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少年戦争  作者: Mittsu
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錨泊

 地鳴りを起こしながら、変異体は真由美の居場所を目指して駆ける。一歩一歩の速さは感じられないが、その巨体ゆえに歩幅が大きく、見た目よりもかなり速い速度で近付いてくる。手にした槍の塊は、地面の上を擦り火花を散らす。


 真由美は冷静なまま表情一つ変えず次弾を装填する。そしてナイトと泰志の二人は、入り口を離れた変異体の姿を確認すると、そこへ向かって真っすぐに走り出した。手足の長いナイトは、その歩幅と速さからすぐに泰志を引き離す。置いて行かれまいと、泰志は必死の表情で全力疾走する。


 一方、近付いてくる変異体目がけて、真由美は連続して弾丸を放つが、どれもことごとく装甲に弾かれ、その動きを止めることはできない。弾倉の全ての弾を使い果たした真由美は、無駄な動き一つせず、太ももに備え付けていた予備の弾倉と入れ替える。


 なおも速度を落とさず近付いてくる変異体は、機械の残骸が散乱する一帯に足を踏み入れた。真由美の攻撃ポイントから数十メートルの距離まで迫る。彼女が弾倉入れ替えを終えて再びスコープを覗いた時、既にスコープの倍率に合わない位置まで迫って来ていたために、予想以上に変異体の姿が大きく映る。真由美は攻撃の手を止め、ライフルを下ろした。


 泰志は息を切らしながらも、必死に走る。彼の前を走っていたナイトは一足先に入口の扉前へと辿り着いた。扉の作動機構を確認する様子が、走り続ける泰志の目に映る。


 真由美と変異体の様子を物陰で確認していた奏と亮介は、駆け足で物陰を伝って変異体の背後に回る。奏の無駄のない流れるような走りをもってしても、変異体は少しずつ彼女たちと距離を広げていく。


 泰志はようやくナイトのいる扉の前に辿り着く。息も絶え絶えでスピードを落とすと同時に体勢を崩す。しかしすぐにナイトの方へと目を向けた。彼の表情を見て、泰志は状況が芳しくないことを悟った。


 「だめだ、開かない」


 扉の外観は、一見するとこれまでの廃墟等と違い、どこか近未来を思わせる真新しい物に見える。しかしそれは、長い年月誰にも手入れされることがなかったためか、ところどころ塗装が剥がれ落ち、錆が浮き出ていた。電気的な反応も一切ない。ナイトは少しの困惑を見せながらも、扉とその周辺を素早く見渡す。そんなナイトに、今は手を貸す力も知識も持っていなかった泰志は、なおも息を切らしながら、真由美たちのいる方向へと目を向ける。


 速度を落とさず、黒く艶のある髪をなびかせ駆ける奏は、真由美の居場所へと目を向けた。


 「どういうつもり…」


 そこには、ライフルを下げ、冷たい眼差しのままうつむく真由美の姿があった。奏は怒りにも似た感情を込めて歯を食いしばり、更に走る速度を上げる。


 「せっかくのデートなのに、置いてくなよなあ!…」


 亮介も必死に走ってはいるが、奏との距離は広がるいっぽうだった。


 変異体は真由美へと迫る。彼女を標的に定めたと言わんばかりに咆哮をあげながら、引きずっていた槍の塊を持ち上げる。


 もはや逃げられない。しかしそんな状況でも、真由美はうつむき立ち尽くしていた。


 その時、変異体の後方から甲高い金属音が何度も響き渡った。その音は、地響きのような足音にも、唸るような咆哮にもかき消されることなく変異体の耳に届き、その注意を引いた。


 奏は抜刀した刀の峰を、周囲の機械の山から突き出た金属にぶつけながら変異体目がけて駆け寄っていた。流れるように揺れる刀の刃が、陽の光を反射させ、信号のように点滅する。


 変異体は、その音と光に意識を向け、その巨体をゆっくりと振り向かせた。役目を終えたと言わんばかりに、奏の揺れていた刀は風を切るように構えられる。


 「おい、あいつ!」


 駆け寄る亮介は、変異体の意識を一手に引き受けた奏を見て焦りの表情を見せる。うつむいていた真由美も、自分を攻撃するはずだった変異体が、急に足を止めたことに驚いたように顔をあげた。


 攻撃対象を奏に変更した変異体は、その巨体を再び動かし奏へと駆け出す。唸る咆哮をあげながら両手で柱の塊を大きく振りかぶる。そのあまりの高さで、その背後から差し込む陽の光が遮られ、変異体の姿は逆光により漆黒に染まる。奏は、それにより作り出された陰に差し掛かった時、わずかにできた陽の差し込む位置に刀身をかざし、小刻みに動かした。


 その時だった。変異体は一瞬何かを嫌がるように顔を逸らし、少しだけ体勢を崩した。振り下ろされるはずだった槍の塊は、不安定に空中で揺れる。なおも駆け寄る亮介には、何が起きたのかさっぱり分からなかった。しかし、彼とは反対に立っていた真由美にはそこで何が起きたのか理解することができた。彼女は差し込む陽の光を刀身に反射させ、変異体の視界を奪っていた。彼女はたった一人でその巨体に立ち向かっているように見えたが、実際のところは周囲の環境そのものを味方に付けて戦っていた。


 変異体は体勢を崩しながらも、振り上げた槍の塊を地面に叩きつけた。轟音と共に地面の砂が一斉に舞い上がる。ナイトと泰志は思わずその方向に目を向ける。


 なおも砂埃が舞う中、変異体は命中したかどうかを確かめるように、振り下ろした槍の塊を持ち上げる。しかしそこには勢いよく叩きつけられたために深く沈んだ地面しかなかった。そして変異体は、槍の塊を握っていた手に異変を感じそこに目を向ける。鋭く長い筋が数本、わずかに装甲のない肌の部分に刻まれ、蛍光液が流れ出していた。変異体は痛がるそぶりを見せはしないものの、消えた獲物を探すように周囲を見渡した。動くものの姿が見当たらない。すると近くで小さな機械の残骸が転がる音が響いた。変異体は瞬時にそこに目を向ける。


 その瞬間、背後の障害物から目にもとまらぬ速さで奏が斬りかかる。彼女の眼は目標を定め、逃すまいと言わんばかりに見開く。


 彼女の全てを込めた一撃は、変異体の右足首に叩きこまれた。そこは関節部分のため周囲の装甲が比較的薄く、可動部分は肌が露出していた。正確な一撃により、変異体は体を支えられなくなり、右膝をついて地面に突っ伏した。その迫力に、ようやく追いついた亮介は見上げながら後ずさりする。その光景を目の当たりにしていた真由美に、巨体が落ちた際の風が吹き抜け、彼女の髪をなびかせる。そんな彼女の前に、少し息を切らせた奏が背を向けて立っていた。


 「簡単には死なせない」


 それは、変異体へと向けられた言葉ではなく、長瀬を撃った真由美へ向けられた言葉だった。怒りと憎しみが混じっているように思えたが、奏の刃は、真由美に向けられることはなかった。そんな奏の後姿を、真由美は黙って見つめていた。


 「おい!気をつけろ!」


 その瞬間、亮介が叫んだ。変異体は膝をついたまま、体を捻って槍の塊を後方へと振り抜いた。その息を吹き返す速さを想定していなかった奏は、回避が間に合わないと悟り、手にした刀の刀身でその一撃を受けようとする。しかし力の差が容赦なく彼女を襲う。刀身で受け止めた彼女は、その重さで弾き飛ばされた。彼女の体が勢いよく宙を舞う。一瞬のことに、真由美は驚き目を見開く。


 地面に転がった奏は、痛みと衝撃の影響ですぐには立ち上がれなかった。変異体はバランスを崩しながらもゆっくりと立ち上がり、倒れこむ奏の方を向く。ぎこちない足取りで、一歩また一歩と変異体は彼女にとどめを刺すべく歩み寄っていく。奏は起き上がれない。真由美は立ち尽くしたまま動かない。


 その一方で、泰志とナイトは未だ扉を開くことができないでいた。幸い、周囲に変異体以外の敵は見当たらなかったため、泰志も扉を必死に調べる。しかし開かない。


 「前にこの中にいたんだよな?その時はどうやって出てきたんだ?!」


 ナイトが生み出された後、彼がMOTHERのもとを去ったという話から、泰志はヒントを得ようとしていた。


 「内側から出る分には容易に作動した。しかし外からとなると話が違うようだな。おそらくだが、MOTHERか開発者の意思でないと開かない仕組みなのだろう」


 「要は"開かない"ってことかよ!」


 冷静ながらも分析を続けるナイトに対して、泰志の焦りは次第に大きくなっていく。扉表面の凹凸に指をかけ力づくで引く。しかしびくともしない。


 しかし、彼が引っ張る際に目線を上に向けた時、あるものが視界に映った。それは、以前に解放軍基地にあった「宝物庫」で見た光景に似ていた。扉上部に、目を思わせるカメラのようなものが、こちらを監視するように向いていた。泰志はそのレンズをじっと見つめる。


 「ナイト、MOTHERの望むものってなんだ?」


 急に落ち着き払った泰志に、ナイトは不思議そうな表情をする。


 「彼女の望むもの…?」


 「そう!」


 いつもは冷静なナイトだが、泰志の思わぬ質問に若干の戸惑いを見せる。しかしその泰志の表情を見たナイトは次第に冷静さを取り戻しながら口を開く。


 「彼女はこの世界を"心のよりどころ"にしたいと考えている…」


 「それから!?…」


 「しかし、それは今彼女の意図しない方向へと進んでしまっている」


 「それを解決するために、MOTHERが欲しがっているものとか知りたいと思っていることとかなんかないか?」


 「…"解放者"…!」


 ナイトは泰志の思いついた解決の糸口と、その可能性を理解した。


 「上川くん、名前を名乗るんだ」


 MOTHERの求めているであろう「解放者」。それは今まさにここにいる泰志に他ならなかった。


 泰志が意を決してレンズを見上げたその瞬間、扉から軋むような音が鳴り響いた。泰志は驚き後ずさりをする。そしてその扉は、彼が自身の名前を名乗り上げるより先に開いた。泰志とナイトは訳が分からず、開いた扉の前で呆然と立ち尽くす。


 しかしその後、二人はすぐに後方にる三人へ向かって、扉が開いた合図を送った。しかし反応がない。それどころか、変異体の巨体がゆっくりと移動している姿が目に映った。扉がすぐに閉まってしまうかもしれないと心配しつつも、二人は三人と変異体のいる方向へ駆け出した。


 痛みで苦しむ奏が顔を上げた時、そこには荒れた呼吸で唸る変異体が彼女を見下ろしていた。


 「とんだ初デートだな!」


 その時、亮介が変異体の顔目がけて弾丸を放った。弾はことごとく面装甲に弾かれる。しかし気を引くには十分だった。


 「勇者がみんなを救うってか」


 亮介は後ずさりをしながら、変異体の面装甲目がけて連射する。変異体はその弾を面装甲でことごとく弾きながら亮介の方へ歩み寄る。


 亮介は、舌打ちをしながら空の弾倉を入れ替える。その手つきは、変異体の地鳴りのような足音が近付いてくるたび焦りを帯びていく。しかし、ふとその時、変異体の足の隙間から、その奥に立ち尽くす真由美の姿が目に入った。彼は思い立ったかのように、付近の障害物に身を隠した。変異体は、彼が隠れた障害物ごとなぎ倒すかのように槍の塊を振るう。勢いよく弾き飛ばされた機械の残骸があたりに飛び散る。


 「好き放題しやがって」


 亮介は、強烈な攻撃によろめきながらも、姿勢を低くして障害物間を移動する。辺りの機械の山は、次々と刈り取られる草のごとくなぎ倒されていく。


 三人のもとに駆け寄る泰志とナイトの前に、飛ばされた残骸が転がってくる。二人はそれをかわしながら走り続ける。


 変異体は立つことを止め、片膝と片手を地面に着き、這うように移動しながら、亮介のいる方向にある残骸をなおもなぎ倒し続ける。亮介は雨のごとく降り注ぐ破片を体に受けながらも、少しずつ移動していく。そしてついに変異体は亮介を見失い、攻撃の手を緩め始めた。


 倒れたままの奏は、転がりぶつかってきた瓦礫を、力を振り絞って取り払う。その時、視界になおもうつむき立ち尽くす真由美の姿が映る。奏はそれを見た後、力尽き、再び地面に身を横たえた。その音を聞いた変異体は、彼女を標的にし、ゆっくりと近寄り始める。


 その様子を見つめながらも、真由美はライフルを構えない。そしてそれを握っていた手も次第に力を失い、ライフルは銃口を下にして、地面へ突き刺さるように落ちた。バランスを崩し倒れゆくライフル。それに合わせるかのように、真由美の体も膝から崩れそうになる。視界はぼやけ、もはや何も考えられない。


 「私…」


 真由美が小さくつぶやいたその瞬間、倒れそうになるライフルと彼女の腕を掴み上げる者が現れた。


 「まだ、"何か変えられる"だろ」


 飛び散る破片に晒されゴーグルにヒビが入り、全身傷だらけの亮介が真由美に語りかけた。真由美は目を見開き彼の横顔に目を向ける。彼の目はゴーグルに隠れていながらも、どこか遠くを見据えているように思えた。


 亮介は掴んだ真由美のライフルを、彼女の体に強引に押し付けつつ、反対の手で掴んでいた彼女の手をそれに添えさせた。そして、真由美のもとから駆け足で距離を置いた。


 「初デートの相手をしつこくナンパしてんじゃねえよ!」


 亮介は横方向へ走りながら、変異体の面装甲めがけて銃撃する。


 その弾丸は再び変異体の注意を引く。しかし、流石に怒りを買ったのか、変異体は地面に手を着き立ち上がった。完全に想定外。地響きを鳴らして再び駆けて来る巨体からはもはや逃げられない。亮介を巨大な影が覆う。


 真由美は、亮介から託されたライフルを握る。歯を食いしばり目を上げた彼女は、自らのライフルのスコープを素早く取り外し、ライフルを構える。


 狙撃音とともに、変異体の右足首を弾丸が貫通する。足を取られるように巨体が崩れ落ちた。変異体が倒れて来た衝撃で、亮介は尻もちを着く。


 真由美は素早く次弾を装填し、別の部位に照準を合わせる。彼女の呼吸は次第に小さくなり、巨体の動きがスローモーションになる。力を込めて引き金を引かれたライフルは、眩いマズルフラッシュを焚きながら、標的めがけて鋭い弾丸を放つ。それは、ほんのわずかに空いている面装甲の隙間に、吸い込まれるように入り込んだ。


 変異体は強烈な唸り声をあげ、手で顔面を押さえる。真由美の一撃は、巨体の目を潰した。


 変異体は視界を奪われ、槍の塊を振り回す。亮介は地面に伏せ、かろうじてそれをかわした。彼の視線の先には、止めていた息を吐き出し、肩で息をする真由美の姿があった。そして離れた場所では、奏が痛みに耐えながら這っている。頭上の安全を確かめた亮介は、素早く立ち上がり真由美のもとへ駆け出した。真由美はなおも肩で息をしながら、暴れる変異体を見つめる。しかしその視界の中に、必死の顔で駆け寄る亮介の姿が入り込んだ。


 「今だ、行くぞ!」


 亮介は真由美の腕を掴んで強引に引っ張り、そのまま奏のいる方へと駆け出した。真由美は体勢を崩しながらも、彼に合わせて走り出した。


 必死に機械の残骸まで這ってきた奏は、それを背にもたれかかっていた。そこへ、亮介が息を切らしながら駆け寄ってきた。


 「家に帰るまでがデートだろ?」


 亮介はそう言いながら、自身を見上げる奏の肩を担ぎ上げた。


 「キモい…」


 奏は痛みで顔をゆがめながらも、残る力を振り絞って地面を蹴って立ち上がり、亮介の肩に寄りかかった。


 抱えられた奏の鞘には、刀が収まってはいなかった。彼女の刀は少し離れた場所に転がっている。


 「遠藤!上川たちのところに行くぞ!」


 亮介は軽く振り向きながら真由美に叫ぶ。彼の後を追って走っていた真由美は、抱え上げられた奏の背中に目を向ける。彼女は思うように動かない体を、必死に動かそうとしている。そしてその傍に落ちていた彼女の刀が目に入った。真由美は少し考えた後、表情を変えないままそれを拾い上げて再び駆け出す。


 奏を抱えて進む亮介に、真由美はすぐに追いついた。所有者でない真由美が手にした刀は、まるで真由美を拒絶するかのように、刀身の輝きが失われ、見るからに切れ味がなさそうだった。


 亮介に肩を貸されている奏の横に真由美が駆け寄る。真由美は手にした刀を無表情で見つめる。彼女の存在に気が付いた奏は、彼女と彼女の手にしている自身の刀に目を向けた。そして互いに目を合わせた後、真由美は奏に刀を差し出した。奏は痛みで表情を引きつらせながらもそれを黙って受け取り、自身の鞘に戻した。


 三人のもとに向かっていたナイトと泰志の視界に、奏を支える亮介と、その少し前を走る真由美の姿が入った。


 「無事なようだ」


 ナイトは息を切らすこともなく、冷静な口調でつぶやいた。


 先に真由美が二人のもとへ合流する。傷だらけの亮介や奏に比べ、彼女には目立った外傷こそ見受けられなかったものの、その表情は冷たく、感情を読み取ることができなかった。


 「遠藤……」


 泰志は息を切らしながら、真由美の表情を見つめてつぶやいた。


 「お熱いのはいいけど、ちょっと手伝ってもらえるかな!?」


 奏の体を必死に支えながら走る亮介が、三人に向かって叫んだ。


 「ワタシが代わろう」


 ナイトはそう言うと、亮介が何とか支えていた奏の体をいとも簡単に抱え上げた。そして素早く入口の方へ向き直り、そのまま走り出した。


 亮介はその姿を見て一瞬呆然としたが、すぐに我に返り、後を追って走り出した。


 変異体の暴れる音と唸り声が遠くで響く中、五人は施設の入口へと駆けていく。


 泰志とナイトは、すでに扉が閉まってしまっているのではないかと気を揉んでいた。しかし、遠目に見えた入口の扉は、今もなお開いたままだった。


 「開いたのか!」


 亮介の目にも開かれた扉が映り、五人は最後の力を振り絞るように、入口へ向かって全力で駆け出した。


 「急げ!」


 先に到着したナイトが、奏を抱えたまま施設の中から叫ぶ。その声に応えるように、泰志、真由美、亮介の三人も残る力を振り絞り、次々と施設内へ駆け込んだ。


 「早く閉めてくれ!」


 亮介は膝に両手をつき、肩で息をしながら扉のそばにいたナイトに叫んだ。


 ナイトは以前、この施設の内部から外へ出た経験があり、内側から扉を操作する方法を知っていた。彼は扉の横に設置された操作レバーへと近寄る。しかし、手を伸ばしたところで、その異変に気がついた。


 操作レバーの制御方式が、自動から手動へと切り替えられていたのだ。


 「これは……?」


 ナイトは思わず手を止めた。しかし、今はその理由を考えている場合ではない。すぐにレバーを操作し、扉を閉めた。


 重々しい軋み音を響かせながら扉が閉じると、施設内は闇に包まれた。


 しかし、ほどなくして天井の照明が一つ、また一つと点灯していく。


 やがて、奥へと続く長い通路が、五人の前に姿を現した。

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