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2025年12月  作者: 鍋乃結衣
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第二十三話 12月24日「見知らぬ地下にて 前編」

駅名を「東胎駅」に変更しました。

 上司の命令で出張することになった。行先は足畑集落という東北の山奥にある集落だ。私の住む東京千代田区からはとても遠い。まず新幹線を使っても四時間はかかる。さらに、集落の最寄り駅からタクシーを呼んでも二時間かかる。ちなみに歩きだと五時間かかる。このようにその道のりはうんざりするほど長い。極めて面倒くさい。上司………上田の野郎は新幹線代と宿代を出してはくれたが、タクシー代はくれなかった。「交通費支給の上限がなんちゃら」とか言われて誤魔化された。ダメもとで帰ったらタクシー代の領収書を突きつけようと思う。

それにその道中、多分無事では済まない。何事もなく行けるはずがない。絶対にひと悶着起きる。なにせ、あの「東胎駅」を経由するのだから。

私は東胎駅が苦手である。案内板を見ていても迷うし、地図を見ていても道に迷うし、駅員さんに道を教えてもらっても迷うし、なんなら親切な通りすがりのおじさんに同伴してもらっても迷うからだ。何をしても迷子になってしまう。こっちに引っ越すときに経由した時は奇跡的になぜか乗り換えに成功したが、それ以降は一度も上手くいっていない。構内に踏み込むたびに、必ずよく分からない、なんだか薄暗くて人気のない場所に出てしまう。そうなると乗り換えどころではなくなり、駅からの脱出だけで手いっぱいになる。

まさに迷宮と呼ぶべき東胎駅を前に、最初の私は「こんな所を平然と突破できる都会の人はすごい」と心底感心していた。歩きスマホしながらでもスラスラ乗り換えができるなんてすごい、と本気で思っていた。だが、最近になってようやく認識が変わった。都会で過ごすうちに、やっと認識の誤りを悟った。「私だけが、迷っているのだ」と。車で移動することも多いから、方向音痴なつもりはないのだが不思議と東胎駅に来ると感覚が狂ってしまう。

 さて、ではなぜ車で移動を試みないのか、と思うだろう。タクシーとか、今は諸事情あってぶっ壊れているが自車とか使えば、楽に行けるのではないか、と。

たしかにその通りだが、私は今日、あえてそうしない。新幹線のチケットを貰っちゃったからという理由もあるが、もう一つある。

それは、東胎駅突破のための秘策を用意したからだ。世の中には駅構内を自動で道案内してくれるアプリがある。地図を表示して、現在位置を示し、なんと音声案内まで搭載されているという。今日、私はそれを使う。その名も「構内ナビゲーション」だ。

もちろんただという訳ではなく、使用には多少のお金はかかるが、それでも試してみる価値はあるだろう。ダウンロードサイトの評価も絶賛の嵐だったし、有名な配信者も案件で取り上げていた。金を巻き上げるだけ巻き上げて劣悪なアプリを掴まされる、ということはないはずだ。多分。一応。平気なはず。クレカの情報抜かれると怖いから、コンビニ払いを使ったけど。念のためタクシーを呼ぶお金も用意してあるけど。

……心配しても仕方がない。とりあえずやろう。現在時刻は朝九時。目指す新幹線の時間は十時十五分。大丈夫、一時間もあれば乗り換えできるはずだ。

「構内ナビゲーション」を、立ち上げる。


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