第11話 魔王軍5大中将
腰を低くし、臨戦態勢で敵味方関係なしに一掃しようとするウルヴ……。
「……最早、敵も味方も分からぬか……ウルヴよ……」
悲痛な表情を浮かべるローボを一点に見つめるその眼は、今にも襲うまいと鋭い眼光を放っていた……。
魔盾フォートレスを構え、相手の動向を慎重に探るローボ……。
タイミングを計りジリジリと睨み合う事約30秒……両者の周りには計り知れない程の緊張が走っていた……。
ウオオオオオオオオオオオ!!
耐え切れなくなったウルヴは先手を打ち、鼓膜が破れそうな程の咆哮を一声上げ、その鋭い爪を突き立て切り裂こうと飛びかかった……。
ローボは狼狽えるどころか怪しい笑顔を浮かべ、フォートレスに魔力を込めた……。
「”攻撃反射”」
錯乱したウルヴの爪が盾に触れた瞬間……
キィイイン……!
仕掛けたはずのウルヴは盾から発せられた衝撃波のようなものをもろに受けてしまい、後方約10m先まで吹っ飛ばされた……。
フォートレスが持つ機能の1つ……相手が使う攻撃の威力を触れてから瞬時に解析し、同じ威力を発生させ衝撃波として返す力。
だが……強靭的な身体を付与されたからか、その一撃で倒れるはずもなく、まさに野生の狼の如く体制を持ち直した……。
グルルルルル……
低い唸り声を上げたウルヴが次にとった行動は……
背負っていた弓矢を無理矢理に取り出し、構え始めた……。
(これは……!マズイやもしれんな……)
暴走状態であるウルヴが、まともに弓矢を扱えるはずがないと少しばかり油断していたローボだった……。
しかし、ウルヴは力任せにも弓を引き、魔力を込める姿を取ったのだ……。
弓に魔力を込める……たったこれだけの動作だったが、その危険さを知り尽くしているローボからすれば警戒をするには十分であった……。
「”城塞防壁5重”」
フォートレスに自身の魔力を詰め込んで盾を地面に叩きつけ、高さ約6mにも及ぶ防壁を5重に展開する。
(防御にしては甘い……しかし、操られている今も平常時と同等の威力ならば、まともに受けたら私の身体がもたん……!)
ウガァアアアアア……!
止まらぬ力を振り切り、暴走した矢は防御を固めたローボへと向かった……。
(頼む……!持ってくれ……!)
しかし……放たれた矢は防壁の手前で五本に分かれ、一本以外はその場で爆発を起こした。
「な……何……!?」
ローボの固い防壁を4枚も破壊し、方向を変えた一本だけは壁を避けローボの脇腹目掛け後方から貫通した。
「ぐッ……があっ……!」
ポタッ……ポタッ……と流れる血で草原が紅く染まり、ローボは膝から崩れ落ちてしまった。
ウルヴが使用する中でも高威力を誇る風烈爆炎……放たれ命中した瞬間爆発するウルヴの技。
その威力は近隣の森に生息する大型のモンスターを、跡形も残すことなく吹き飛ばすことができる。
「だが奴には……矢の分裂や個別に操るなんて力は無かったはず……」
貫通した箇所からの出血が止まらない、恐らく矢に毒が塗られていたか。
「……それは、僕の能力……」
目の前が点滅し、意識が薄れゆくローボの前に謎のドラゴン族の男女が現れた。
「……ペント……それをバラしたら面白くなくなるよのぅ……まぁ、良いか……」
「……き、貴様らは……ドラゴン族……そうか、モンストルか……」
「いかにも……わっしらはモンストル魔王軍五大中将ザード&ペント……運が悪かったのぅ……」
「わっしらは洗脳が大の得意でねぇ……入国者の中にウルフ族がいたと報告を受けて、もしやと思ったらなぁんと憎きルナリアの王国騎士団3幹部と来たもんだ!わっしらの軍も手ひどくやられたもんでねぇ……仕返しに来たって訳よぉ……」
地面に伏せ、吐く息が荒くなってきたローボの前に女……ペントが見下ろしていた。
「……ザード……こいつも洗脳するのか……?」
「……そうさなぁ……いっその事、三幹部まとめて洗脳させちゃって一気に王国壊滅させるってのも面白いもんさねぇ……」
「どぉらあぁああああああ!」
ローボを守るように割って出てきたのは……避難誘導に向かっていたフェネリだった。
「ローボさん……!酷い傷だ……早く救護班を……!」
「フェネリ……何故ここに来たんだ……!こいつらは私らを操る気でいる……!」
「何……こいつ……」
「本当に、この国の奴らは群れるのが好きですなぁ……」
背後で裾に付いた汚れを払っている敵をフェネリはじっと睨みつける。その眼差しには静かな怒りが滲み出ていた。
「まさか……こいつらがウルヴを……!」
「まぁ……ちょうどいいでさぁ……!お前達を今ここで洗脳し、この国を破壊させるのも一興でさぁ……!」
その時、ペントが腕を上に振り上げると……。
ウオオオオオオオオオオオ!!
咆哮を上げたウルヴがフェネリに向かって攻撃を仕掛けた……。
ウルヴの爪がフェネリに刺さる寸前……フェネリの右手に握られた剣が青白く光り輝いた……。
「”韋駄天躯”」
フェネリは走る構えをとるとニヤリと笑みを浮かべ、一瞬にして姿を消した。その後強烈な突風がペントとザードを襲う。
「何……!あの赤毛、どこに行きやした……!」
「……ここだ」
目の前に居たはずのフェネリが消えたことに、警戒をしながら周りを見渡すウルヴの目を搔い潜り振りペントとザードの背後に静かに佇んでいた……。
「こいつ……早い……」
「いつの間に……!?」
「ウルヴを返してもらうぞ……!」
腰に携えた魔剣の鞘を抜きペントの首を切断しようと思い切り振り抜く。
「クソッ……わっしらを守れウルヴ!」
フェネリの剣があと少しのところでペントの喉元に入る寸前……ウルヴが割って入り弾き返した……。
「ウルヴ……もうやめよ……!目の前に居るのが味方だと気づかんのかぁ……!」
地面に這っているローボはこの惨状が辛くなり、必死になり声を張り上げた。
「無理やい……奴に声は届かんよ……それにしても、危なかったのぉ……」
「……油断した……次は本気で行く……」
(これ以上戦ってもこちらが消耗するだけだ……ローボさんのこともあるし、ここは時間を稼いで体制を立て直すか……!)
「一時停戦だ、モンストル魔王国の者よ……!改めてこのフェネリ・モーネが貴様らに一騎打ちを申し込む!」
「明朝、海岸に来い!そこでウルヴとの決着をつけてやる!」
敵が訝しげに眉を動かした。
「……わっしらにメリットは……?」
「……万が一私が負けたら、我が身体を好きに使うがいい……!」
「フェネリ……!何を言う……そんなことしなくとも……!」
「ローボさん……これは俺が決めたことです……ウルヴの為にも頑張らせてくださいよ……」
フェネリの目には少し目を閉じ考え、直ぐに敵の方へと刃のような鋭い眼差しを向けた。
「うーむ……よし、とりあえずは取引成立じゃ……一旦ここは引いてやるわい。……お若いの、くれぐれも約束を違えるでないぞ……?」
ザードとペントは理解を示したのか、直ぐに身を引きその場を立ち去った……。
「……ザード、本当に一騎打ちを受けるのか……?」
「何……そんなことは無いやい……あいつらに目に物を言わせたるわい……」
「ふぅ……行ってくれたか……」
「フェネリ……本当に良かったのか……?貴様が無理をしなくとも……」
「なぁに……俺が決めた事ですよ……!ローボさんはまず身体を休ませましょう……!」
フェネリは救護班を呼び、城内にてシュヴェリアとルプスに報告をしたのであった。
〈シュヴェリア視点〉
「ローボが……それに、ウルヴが操られていたなんて……」
私は、大きく目を見開き一瞬の驚きの後小さな拳を握りしめる。
「……彼の隠密行動でも見破られ、このようになってしまうとは……ますます緊張感を持った方がいいな……」
「はい……それに対峙した際、ウルヴの力が強化されており……多分、洗脳による増加だろうと……」
「それで……フェネリよ、その一騎打ちに勝算はあるのか?」
「まだ、革新的ではないのですが……案はございます……!」




