぬ者たち

「冥府で何があった?」


 最初にそう聞いたのはイーヴァだった。

 洞窟の中を歩きながら、メフェルは答える。


「……何も。ただヘレーに会ったわ。

 そして、ラガルの魂は冥府にないとも言われた。」


 シーナが息を呑む。


「じゃあ……欠けた魂は、どこにあるんですか。」


「……わからないわ。」


 メフェルの声は硬い。

 先ほどから様子がおかしい。

 シーナはなんとなく、ただラガルたちが連れ去られただけが理由ではないのだと感じていた。


 だが、聞けない。


「あの男、エンルフと名乗っていたな。」


 イーヴァが独り言のように呟く。


「……正直、似ているような気もする。千年も前だ。

顔なんぞ覚えとらん。」


「本当に……何者なんでしょうか。」


 シーナは呟く。


「何者だっていいわ。」


 メフェルが言った。

 冷たい声だったが、芯のある声だ。


「取り戻せれば、それでいい。」


 その言葉を聞いて、シーナはそうだと納得する。


 どうか二人に無事でいて欲しかった。


「食料も何日もあるわけじゃない。

 迷ってる暇はないぞ。」


 イーヴァは荷物を見つめながら言う。


 洞窟の中の景色はどこも同じで、イーヴァにも確信はなかった。

 イーヴァはまた分かれ道に立つ。


 なんとか、あの三手に分岐する道へと戻って来れた。


「……中央だ。」


 イーヴァが言う。


「ラガルが故郷に通じると言ったなら、あの連中もそこを使う。」


 だが、進んですぐに三人は気づく。

 ラガルがいないだけで、道は驚くほど読めなかった。


 分岐や紋様が何度も出てきて、イーヴァが苛立つ。


「……ラガルがいりゃ一目でわかったんだろうな。」


 シーナが黙る。

 メフェルは返事をしなかった。


 ……ミムラスの声は聞こえない。


 空気は重くなる。


 小さな横穴があった。

 ミムラスがいれば、真っ先に入っていったんだろうな、とシーナは思う。


 しばらくして、また幾度目かの分岐に出た。


 イーヴァが痕跡を探し始めたとき、シーナは気づく。


「これ、これ見てください!」


 その声にイーヴァが振り向く。

 それは血だった。


 壁の低い位置に、少量の血がついている。


「……でかした。」


 イーヴァがシーナの肩を軽く叩いた。

 低い位置についた血痕に、三人は顔を見合わせた。

 その道を通ると、次の道にも同じように印が付いている。


「これで進めるわね。」


 メフェルの口元がわずかに緩む。


 進んでいくと、壁に紋様が増え、祭壇が見え出した。

 この道で合っているのだ。


 シーナはミムラスに感謝した。


 三人は血痕を追って、さらに奥へ進んだ。

 洞窟の闇は、まだ終わりを見せなかった。

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