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あぁ!君こそ恋愛スナイパー  作者: 川合 佑樹


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第21話

 ヒビキの足音が校舎の廊下を鋭く刻み、背後から迫る集団の息遣いが、まるで獣の咆哮のように重く響く。

 階段を駆ける足音が雪崩のように追う。

 彼は階段を飛んで下り、手すりを掴んで体を滑らせ、床に着地する衝撃を最小限に抑える。

 背後の短剣が空を切り、階段の壁に火花を散らす音が響く。

 一瞬の隙に振り返り、銃を構えて牽制射撃。

 バンッ! バンッ!

 弾丸が階段の段差を削り、追手の足を止める。

 一人が足を滑らせて転げ落ち、仲間がそれを踏み越えようとするが、転倒の連鎖で数人がもつれ合う。

「追え! 殺せ!」

 リーダーらしき男の怒号が響く中、少年は校舎の中央棟へ抜け、屋外の柵が視界に入る。

 少年は走りながら銃をしまい、両手で柵を掴む。

 筋肉が張りつめ、跳躍の勢いで体を越えさせる。

 着地と同時に、追手の男が柵に手をかけるのが見える。

 彼は即座に振り返り、銃を抜いて足元を撃つ。

 バンッ!

 弾丸が柵の基部を削り、男の足が滑って転倒する。

 続いて二人が柵を越えようとするが、転倒した男の体が足止めになる。

「立て! 急げ!」

 怒声が飛び交う中、彼は校舎の裏手へ回り込む。

 ガラス戸の音楽室が目前だ。

 鍵がかかった戸に銃口を押しつけ、引き金を引く。

 ガラスが砕け散る鋭い音が響き、破片が足元に飛び散る。

 楽器棚の奥へ向かう。

 棚の影に隠した布袋を素早く引きずり出す。

 中身は三つの武器――ショットガン、アサルトライフル、そしてスナイパーライフル。

 少年の指がショットガンのグリップを握り、冷たい金属の感触が掌に馴染む。

 アサルトライフルを左手に持つ。

 スナイパーライフルを背負い、ストラップを素早く締める。

 外からドアを蹴破る衝撃。

 金属片が飛び散り、黒装束の男たちが雪崩れ込む。

「見つけたぞ!」

 先頭の男が短剣を構え、室内へ飛び込む。

 彼の低く、乾いた笑い声が音楽室に響く。

 男たちの目が見開き、一瞬の隙が生まれる。

「I'm singing in the rain……」

 少年の声が、静かに歌い出す。

 ショットガンを構え、引き金を引く。

 ガドン!

 轟音が室内を震わせ、散弾が男の胸を直撃。

「ごあぁっ!」

 弾丸が心臓を掠め、衝撃で体が後方へ吹き飛ぶ。

 男の体が壁に叩きつけられ、ビクンと痙攣して崩れ落ちる。

 気絶した体が床に転がり、短剣がカランと落ちる音が響く。

「Just singing in the rain……」

 彼の歌声が続き、たじろぐ次の男たちを睨む。

「何だこいつ……! おい、散らばれ!」

 少年はアサルトライフルを横薙ぎに構え、連射。

 ダダダッ!

 弾丸の雨が廊下へ飛び、男たちの肩や脚を抉る。

「ひいいいい」

 一人が悲鳴を上げて逃げようとするが、ショットガンを回転させてリロード。

 カチャリと薬莢が装填され、再び引き金を引く。

 ガドン!

「うがっ」

 散弾が男の背中を浴びせ、体が前につんのめって倒れる。

「嘘だろ……そんなの、聞いてない……!」

 少年は構わず歌を続ける。

「Come on with the rain……」

 ショットガンを肩に担ぎ、アサルトライフルを構え直す。

 廊下へ飛び出し、連射の嵐を浴びせる。

 ダダダッ!

 男たちが次々と倒れ、短剣が床に散らばる。

 気絶した体が積み重なり、廊下を塞ぐ。

 彼の足がそれを踏み越え、歌いながら進む。

 雨に歌えば、すべてが洗い流される――そんな調べが、闇の旋律に挑むように響く。


 グラウンドのルルとサラの対峙は激しさを増していた。

 ルルが翼を広げ、ゆっくりと高度を上げ、サラを見下ろす。

 サラの瞳がルルを射抜く。

「そのまま逃げてもいいんだぜ……彼は頂くけどな。文字通りな」

 サラの唇がゆっくりと動き、舌なめずりをする。

 声は甘く、しかし底知れぬ闇を湛えている。

 ルルの翼が微かに震える。

「そんなわけないでしょ! ヒビキは……私のパートナーよ!」

 ルルの声が鋭く響き、翼を力強く羽ばたかせる。

 高度をさらに上げ、滑空の勢いで自由落下へ移行。

 天使の力が体を加速させ、風を切り裂く音がグラウンドに轟く。

 サラの瞳が細まり、両手を広げて構える。

「パートナー? 天使が、人間ごときとパートナーねぇ!」

 ルルの体が隕石のように突撃し、サラの掌に激突。

 ドン!

 衝撃波が地面に巨大なクレーターを刻む。

 土塊が雨のように飛び散り、二人の周囲を覆う。

 サラの体がわずかに後退する。

「すごい力だな……ただの人間なら死んでたぞ、大天使」

 声に嘲りが混じり、サラの指がルルの手を掴む。

 引き寄せる勢いで、膝をルルの鳩尾に叩き込む。

 鈍い衝撃音が響き、彼女の息が詰まる。

「ぐっ……!」

「痛いか? それが地上の天使の限界だよ。お前は愛する者すら守れない」

 サラはさらに力を込め、ルルの体を振り回すように校舎の壁へ叩きつける。

 ゴン!

 壁にひびが入り、コンクリートの破片が飛び散る。

 彼女の体が地面に着地し、膝をつく。

「このままだと……埒があかないわね」

 ルルは息を荒げ、体をゆっくり起こす。

 サラが笑い、地面を蹴って近づく。

「どうした天使、槍の一本でも出してみろよ!」

 サラの声が挑発的に響き、手を振り上げて再び殴りかかる。

 拳が空気を裂く。

 ルルは体を捻り、拳をかわす。

「分かってるくせに!」

 彼女の声が鋭く、翼を一閃させてサラの腕を払う。

 その衝撃で、サラの体を後退させる。

 二人は睨み合う。

「あなたの正体がわかったよ……あなた、リリスでしょ!」

 ルルの言葉に、サラの動きがピタリと止まる。

「ちっ……勘のいいやつ」

 サラの唇が囁くように動き、舌を軽く出す。

 ルルは翼を広げる。

「なんであなたが彼女に手を貸すわけ? 明らかに禁則事項だと思うんだけど?」

 サラの笑いが低く響く。

「それを……お前が言うかぁ? 誰のせいでこうなってると思ってんだぁ!」

 サラの指がルルの頰を掠め、爪が軽く皮膚を引っかく。

「くっ」

 彼女は体を引いてかわす。

「おらおら! 防戦一方かぁ!?」

 サラが再び殴りかかる。

 拳が風を切り、ルルの肩を掠めて地面を抉る。

 その瞬間――ズドン!

「がっ」

 鋭い銃声が空を裂き、サラの頭を弾丸が穿つ。

 赤い髪が弾け、衝撃で体が後ろへ吹き飛ぶ。

 サラの体がグラウンドに転がる。

「待たせたな」

 低く、落ち着いた声が響く。

 ルルがハッとして振り返る。

 校舎の屋根の上から、スナイパーライフルを構えるヒビキの姿があった。

 銃口から薄い煙が立ち上る。

 彼の目が、サラを冷徹に捉え、ルルに視線を移す。

「大丈夫か、ルル?」

 彼女は息を弾ませ、翼を畳みながら頷く。

「ヒビキ……! ありがとう!」

 サラの体がゆっくりと起き上がり、頭の傷口から黒い粒子が漏れ出す。

 笑いが、再びグラウンドに響く。

「やりやがったな……第二ラウンド。カーン」

 闇のヴェールがさらに濃くなり、三者の視線が交錯する。


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