第6話 新たなる脅威
~人間界~
「……勢いで言ってしまったが、本当に大丈夫なんだろうか……」
さっきまでノリノリだったグレイさんが家に近づくたびにドキドキしているのが横目で見ている私でもわかった。
「大丈夫ですよ!多分……ですけど……!」
「おいおい……」
そう言いあいながら私たちは家の中に恐る恐る入った。
「……失礼する……」
「ここではお邪魔しますだよ、グレイさん……!ちょっと、待っててくださいね!今お父さん達を呼んできます」
玄関先に待っているグレイさんが大きい身体に似合わず、子犬のようだったので私は思わず笑みが零れてしまった。
「お待たせしてすみませんね!あなたが……グレイさん?私、美咲の母で真紀と言います。どうぞよろしくお願いしますね」
「あ……どうも、俺はグレイ……です……あ、えっと……お邪魔……します……」
「そんな緊張なさらなくて大丈夫ですよ……!さぁさぁ、上がってくださいな。お父さんが待っていますので」
「では、失礼……します……」
「ガチガチですね……」
お母さんの後ろを歩きながら周りを見渡しているグレイさんに少しおかしくなってしまい、小声で話しかけてしまった。
「し、仕方ないだろう……俺でも緊張してしまうんだ……」
「……ん?2人ともどうかしたの……?」
「何でもないよ!」と言うと、お母さんは首を傾げながらリビングに向かった。
「やぁ、君が美咲の言っていたグレイ君だね」
「は、はい……こんばんは……失礼します……」
「あらあら、ずいぶんイケてる男性だねぇ~。美咲が男の子の知り合いを連れてくるなんて初めてだねぇ」
「おばあちゃん!恥ずかしいから言わないで……!」
「初めまして、私は美咲の父で名は裕二だ。よろしくね」
「よろしく……お願いします……」
「私は祖母の初枝です。よろしく頼むね~」
「まぁまぁ、緊張せずにそこに腰を掛けてくれ。少し雑談でもしようじゃないか」
私はお母さんと一緒にキッチンへと向かい全員の飲み物とお菓子を用意し、グレイさんの横に座った。
「さて、ぶしつけな質問をしてしまうが……美咲とはどこで知り合ったのかね?」
「それは、山……「あぁぁあああ!えっと、私の職場の近くで落とし物してて……それ探すの手伝ったときに知り合ったの!」
私が突然割って入ったことにみんな驚いて目を見開いていた。
「……何で美咲が答えているんだ?」
「あ、えっと……」
「おい、嘘を言ってどうする……」
「仕方ないでしょう……正直に言っちゃうと変に思われてしまいます……!」
お父さんはため息を吐き苦笑いしていた。
「まぁ、それは分かった……それで、どれぐらい家にいる予定でいるのかな……?」
お父さんの質問にグレイさんは悩んでいた。それもそのはず、いつ元の世界に戻れるのか分からないから……。
(あれ……?何でこんなに悲しいんだろう……)
「……実は、まだわからなんです……でも、この家に住まわせて頂く間は何でもしたいと……思っています……」
「まぁ……別に無理しなくていいのよ?ねぇ、あなた……」
「あぁ、そうだが……」
お父さんは顎に手を当て、少し唸りながら何か悩んでいた。
「お父さん……?」
「……実はな、私の仕事に欠員が出てしまってな、君に少しやってもらいたい。何、難しいことはしないさ」
「お父さんの仕事……?確かに、身体が大きいグレイさんにはピッタリかもだけど……」
「まぁ、いきなり家に来て話したからこんがらがってしまったね、すまない……」
「君からの提案を考慮して、この家に住んでいる間は私の仕事を手伝ってもらおうって話だ」
「確かに、私は来たばっかりだし……家に慣れてからでもって思ったけど、本人の意思ですものね……」
「わからないことがたくさんあります……失態をかけてしまうかもしれません……」
「ですが……頑張ります……!お願いします……」
頭を下げ、お願いするグレイさんの肩におばあちゃんが手を置き、
「誰でも失敗はするものよ……でも、それでみんな成長していくの。失敗は成功につながるから、あなたならきっと大丈夫よ」
「おばあちゃん……」
「あ、ありがとう……ございます……!」
「君の話は明日にでも私の従業員には伝えて、そこから面接をさせてもらうからね」
「面……接……?」
「何、難しくないよ本当に軽くだからね、そんなに緊張しないでくれ。さぁ、遅くなったがご飯にしようか」
「今温め直しますね~」
これから始まる生活に私はドキドキしつつ、楽しみになっていた……。
~同時刻、神奈川県~
大規模なテーマパークに怪しげに揺れ動く巨大な影が1つ……。
ズシン……ズシン……と音を出しながら向かっていた……。
「ん……何の音だ……?地震か……?」
大きな足音に気づいた仕事帰りの男性が音がする方向に顔を向けた。
ズシン……ズシン……
「きゃぁああああ!?」
「な、なんだ……!デカい怪物だぁぁあああああああ!」
夜の暗闇から姿を現したのは巨大なトカゲのような魔物であった……。
黒紫色に輝く鱗………その巨体から放たれる禍々しいオーラ……全体は5階建てのビルとほぼ同等であった……。
グゥオオオオオオアアアアアアアア!
魔物が咆哮を上げ、その眼からはビームが放たれた……。
辺り一帯を光が包み込み……やがて、数十秒たった後ゆっくり消えていく……。
「ヒ、ヒィッ……!」
1人の女性が運よく目を閉じており、開いたときには周りの人が石化していた。
魔物はいつの間にか姿を消していたが、足跡だけは深く残りそこに存在していたことが物語っていた……。
~翌日~
「おはよ~……」
昨日はなぜか私まで緊張したせいか、今日の寝起きがはいつもよりも悪かった。
「最近やけに不気味だわ……何が起こるのかしら……」
「お母さん?もの凄い顔してるけどどうしたの……?」
「あ……起きたのね美咲、おはよう。ねぇ……ちょっとニュースを見て頂戴……」
せかせかとキッチンに向かうお母さんの顔がいつもより険し事に驚きながら、私は言われた通りテレビに顔を向けた。
「……繰り返しお伝えします。昨日未明、神奈川県のテーマパーク近辺にて、通行人が石化するという事件が発生致しました。防犯カメラを確認したところ姿は映っていなかったものの、現場近くには何かを引きずった大きな跡が残っておりました。現場のキャスターに変わります。現場の酒井アナウンサー!」
「はい!こちらでは現在、警察自衛隊を主体とし、大規模な捜索に当たっており解決に向け動いている様子です!目撃した方にもお話を聞いてみましたが、皆さん上手く話せなく情報はまだ浅いです……」
「今度は石化……しかも、前よりも被害が大きい……」
お母さんが驚いていた原因がわかり、私は少し怖くなった……。
「やはり……か……」
「グ、グレイさん……!おはようございます……あの、やっぱりって……何か知っているんですか……?」
「……ああ、あの事件……恐らくだがバハムの仕業だろうな……」
「あ……グレイさんが戦ったって言ってた……あの?」
「奴は様々な魔物を生み出す能力を持っている……。あっちの世界でもかなり苦戦したからな……クソッ……」
「それにしても……こうも表立って動き出すとはな……一体、何が狙いなんだ?」
「2人とも~?……どうしたの、あの事件について何かわかったの……?」
「あ……いえ……!」
「なんでもないよ~……!あはは……はは……」
私はグレイさんと一緒に慌てながら朝ご飯を掻きこみ、急いで自室に戻った。
「ふぅ……お母さん、意外に鋭いからちょっとドキッとしちゃう……」
「……美咲、もし何か情報があれば教えてくれ……できる限りで対処する。」
「は、はい……!えっと、とりあえずわかりましたけど……どうやって伝えましょう……」
「……君の危険に気づけるよう、俺は鼻がいいから、匂いを覚えておく……しかないな……」
「それは……少しキモイです……」
~東京都調布市~
朝の通勤ラッシュで騒がしい筈の街から一切の音が消えていく……。
魔物が足跡を残し、1人……また1人と石化していく……。
その足跡は、次はどこへと……。




