第10話 王国に迫る危機
暫く経った、ある日のルナリア王国……。
モンストル王国の侵略から約1ヶ月、被害にあった各地のほとんどは回復に向かい以前の姿を取り戻つつあった。
「いやぁ……あの若いあんちゃんが上になってから不安だったが……この国も捨てたもんじゃないな!」
「不安なことはまだまだ絶えないけれど、今はただ信じる事が私達のできる役目よね~……」
必要な物資を受け取りに来た住民達は、だんだんと復興していく街を笑顔で元気に駆け回る子供達を見て感慨深くなっていた。
そんな中、城では定例会議が執り行われようとしていた……。
「……では、これより定例会議を始めたいと思う。まずは皆、沢山の尽力に感謝する……お礼は今度またさせてほしい」
「……それで、シュヴェリア騎士団長代理。君から復興の進捗の報告を頼んでいいかい?」
「はい、現在復興部隊が懸命に頑張ってくれていて、南側の8割が生活に支障がない具合には回復致しました。現在から復興完了するまで多く見積もって2か月ほどの予定ではあります」
「とりあえず、暫くは被害にあった地域含め国民には物資の支給などを進めていく予定です」
国王は私が徹夜で必死になり作った報告書を隅々まで目を通してくれ、満足げに頷いていた。
「うん……報告をありがとう、書類も上手くまとめられていてとても見やすいよ。そうだね、暫くは街の護衛を強化しつつそうしていこうか」
国王は次の書類に目を通し……
「それで……次はローボだな、謎の扉と剣の関係性について何か進捗はあったかな……?」
「……はい、部下と隈なく探し見つけ出した書物によれば……あの扉の先には繋がりがある世界線について判明致しました」
「あの扉にはそのような事が……なるほど、それでその世界線というのは何の事なんだい?」
「……私も、書物をよく解読しきれていないのですがね……どうやら、"人間"……という種族が生息している世界がある……と、書いてありましたな……」
ローボの報告を聞きその場に居た皆は驚きでどよめいていた。
(人間……その世界にグレイが飛ばされた可能性がある……という事ね……)
私は嬉しさが込みあがってきたが、その反面拭いきれない不安も少なからずにはあった……。
「……そうか……それで、人間の世界に飛ばされた者が戻ってくる可能性はあるのかい……?」
不安の種を国王が先に聞いてくれ、私は答えがどうなるか早く聞きたく、心臓がバクバクとしていた……。
「それが……まだ先までは読めず、現状で解読できた部分からですと、ある……とは書いてありましたな」
私はその言葉にホッとし、心の中で胸を撫で下ろしていた……。
「そうか……それは良かった、であってるのかな……?」
国王は少し首を傾げ、困ったように苦笑いしていた。
「……では、次は問題の議題であるモンストル魔王国の偵察についてなんだが……ウルヴからの連絡が一向に来ないのだ……」
「ウルヴが……?あの子が国王様に対してそんな不義理なことなどするはずが……」
私がそう声を出すと、周りもザワザワとし出した。
「一応ね私の方から、週に一度は報告を送るようお願いしていたのだが……これまで一度も送ってこなかったんだが……」
「……王国騎士団三幹部の中でも、魔法と隠密行動に優れたウルヴが……まさか……」
「何か……不吉な気が感じますね……」
その時、ローボが訝しげに立ち上がった。
「いや、もしかしたら捕まったかもしれないですな……でも、ウルヴに限ってそんな事……」
「私もそう思うんだ……だから、あの子に一任していたんだが……あの国は何を考えているか分からない……からこそ、もしかしたら……」
「俺、助けに行きますよ……!このままじゃ安心して寝れやしないしな……!」
そこまで黙っていたフェネリが椅子を倒し立ち、その顔は苛立ちが浮かび上がっていた。
「いや……そんなことをしてしまったら、相手の思うつぼだ……何か策を考えなくては……」
「……策……何かありますかね……」
頭を捻るように対策に悩んでいると、街の護衛をしていた部下が扉を勢いよく開け入って来た。
「か、会議中に申し訳ありません!……一大事なんですが……!」
「何があったのか、ゆっくり教えてくれるかな……?」
国王の一声に、部下は汗を拭きとり深呼吸をし……重い口を開き語り出した言葉に私達は驚愕した。
「う……ウルヴ様が突然帰ってきたのですが……街を破壊して暴れているんです!」
「何ですって……!?」
「……それは、大変だ……フェネリとローボは先に現場へと向かってくれ……!」
国王の声を聴く前に2人は武装しており、すぐさま現場へと向かった……。
「は、早い……!」
「あれが……王国騎士団三幹部様方だ……だが、何で……ウルヴ様……」
部下の悔しそうな声を聴き、私も現場に向かうべく国王と急いで準備して向かった……。
現場に着くと、そこは……モンストル魔王国に襲われた以上の惨状になっていた……。
「な、何でだよ……!自国の奴に何で襲われるんだよ……!」
「ママぁ……パパぁ……!うわぁあん……!」
悲鳴を上げ逃げ惑う民の波を潜り抜け、フェネリとローボはただ茫然としていた……。
「お、おいおい……!どういう事だよこりゃ……」
「……酷い惨状だ……とりあえず、フェネリの部隊は逃げきれなかった者達で怪我をしている民の救助等を頼む……」
「……あぁ、任せなさいなローボさん……ウルヴはどうします……?」
「……私がウルヴの注意を引き、街の外へおびき出す……!」
「……くれぐれもお互い無理しないようにしましょうね……」
フェネリが離れた後、ローボは街を隅々に走り回った。
やっと見つけ出したウルヴは、目に生気は無く……どこか心ここにあらずのようだった……。
「ウルヴよ、これ以上破壊させぬ……!何があったかは知らぬが、ここでお前を止めさせてもらう……!」
大剣を構えウルヴに顔を向けるが、目が不気味に紅く光り、破壊するだけの存在に成り果てていたウルヴにはローボの声は届いていなかった……。
ウオオオオオオオオオ!!!
鼓膜が張り裂けんばかりの咆哮を上げたウルヴの声には、どこか苦しむような息苦しさも混じっていた……。
勢いよく攻撃してきたウルヴにローボは怯むことなく立ち塞がる……。
「……よし、こちらに狙いを定めたようだな……!そのままこちらに来てもらおうか……!」
ローボは大剣を勢いよく振り回し、ウルヴを民のいない場所まで飛ばし投げた。
主武装”魔盾フォートレス”
その特殊な金属には高密度な魔力が宿っており、並大抵の者では使いこなすことは愚か……持ち上げることすら困難な超重量であった……。
長年、鍛え抜かれた肉体の持ち主で、なお且つ全てを守り抜くという確固たる意志を持つ者にのみ使用可能な代物……。
使用者の魔力を込めるほど強度が上がり、それに見合った様々な効果を発揮させる……。
「……まさか、貴様と稽古以外で交わる事があるとはな……」
(仲間を傷つけたくはなかった……が、今回だけは……許してほしい……)
そう口にしたローボの顔には少し悲しさが滲み出ていた……。
その頃……ルナリア王国近辺で一番高い山に怪しい影が2つ……。
「アイツ……上手くやれるのか……」
そう語るドラゴン族の女……ペントは、人形のように無表情であり声も無機質であった……。
「……さぁ、どうでしょうねぇ……失敗すればわっしらが裁かれるんで勘弁でさぁ……」
小汚い商人の格好をした小太りのドラゴン族の男……ザードが遠くを見つめニヤリと笑う。
「……まぁ、まずは仲間内で殺戮ゲームでさぁ……楽しみよのぅ……」




