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もう一度 暁の空を  作者: ことほぐ 
17/20

たつみ風

タイトルのたつみ風は梅雨の時期に吹く生暖かくて強い風のことです

 

凪 side


 変わらないもの  僕は探していたんだ



 2月上旬の高校受験日の朝、一昨日の雪がまだ道に積もっていたので、今日は時間に間に合ってよかったと、ふと漏らす吐息も白い。

 いろんな中学校の制服の受験生の中で、一人で歩いている少女を見かけた。


 その少女は、県の北側に位置する有名私立女子中学校のセーラー服を着ていた。

(あの制服は私立女子中学校だよな。珍しい、あそこはエスカレーター式だから外部へ受験する人はいないと思っていたけど)

 これから受験する高校は、県内でも有名な名門進学高校で、中学校も併設されおり、高校からの受験は募集人数が少なく狭き門ある。

 だから、外部受験者の偏差値は高く、しかも、倍率も高いので、県内有数のトップクラスの難関校と知られている。

 どうしてわざわざこの学校へ志願したんだろうか?と思い至ったが、自分はどうかと一笑する。


 僕は両親の離婚後に母子家庭となった。

 その後、母親から虐待を受けて、中学になる頃には僕は荒れた。母親はそんな子どもを置いて海外へ渡った。

 だから、父親の再婚相手の家に身を寄せたがうまくいかず、中学の途中からは叔父の所へと転がり込んだ。

 流転する子供時代で、叔父の直樹さんが引き取ってもらわなければ、これから先はすさんだ人生を送ることは容易に想像できた。

 叔父は良くしてもらったが、このまま面倒をかけるのは忍びなく、高校は寮付きの高校への進学を希望した。

 県内でも寮がある学校は少ないが、この高校は有名私立高校で県外からの越境入学の生徒のため、寮が完備しているので志願した。

僕は小狡いので、そつなく何でも出来た。だから、学力もまあまあ優秀だと思う。

  (凡ミスしなければ受かるんじゃないかな)


 受験当日のピリピリした雰囲気のなかで、僕は改めて歩いている彼女をもう一度観察した。

 彼女は物憂げな様子で歩いていた。

 普通の女子より高めの身長だが、ガリガリで手足が異常に細い。

  (もしかして僕と同じくらいの身長? いいや彼女の方が少し低い、、、)

 やや青白い顔色をして前髪を目まで伸ばしていた。

 茶色の髪の毛が肩ぐらいあるのか、サザエさんに登場するカツオの友達の花沢さんのように無造作二つに分けて結わえている。

 第一印象はダサいの極致の一言に尽きた。

 しかし、黒髪の受験生の中でその髪の色は異彩を放っていた。


 彼女は異質な存在であることは間違いない。

 しばらく行動を見ていると、男子が近づくと彼女はスッと距離を離す。

 警戒心が強い小動物みたいに絶えず、周りの気配を気にしている。

 まるで、被害にあった子どものように。


 僕は幼いから風貌が整っていたので、顔目当てで寄ってくる女子が多くいた。

 また、ほっそりとした体格で父親譲りの綺麗な顔立ちのため男も寄ってくるのは、僕が軟弱に見えるのか?ほんと勘弁してほしい!

 人の欲望を駆り立てる何かがあるのか知らないが、そういった対象に視られることの経験がある。

 そして、なぜか彼女もある種の欲望や被虐心を駆り立てられる雰囲気がある。


  (まあ そんなことを気にしている場合じゃないよな)

 僕も足早に受験会場に向かった。

 試験が終わり帰る頃には、彼女のことはすっかり頭から無くなっていた。


 次に彼女に会ったのは入学式だった。

 凛と姿勢を正し檀上を見ている。

 髪は肩までの長さで結わえていなかったが、前髪は目が隠れる長さで野暮ったい印象は変わらない。

 横目で彼女を見ていていたら生徒会メンバーを、注視していることに気づく。

 華やかな風貌をした先輩方だ。

 でも、視線の先は生徒会副会長だけみたいだ。なんだ、知り合いなのか?


 続いてクラス分けになり、彼女と同じ普通科の進学クラスであった。

 エスカレーター式で進級した内部生徒と外部からの受験生は半々の割合のクラスだった。

 彼女は窓際にすでに仲良くなった女子と並んで座っている。

 受験で見た時より嬉しそうに隣の生徒と話していた。


 受験の時に彼女が他人を寄せ付けない雰囲気であったから、早速友だちが出来たことに正直ほっとしている自分がいた。

 (なんなんだ、僕は親戚のおっさんか!)

 (でも、友達ができてよかった。僕も語り合える友達ができればいいけど)


 でも、僕は他人に自分の領域に入ってこられるのは嫌だ。

 だから、曖昧な微笑で接して、あまり深い付き合いがするのが苦手だ。

 まあ、知り合いには、穏やかだ、話しやすいとよく言われる。

 実際は、臆病で人から傷つけられたくないだけ。

 自己肯定感が低いのに、プライドが捨てきれない。自分でも面倒くさいと思う。

  (でも、彼女は興味深い)

 だからなのか、園芸係に彼女が手を挙げた時、迷わず僕も挙手した。


 放課後に雪華と一緒に園芸係の作業をすることになった。

 いざ、話してみると、同世代の女子に比べ温和で、ゆっくりと穏やかに話す。

 近くで雪華の目が見て、光の加減で色が変わることに気づいた。琥珀色が混じった榛色の瞳をしている。時折、新緑を思わせる淡い緑色を見たとは神秘的で目が離せないことがあった。

 最初は警戒していたが、僕が異性に向けるギラギラした欲望がないことが分かり、次第に世間話する程度まで距離が縮まった。


 しかし、彼女の過去を詮索した。

 なぜなら、僕の過去も彼女に知って欲しかったからだ。結果、泣かしてしまったのには反省している。

 だけど、彼女との関係が無くなるのは嫌で、僕の事情を話して雪華に仮の彼女になって欲しいと頼んだ。

 雪華が長谷川先輩のことをよく見つめているので、好きなのか聞いたら違うといった。だから、少し強引であったが頼んだ。

 すこし悩んでいたが、お互いに異性からの告白にげんなりしていたから了承してくれた。


 雪華がピアノを弾けると聞いたので、全校生徒に交際していることをアピールする為に、文化祭のコンサートの参加を提案した。

 そして、雪華がピアノで僕はバイオリンのデュオをで出場することに決まった。


 実際、初めてピアノを弾いたのを聞いたときに驚愕した。

 ここまで弾けると思わなかった。

 小学生の時に出たコンクールで金賞をとっていたとは、、、

 雪華のピアノは繊細で透明感がある音色で、色彩豊かなで包み込まれる演奏で一瞬呼吸を忘れた。

 そして、僕と合わせた時、2つの楽器の音が共鳴して魂が揺さぶられた。


  あぁ 僕たちは寂しかったんだ、苦しかったんだと


 演奏が終わり、雪華を見入ってしまった。

 なぜ、こんなにも心が吸い寄せらせるのか?


 僕の気持ちが混乱している間に、琴葉が違う曲をリクエストした。

 アニメのエンディング曲でスノードロップを雪華は伴奏しながら歌った。

 その歌声は透明感があり、温かな声質で優しく包み込まれ、のびやかなハイトーンは心に響いた。

 サビの一節が、ずっと心の奥に閉じ込めていた感情を呼び起こした。

 祈りに似た歌を聞き終わり、僕は、視界が霞んで雪華に視線を注いだ。


 ~♪ かわらないもの 僕は探していたんだ

    壊れた音を 抱きしめていた



 あぁ 僕は 君をみつけた




凪くんの乙女ゲームのポジションは隠れキャラ、お助けキャラどちらにするか悩んでいます

今のところ魔法使いとしています


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