↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

PR
3/13

姉妹の悲嘆

 家に戻っても着替えすらせずに、部屋のベッドに横たわっている李祐は、時折思い出したようにベッドの上で頭を抱えて泣き出すのだった。


 沙流も姉李祐に寄り添って、眠れぬ夜を過ごした。

 次の日の朝は何事もなかったかのように、静かに訪れた。

 深まり切った樹木の緑の葉が、いつものように“サワサワ”と音を立てているのが微かに聞こえる。

 姉妹は同じ部屋で、朝方になりやっとウトウトと眠ったようだった。


 鳥の声に気づいて沙流は目を覚ますと、姉もベッドの上で目を開けて天井を見つめていた。


 沙流がキッチンに行き、姉のために冷蔵庫で冷えた水をコップに注ぎ、ふとテーブルの上を見ると、昨晩李祐と拓真が食べるはずだった料理が並べられていた。


 健康に良さそうなサラダとフライドチキンと、スープを注ぐためのカップとライスを盛るための茶碗が、主人を失ったように寂しく並べられていた。


 ベッドルームの姉に水の入ったコップを持って行くと、姉がベッドの脇にちょこんと座っていた。


 一回りも二回りも小さくなったように見える姉に、沙流は

「お姉ちゃん、お水を持ってきたから飲んでね」と優しく声をかけると、やっと反応してくれる。

「ああ、沙流、ありがとう」と消えそうな声で答えるのを聞くと、沙流もまた悲しくなり泣きそうになる。


 沙流からコップを受け取ると、李祐は静かに水を少し飲んだ。

 そして、二口目を飲むと、「ふぅ」と息をついた。


 昨晩からまともに息もつけてなかったのだろう。


 もう一回ため息をついて、水をさらに飲んだ。

 コップはほぼ空になっていた。


「お姉ちゃん、お代わりを持ってくるね」と沙流はすぐにそのコップを持って、キッチンに向かう。


 そして、そのコップに水を注ぎ、もう一つ自分用に水を注いだコップを持ってきて、姉にコップを渡すと、自分もゴクリゴクリと水を飲んだ。


 思えば昨晩から二人は飲み物も食べ物も口にしていなかった。


 沙流はキッチンに行き、テーブルの上の料理を温め直すためにラップをかけて、電子レンジで温める。


 その後、キッチンで交わす言葉も少ない中で食事をしていると、李祐のスマホから「Love in the Moonlight」の着信メロディが流れる。

 このタイミングではあまりに悲しいメロディだ。

 二度目のメロディの途中で李祐はスマホを手に取り、通話ボタンを押す。


 微かに漏れ聞こえる人の声に、李祐は消え入りそうな声で

「はい、分かりました」とやっと答えた。


 通話が終わり、沙流が

「どこから?」と尋ねると

「警察の人。午後に警察署に来て欲しいと言ってた」

「そう、運転は私がするから、行けそう?」

「うん、大丈夫」と答えるが、沙流は

「向こうから来たらいいのに」と不満そうだ。



 それから、お昼までの時間で姉妹は「なぜ、こんなことになったのだろう」と答えの出ない会話をして、沙流は事故の原因は何だろうと考えていた。


 医師が李祐に伝えた死因である“一酸化炭素中毒”に、なぜなったのだろうとも考えた。

 何か有害な薬物でも扱っていたのか?とまるで答えの出ないうちに、お昼の時間となっている。


 二人は最寄り警察署でもある高井沢警察署に向かった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。