#49 三人目
シキ「はい!本当にありがとう、クラウン君。」
クラウン「…。」
クレア・アレン「あんだけやれるんだから、キミの正式なパフォーマンスも気になるところだね。取材とかイベントとかなんとか細かいことはアタシはどーでもいいけど、それらが終わったら見られるっつーなら期待してるから、腐らず頑張りな。」
クラウン「…心配しなくても直に見られるよ。」
クレア・アレン「それは楽しみだね。…ってちゃっかり先輩風吹かしてるけど、アタシたちも歴で言うならまだまだルーキーのレベルなんだけどね!」
そう言ってクレア・アレンちゃんは豪快に笑った。クレア・アレンちゃんは大人びているけど、ストリート系と言われて想像する性格よりも快活な子だなぁと思っていると横でシェイラちゃんがふてくされていることに気が付いた。
シェイラ「…クラウンばっか特別みたいで腹立つ。」
クラウン「特別だからな。お前とは格が違う。」
シェイラ「腹・立・つ~~!!!調子に乗んなっ!!…ねぇマスター!マスターのシンパサイザーはウチでしょ!?こんな性悪じゃなくて~!!」
シキ「あはは…どうだろうね…。」
クレア・アレン「!…へぇ…そんな面白いこともあるもんなんだねぇ。…あ、アレンー!」
クレア・アレンちゃんがこちらの一連のやり取りを見てそう意味深なことを呟いたとき、ちょうどたどり着いたのか話が途切れてしまった。クレア・アレンちゃんに呼ばれた青年は機材から顔をあげ回転式の椅子を回した。
そこはストリートの行き止まり。もともとはストリート内のバスケットコートだったのか壁にはバスケのゴールがある。そこの中央に廃材と機材がごちゃなぜになった山があってその麓で機材に囲まれ何やら作業をしていたのがアレンマスターだった。
アレン「なんだ、イベントが終わるにしては早ぇじゃねぇか。」
クレア・アレン「お気に見つけちゃって。その子たちがアレンに会いたいって言うから連れてきたの。」
アレン「へぇ、そりゃ珍しい。…って俺に…?」
シキ「こんばんは。アレンマスター。」
結局交渉材料もまとまらず出たとこ勝負前提で、事の経緯をありのままに話すことにした。
シキ「…というわけで、クレア・アレンさんに案内してもらったんです。」
アレン「なるほどなぁ。アイディアルを記念するイベントにグランドマスターを一同に集める…。…ちなみにその賛同者はどのくらい集まってるんだ?」
シキ「それは…。現在までで約半数のマスターにお話させていただいて、返事の保留もありつつ、正式にお受けしていただいたのはまださらにその半分といったところですかね…。」
アレン「まぁ、そんなところだろうな。その半数の中にアーサーマスターは含まれているのか?」
シキ「いえ…お話ししようとした矢先にライブの事故が起こってしまったので、それからなんとかコンタクトを取ろうとしてはいるのですが、お忙しいようで応答はありません。」
アレン「やっぱり、アーサーマスターからの応答はないか…。アーサーマスターの参加が不明なら、難航するのも当然だな。」
シキ「”やっぱり”ということはアレンマスターもアーサーマスターとコンタクトを…?」
アレン「あぁ。また、コラボの件でな。俺たちは一度コラボしてからも定期的に続けてるんだよ。そんな関係でアーサーマスターとは交流を続けてるんだ。…でも、あの事故が起きてから連絡が取れなくなっちまってなぁ。どうやらアリアの修復自体はおおよそ落ち着いている段階らしいんだが、それよりも深刻なことがみつかっちまったとかなんとかで…。」
シキ「深刻なこと?」
アレン「それ以上のことは俺も知らないんだ。「だからコラボの件は少し保留させてくれ」って連絡がきて。…アイツ、とことん根を詰めちまう性格っぽいし、ちゃんと栄養と休息取ってるんだか心配なんだよな…。」
シキ「アレンマスターはアーサーマスターのことよくご存じなんですか?」
アレン「いいや、よく知らねぇけど多分俺より年下?っぽいし。あの若さでこんなすげぇサービスを立ち上げたのは見上げたもんだが、見るからに人を頼るのが下手そうでそそっかしいって印象なんだよなぁ。」
シキ「そうなんですか。」
アレンマスターは想像よりもずっと気さくで話しやすい人だった。ストリート系のマスターだからいかついラッパーだったり、いきなりガンを飛ばされたりなどを覚悟していたけど杞憂だったようだ。
アレン「…っと、取材とイベント参加の話だったっけか。悪いだいぶ話がそれちまったな。俺としては構わないよ。何もそういったイベントを拒絶してるわけじゃねぇし、ただそういうのがなかったからさ。いや、面白そうだと思うよ。お前もいいだろ?」
そう言ってアレンマスターは機材の山の方に話しかける。しかし、クレア・アレンちゃんもシェイラ・アレンちゃんも隣にいる。いったい誰に話しかけて…?気になってアレンマスターが声をかけた方へぐるっと山を回ると、そこはちょうど山によって隠されていたがバスケコートの半面が残っておりそこで一人の青年がバスケをしていた。青年がスリーポイントシュートの構えを取る。その瞬間、そばにいたはずのシェイラ・アレンちゃんが飛び出し、ボールを奪ってそのままレイアップシュートを決めた。
青年「あっ、てめ…!」
アレン「おい、シリウス。俺たちの話聞いてたか?」
シリウス「うっせぇな!聞いてたわ。ぺちゃくちゃぺちゃくちゃ喋りやがって聞きたくなくても聞こえるわ。」
絵に描いたようなガンを飛ばす系の人が出てきた…!シリウスと呼ばれた青年は見るからにIDollのどのtypeとも違う。ということはイスト…?
アレン「聞いてるんだったらちゃんと返事をしろよ。」
アレンさんはシリウスさんのけんか腰をなんとも思わず平然と返している。何だか慣れている様子だ。ということは知り合い?そりゃ、イベントの参加も聞いているくらいだし…。
シキ「…あの、この方はどちら様でしょうか…?」
場が静かになる。何か間違ったことを聞いてしまったのかシェイラちゃんに助けを求めるが彼女もことが読み込めていない様子だった。アレンさんとクレア・アレンちゃんが顔を見合わせる。
クレア・アレン「あー、言い忘れてたわ。というか、普通に忘れてたわ。」
クレア・アレンちゃんが何かを思い出すように手を打った。
クレア・アレン「記者さんアタシの名前は?」
シキ「え…クレア・アレンさん…。」
クレア・アレン「向こうのシェイラの名前は?」
シキ「シェイラ・アレンさん…。」
クレア・アレン「アタシとシェイラは?」
シキ「今一番アツいシェレアユニット、アレンシリーズ。」
「「…。」」
アレン&クレア・アレン「「あはははははははははははははは!!!!」」
シリウス「ちっ。」
ことが呑み込めない。聞かれたとおりに答えたらアレンさんとクレア・アレンちゃんがこらえきれないとばかりに吹き出して笑い転げ始めたのだから。シリウスさんはさらに不機嫌そうに舌打ちを吐くとシェイラ・アレンちゃんからボールを貰う、シェイラ・アレンちゃんは「どんまーい」と言ってボールを渡すのでシリウスさんの怒りメーターがピキッと一段階上がるのが目に見えるように分かった。
—ガン!!
シリウスさんが怒りをぶつけるようにダンクをし、バスケゴールが鈍い音を鳴らす。
アレン&クレア・アレン「「あははははははっはっははははっはははっは!!」」
シリウス「いい加減笑うなや!うっせぇんだよ!!ぶっ飛ばすぞ!!」




