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#3 あなたの一番の理解者

シキ「もし、マスターが曲を作れなかったら…?」

リズ「確かに。マスターの全員が曲を作れるとは限らないだろうし、そんなの初めてな人が大半だろう。」

アリア「はい。ですので、IDollには他とは違う機能が二つ付いています。そのうちの一つが、楽曲制作のサポートですね。IDollには各々得意不得意はあるものの全員にサポート機能が付いており、マスターが曲を作る際のお手伝いをします。具体的に誰が何を得意とするかは一体一体の紹介のときにご説明しますが…。なので、曲作りが初心者のマスターさんでも安心ですよ!」

なるほど…それはありがたい…。

アリア「そしてもう一つの機能は成長です。私たちがマスターに初めて会ったときはデフォルトの設定のままなのですが、マスターとコミュニケーションを重ねるうちに成長をします。その成長には無限の可能性があって…百人のマスターがいれば百通りのIDollが存在する。平たく言うと、マスターとのコミュニケーションを経て私たちはマスター好みに進化します。見た目も、口調も、性格も、みーんなマスター好みになれる可能性があるので楽しみですね。」

シキ「変わっちゃうんですか?」

アリア「はい、変わりますよ。だって私たちはマスターの一番のパートナー。いつまでもマスターには私たちのこと好きでいてほしいですもん。そのためには努力も惜しみません。人間だってそうでしょう?好きな子に合わせて髪を切ったり、服を合わせたり、いつもは聞かない音楽を聴いてみたり…そんな感じです。」

それじゃまるで”IDollがマスターに恋をしている”ようだ。

アリア「もちろん、成長は可能性の話です。成長には時間がかかるし、必ずしも理想通りになるとは限りません。だからこそ、マスター自身が私たちをカスタマイズできるオプションが用意されているんです!」

相手を自分好みにできるということか。何でも思い通りにできる相手がいるということは、それはとても、便利で魅力的だ。でもそんな神様みたいなことしてもいいのかな…?

リズ「オプション購入じゃないとできないことはあるのかい?」

アリア「基本的にはありません。ただ、必ずしもご期待通りに添えられるわけではないので…特に変化の大きいものはリスクと時間を要します。例えば年齢操作だったり、獣人化だったり。そういったものを望まれる場合はオプションで変えてしまう方がおすすめです。」

リアム「はー、そんなこともできるのか。」

アリア「あとは二体以上のDollを持つ場合もオプションでのみ可能です。」

不思議そうな顔をするとアリアちゃんが続けた。

アリア「大体のことは一体で足りますからね〜。」

仕切りなおすようにアリアちゃんは8人の真ん中に割って入る。

アリア「以上がIDollに関するご説明です。ここからはマスターのIDoll選びですね。こちらに並んでいるのがご購入可能なIDoll一覧です。私を境にマスターから見て右手が少女型IDoll。左手が青年型IDoll。青年型は少女型を元に作られましたので基本的な能力は少女型と変わりません。まぁ、男体化と思っていただければ。」

確かに、アリアちゃんを挟んでシンメトリーに同じ髪色、瞳の色をした少年少女が並んでいた。

リズ「……理解に苦しむ概念だね」

リズさんが眉をひそめる。

リアム「なぁ、あんたは買えないのか?」

今まで黙って説明を聞いていたリアムさんが不意につぶやいた。言われてみればアリアちゃんはこの列に並んでいるようでいて並んでいない。同じDollなのに他の8人とは違い説明役として自由に動き回っていた。

アリア「おっ、お目が高いですねえ~。でも、残念ながら私はオリジナルだから一般発売されていないんです。」

リズ「何か不備でもあるのかい?」

シキ「リ、リズさん…!」

リズさんの不躾な質問にアリアちゃんは顔色一つ変えない。

アリア「無いですよ。私のスペックは他のIDollと遜色ありません。」

リアム「じゃあなんで?」

アリア「さぁ…?マスターがそう決めたので。私のマスターは唯一マスターだけってことですね。」

リズ「君のマスターって…。」

アリア「はい。IDollの開発者です。」

リズ「なるほどね。」

アリア「私のことを気に入ってくれたのであれば少女型IDollのタイプクレアがおすすめです。私を元にして生まれた個体なので…ほら、そっくりでしょう?」

アリアちゃんはそう言って黄金の髪にエメラルドの瞳を持つポニーテールのIDollに顔を近づけた。確かに、二人並んでみると二人とも特徴的な容姿をしているが基本的な瞳の形や目鼻立ちが非常に似通っている。

アリア「少女型IDollタイプクレアはスタンダードのオールマイティ型です。良くも悪くも得意不得意がなく、その分マスターに染まりやすい、適合しやすいのが特徴です。私のことを気に入ったうんぬんを除いてもタイプクレア、それからクレアの対の存在である青年型IDollタイプクラウンはIDollサービスに初めて触れる初心者マスターに非常におすすめですよ!」

シキ「染まりやすさは重要なの?」

アリア「そりゃ、大事ですよ!私たちDollはマスターの一番の理解者になることが存在意義。なので、案外音楽の話は二の次だったりします。その時に性格の合わないDollが相棒を名乗っても皆さんにとってはストレスになるだけじゃないですか。だから、私たちDollは成長する必要があるんです!その点タイプクレアとタイプクラウンはデフォルトの性格が強くなく、染まりやすい。その成長はまさにマスター次第!成長に無限の可能性があるため超初心者向けとも超上級者向けとも言われています。音楽の面でもクレアとクラウンは非常に多方面に優秀でどんな音域、曲調でも歌い上げることができるのが特徴です。…あ、実際に軽く自己紹介してもらった方が性格とか掴みやすいですよね?ちょっとお待ちください…。」

アリアちゃんはそういうとクレアちゃんの後ろに周り、ポンと軽く背中を押した。すると、クレアちゃんの体に一瞬ノイズが走った。

クレア「…。」

そして、今まで瞬き一つせず静かに佇んでいたクレアちゃんが息を吹き返したように一歩前に出て、彼女のエメラルドの瞳と目が合った。ふわりと微笑まれる。なんだか、その奥には自分の意志が…あるのだろうか?

クレア「初めましてマスター。少女型IDollのクレアです。至らぬ点もあると思いますが一生懸命マスターをサポートしたいと思います。だから、あなたと同じ時を過ごせたら嬉しいな。」

そう言ってニコリとクレアちゃんは笑ったあと、また一歩下がりそこからは先ほどと同じように動かなくなってしまった。一方アリアちゃんは気がつけばクラウンくんの背後に立っており、クレアちゃんの時と同様、彼の背中を軽く押した。

―ザッ

一瞬彼にノイズが走り、彼は瞳をこちらに向けた。

クラウン「初めましてマスター。俺は青年型IDoll、クラウン。至らぬ点もあるとは思うけど、俺なりに一生懸命あなたをサポートすることを約束するよ。だから、あなたと同じ時を過ごせたら嬉しいな。どうぞよろしく。」


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