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#53 縁の下の舞台

シェイラ「もちろん行くっしょ?」

シキ「うん、すぐに準備しなくちゃ。そのイベントってどんなものかわかる?」

クラウン「イーサンマスター主催のユアディアルで開催される合同ライブのようだな。まだ、跳ねてないルーキーを中心にグランドマスター、イーサンの名前を使って発掘の場としているようだ。」

シェイラ「あーね。確かにグランドマスターってだけでドチャクソ人が集まるし、その前座でもなんでも同じ場で発表させてくれるんなら、アレン&シリウスマスターたちみたいなシンデレラストーリーも無理み率下がるしマジありがたパーリナイ案件」

シキ「新人に成長の場を設けてあげてるんだ。」

ますます、想像のイーサンマスターが聖人君子になっていく。

シェイラ「もう、ライブの当日準備とか始めてると思うから、今から行けば会えると思うよ。」

シキ「そうだね。軽く挨拶だけして、ライブ後に話を…。」

クラウン「いや、前の方がいいと思うよ。」

シキ「え、そうかな…?」

クラウン「あぁ、イベント後は団体での発表なら打ち上げ?とかあるだろう?達成感とか疲労感が最高潮にもなるし、その後取材というのもなかなか心身的に厳しんじゃないか?」

シキ「それもそっか…。じゃあ、シェイラちゃん今から行っても差し支えないか、チャット飛ばしてもらってもいい?」

シェイラ「りょ〜。」

クラウン「やっと、仕事らしい手順を踏んでの取材だな。」

シキ「そういえばそうだね。でも、ウチの班ではいつものことかも。逆にこうして快く迎え入れてくれることの方が珍しいよ…。」

クラウン「まったく、どんな仕事を回されてきたんだよ…。」

そんな風にクラウンくんに呆れられていると、早速イーサンマスターから返信があったようでシェイラちゃんがすぐに戻ってくる。それを確認してからいつもの恒例となってきたテレポート?みたいなものでイーサンマスターのユアディアルまで移動した。

次に目を開くとそこは、少しだけ見覚えのある景色だった。満開の桜が舞い散り地面には枯山水として砂利が敷き詰められている。石畳の道の向こうには日本造りの紅色の規模としては小さめな可愛らしい橋がかかっていた。見渡すと所々に背の低い松の木や苔がむしている大ぶりな岩がとても風流だ。

シキ「あれ、ここは春サーバー…?」

シェイラ「いんや、サーバーで言うならここは秋だよ。イーサンマスターのユアディアルだし。」

クラウン「向こうには紅葉が広がっているぞ。」

クラウンくんに声をかけられた方を見ると、確かに確認不足だったようで向こうには桜の木と同じくらい立派な紅葉が木の葉を落としていた。

シェイラ「イーサンシリーズは和を基調としていて、曲にも和楽器を採用する独特なスタイルが売りとなってるよ。だからユアディアルも和の侘び寂び?を前面に押し出してて、それがサーバーと似ちゃった部分があることは否定しない。」

思い返してみるとサーバーの季節の表現は世界中のその季節の代名詞をまぜこぜにしたような作りだったような…。馴染みない文化のものや逆に馴染みすぎてなんとも思っていなかった物は認知できていなかったから偏りのある印象になってしまっているのかもしれない。

もう一度景色に目を向ける。小さな赤い日本橋の上には和傘を差した人が対岸の桜を見上げるように立っていた。その姿はまるで一枚の絵のように完成されたものだった。

ーパシャ!

思わずシャッターを切った時、ふいにその人物がこちらを振り返ったのと重なった。赤茶のクセのある髪は胸丈ほどまで伸びていて、和装に身を包んだ少女。カメラを確認するとその少女がちょうど見返ったところが撮れていた。見返り美人のそれはそれは絵になるいい写真が撮れた。…ん?この女の子どこかで見覚えがあるような…そんなことを考えていると、その少女がこちらに声をかけ近づいてきた。

和装の少女「此度の取材の記者様でしょうか?」

シキ「は、はい!」

勝手に撮ってしまったことを注意されるかと思い咄嗟に謝ろうとしたのだが、その予想は大きく外れて急に言い当てられ動揺してしまった。しかし、写真と実物をよくよく見てみてみるとその少女の顔はニーナちゃんだった。メガネを外し、和装に身を包んで髪も伸ばしておりだいぶ印象は違うが間違いなくニーナちゃんだ。

ニーナ・イーサン「初めまして。ご足労いただきありがとうございます。私はイーサンマスターのシンパサイザーのニーナ・イーサンです。」

シキ「わざわざお出迎えいただきありがとうございます。」

ニーナ・イーサン「主様は、向こうでお待ちです。ちょうどリハーサルも終えて本番に備え落ち着いている状況です。」

ニーナ・イーサンちゃんの案内のもと橋を越えて砂利道を少し歩くと小高い塀があってその向こうに開けた場所があった。日本家屋の平屋を開け放ったような、能舞台のような屋根のある舞台。高さは一般的なステージほどはもなく、観客と目線が近くなりそうなのが特徴的だった。そこの脇で、多数のウィンドウを確認している人がいる。あれがイーサンマスターだろうか?

ニーナ・イーサン「主様、お連れしました。」

イーサン「あぁ、ありがとうございます。ニーナさん。」

イーサンマスターはそう言ってウィンドウを全てまとめてどかした。やはりイメージ通りの物腰優しそうな青年だ。

シキ「初めまして、イーサンマスター。この度はこちらの取材を快く承諾していただいてありがとうございます。」

イーサン「いえ、こちらとしてもより多くの人に知ってもらう機会になるので願ってもないお話でしたよ。」

シキ「今回のライブは新人にスポットライトを当てることを目的としたもののようですね。」

イーサン「はい、ありがたいことに既に数回開催していて、恒例となりつつあるんです。出演したマスターさんたちも頑張られていて、少しづつですが着実に反響があるみたいです。みなさん今でも定期的に報告をくださるんですよ。」

シキ「そうなんですね、それはやり甲斐がありますね。今はライブ前の最終確認ですか?」

イーサン「はい。リハーサルの配信を各マスターに確認してもらって演出面などで何かあればコメントをいただくようにしているので、それと演出指示書を照らし合わせて確認していたんです。」

シキ「演出指示書?」

イーサン「まぁ、書面で本当に来ることはなかなかありませんが、こういうライブ内容にして欲しいことや、マイディアルでのライブと同じ演出を再現してほしいといった要望を送ってもらうんです。ぼくはアナログ人間なものでそれを紙にまとめて管理しているんですよ。」

シェイラ「マスターと一緒じゃん。」

シキ「そうだね。紙の方がやりやすいのはよく分かります。マスターが実際に来て監修するわけじゃないんですね。」

イーサン「そうですね、実際に足を運んできてくださる方はほとんどいません。大体、IDollだけこちらに来ていただいて、マスターとは遠隔から連絡をとっています。」

シキ「それってやりにくくありませんか?」

イーサン「どうでしょうか…それで慣れてしまっているので、そういうものだと思っています。でも、もし直接話せたら手短に済むこともあるのでしょうね。ですが、それが一概にいいとは考えていません。匿名だからこそ忌憚なき意見をおっしゃっていただきやすのでしょうし。」

シキ「確かに、直接細かいことを要望するのは相手を困らせてしまうことやわがままなのではないかと考えてしまって言いにくいですよね。」


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