#4 理解者のかたち
そうして彼も元の動かぬ姿に戻ってしまった。もう少し話してみたい、と思ってしまった。…上手い商売戦略に気付かぬうちに乗せられているのだろうか。
アリア「とまぁ、クレアとクラウンはこんな感じですね〜!」
そう言いながらアリアちゃんは8人が静かに並んでいるラインから一歩前へと出ると、クレアちゃんの隣の腰丈ほどに切り揃えられた雪のように白い髪と特徴的な露草色と金の瞳を持つ女の子を紹介した。
アリア「この流れで他のIDollのことも紹介していきますね!続いては、少女型IDollタイプシェイラ!それからシェイラの対の存在、新米マスターさんから見て左から3番目、青年型IDollタイプシエルのご紹介です。この子たちは特に運動能力が他のIDollと比べても飛び抜けて優れています。そのため、POP系のミュージックと非常に相性が良く、ダンスが上手いため、ライブやMVに非常に映えます。そこら辺の音楽がお好きであればとてもおすすめですね!その他にも、歌唱能力の面からしていえば、力強く歌い上げるのが特徴的です。技術的に言えば、コブシやガナリなどが非常に綺麗に出せますよ。」
リズ「へぇ、そんなのもあるんだね。」
リアム「ずいぶん細かく設定されているんだな。」
画面から目を離して、二人を見上げると、リズさんは興味深そうに笑っており、リアムさんはもはやアリアちゃんの話を理解しきるのを諦めたようであった。
シキ「…。」
アリア「意外、ですか?外見に対して。」
シキ「えっ。」
アリアちゃんに心を読まれたようで驚いて言葉を失ってしまった。
リアム「あ〜言われてみれば確かに?運動のうの字もやんなさそうと言われればそんな気もしてくるな。」
リズ「それは個人によるだろ。見た目で判断することじゃないよ。」
リアム「リズがこう見えて子供好き、とかな。」
リズ「それは外見関係ないじゃないか、はっ倒すよ?」
シキ「あはははは…。」
アリア「シェイラに関しては実際に目にしてもらう方がいいですよ。」
アリアちゃんが軽くシェイラちゃんを後ろから押すと、一瞬シェイラちゃんの体にノイズが走りパチリと瞳を瞬いた。
シェイラ「やほー!マスター!!ウチは少女型IDollのシェイラ!目を離したらどこかに消えちゃう、風が吹けば飛んでいきそうな儚げ清楚な性格を想像していた?ザーンネン!こんな感じのシェイラちゃんなのでしたぁ!ま、これはこれでそばに置いたらハマること間違いなしだって。そんな感じでヨロ〜。」
シェイラちゃんが下がると同時にアリアちゃんによって押されたシエルくんが前に出た。
シエル「お、オレに目をつけるとはさすが、お目が高ぁい♪オレは青年型IDoll、シエル。もちろん、後悔はさせねぇよ?自信あっし。選んでくれたら、その時はその時でヨロシク♪」
アリア「シェイラとシエルのデフォルトの性格はこんな感じです。シェイラは見た目の儚さとはウラハラに快活でハツラツとした性格をしています。シエルはどことなく掴みづらい飄々とした性格をしていて気分屋で…。そこがギャップとして、人気ですが、この儚さに性格も統一するカスタマイズも流行っているので、シェイラたちを選んだ場合は是非ご検討ください。でも、とても気さくな子たちですのでコミュニケーションを図る上では非常に接しやすく、積極性があるので話しやすい、盛りあげ上手なんですよ。それからマスターのサポート機能として、貯蔵できるメモリーの容量が他のIDollと比べて桁違いに多いのも違いとして挙げておきますね。マスターの吐息ひとつ、視線の動きひとつまで!一生忘れることなく記録し続けますよ〜!…ではでは、続いて少女型IDollタイプフィノとその対の青年型IDollタイプフィオのご説明です!」
アリアちゃんはそう言うと、シェイラちゃんのさらに右隣に移り、茶髪に氷色のメッシュが入ったおさげ髪を垂らし、とろんと垂れ下がった翡翠色の瞳の少女の肩を持った。
アリア「この子たちは手先が非常に器用な個体です。また、センスというものに非常に敏感で、マスターの好みを把握するのが得意な子達です。ですので、実践的な所で言うと衣装制作やライブのセット、演出の考案など、デザイン系はこの子たちの独壇場ですね!」
リアム「そんなことまでやっていかないといけないのか!!」
アリア「いえ、マスターたちは基本的に口を出したい部分だけ口出ししていただいて、それ以外の部分は私たちがマスターの好みの傾向、曲の傾向を学習してプロデュースさせていただきます。」
リズ「この子たちを選ばなかった場合、そこら辺はどうなるんだい?」
アリア「IDollの成長で次第にできるように、変わるようになっていきますよ!形成に時間を要するかもしれませんがそれは悪しからず。再び言うようですが、IDollの個性はあくまで得意不得意の範疇でできないことなどの差はありませんのでご安心ください!」
リアム「ならできるのか…?」
リズ「あぁ、いくら君でも人に任せるくらいならできるだろう?」
シキ「ははっ!リアムさん、言い返されちゃいましたね。」
リズ「ふふ、当然だろう?僕はやられっぱなしじゃ気が済まない性質でね。」
リアム「そんなに根に持っていたのかよ…悪かったって!」
リズさんは謝るリアムさんを無視して「続けてくれたまえ。」とアリアちゃんに先に進むように促した。
アリア「…あっ!すみません。みなさん本当に仲がよろしいんですね!皮肉を言っても笑い合って許しあえるのは仲の良い証拠です。…その…」
リズ「珍しいだろう?今どき、人と人とのこういう関わり合いが。」
アリア「そうですね…それで生まれたのがこのIDollサービスな訳ですし…。」
リズ「あぁ、それでも人と人との繋がり、縁、絆というものは失われてはいけないものなのだよ。進化し続けるのは良いことだが、それに伴う取捨選択は間違えちゃいけない。僕は人が人であるのにコミュニケーションはなくてはならないもののうちの一つだと思うよ。」
アリア「はい!私も同感です!なので、みなさんのやりとりはとても勉強になりました!縁を一から築くのは私たちIDollのメイン機能なので!」
このくだらないやりとりさえ、彼女たちは”学習”にしてしまうのか。
リズ「まぁ、相手や在り方は人それぞれか。」
一瞬だけひっかかって、リズさんの方を振り返った。リズさんは画面から目を外しどこか諦め切った残念そうな顔をして息を吐いていた。それも一瞬のことで、視線を送っていることにすぐに気付かれてしまい、気がつけば彼はいつもの何を考えているのだかよくわからないにこやかな表情に戻っていた。
アリア「話がだいぶ逸れてしまいましたね、すみません!えっと…そう!次はフィノとフィオの音楽面での特徴のお話ですね。この個体は声が特徴的です。アニメ声って言うんですかね…?良くも悪くも合う音楽性が限られてしまうかもしれませんが、ドンピシャにはまると雰囲気の完成度が高まります。フィノ、フィオはとにかく世界観に特化していると言った感じですかね。」
世界観…リズさんのあの鼻歌のような、不完全だけど心に残る声とは正反対だ。
アリア「それからフィオは少し特殊で青年型IDollの中でも唯一ソプラノキーの出る、高音を得意とした個体となっています。声質も人間の変声期前に近いものでそういった需要もあるんですよ!」
リアム「そういった需要って?」
アリア「一口で言うなら、ショタです!まぁ、年齢操作もIDollの成長次第やオプションで変更可能ですが、デフォルト設定では彼だけ、ということですね。」




