#40 ロリシェレアてぇてぇ
ロイド「申し訳ないが、僕は恥ずかしながら自分たちのこと以外のアイディアルには明るくないんだ。でも、ラルドならリゲルシリーズをよく知っていると言うか敬愛しているから、リゲルマスターについてなら何か…。」
ラルド「お前っ!バカ!!なんのためにあの時お前を黙らせたと…!」
シェイラ《えぇ!かっこいいを極めるラルドマスターはめっキャワなリゲルシリーズがお気になん〜??》
ラルド「〜〜〜っっっ…!!!」
シキ「めっ…キャワ…?リゲル…?」
シェイラちゃんの並び立てた謎ワードに頭がはてなでいっぱいになっていると、ロイドくんが検索をかけたものを見せてくれた。
ロイド「これです。上位マスターのうちの一人、リゲルシリーズ。」
画面にはいっぱいにピンク、フリル、お人形、お花。この世の可愛いを全て詰め込んだ玩具箱のような空間に甘々なロリィタ服に身を包んだクレア・リゲルちゃんとシェイラ・リゲルちゃんが可愛らしくぴょんぴょん動き回り、裾のフリルがそれに合わせて踊っていた。
…なるほど。リゲルシリーズ(ロリィタ)×かっこいい=ゴシックロリィタ…か。
シキ「…。」
ラルド「なっ、なんだよ!そんな目でこっち見んなっ!…あ〜!悪ぃかよ!!俺がこーゆーの好きで…!!」
シキ「…いや。」
シェイラ《別になにを好きになるかは個人の自由っしょ。それを変とは思わんし。》
シキ「うん。今見せてもらったけど、リゲルシリーズ可愛いもんね。これは好きになっちゃうよ。」
ロイド「ラルドはリゲルシリーズのイベントライブは必ず見逃さないし、家にはものすごい数のグッズがコレクションされているんだ!」
ラルド「…。なんでロイドが得意げなんだよ。…別に好きだからといってもリゲルマスターとの会い方とかは知らねぇ。俺が知りてぇくらいだし。例によって例の如く、普段のユアディアルには全く顔をださねぇし。ライブの時だけアバターで登場するくらいだな。」
リゲルマスター関連になると少し語彙が柔らかくなるんだな。
シキ「その様子って何か見られるものとか残ってないかな?」
ラルド「リゲルマスターがライブやる前に必ずする口上がある。それならどっかに動画が…あった、これだ。」
リゲル《皆の衆!待ちに待たせたのです!可愛いは正義!可愛いは無問題!可愛いは世界を救う!!今宵はリゲルの最強スーパープリティクレアたんとシェイシェイのパフォーマンスをとくと満喫し、その可愛さに身悶えするのです!!》
そう謳うのは明るく快活でキラキラとした球体関節の少年アバターだった。ライブ映像であるから当然ではあるが、会場にはたくさんのイストがひしめき合い、以前見たアリアちゃんのライブとはまた雰囲気が異なって、歓声はまるで地響きのように会場を震わせていた。リゲルマスターの口上に合わせ、既にライブは始まっていると言わんばかりに合いの手に息を揃えるイストたち。その姿はなんというか訓練兵と言わんばかりの見事な連携であった。
リアム「ん?んんん??なぁ、もう一回!」
リアムさんの要望で今の一連が再生される。
シキ「どうしたんですかリアムさん?」
リアム「いや、なんかこの声どっかで聞いたことがあんだよ…。どこだったけなぁ…?もう一回!」
ラルド「そりゃ、上位マスターなんだからアイディアルやってたら一度くらいどっかで聞いたことあるだろうよ。」
リアム「いや!割と馴染みがある気がするんだ!!ちょっと待ってくれよなぁ…もう一回…!今喉元まで来てんだ…。可愛いは正義…クレアたん…シェイ…シェイ…?」
リアムさんは真剣にリゲルマスターの言葉を反芻するように呟いた。呟かれる単語とのコントラストでちょっと面白い。
リアム「あーーーーーー!!!!!」
突然の大声に自分の邪な考えが見透かされ怒られるのかと驚き身構えてしまった。しかし、そう言うわけでもなくリアムさんは快活ですっきりとした表情だった。
リアム「思い出した!!コイツ、“ロリシェレアてぇてぇ”だ!!!!」
「「…。」」
相変わらず、リアムさんのテンションとはかけ離れた突拍子もない言葉で全員がポカンと口を開け、場に置いてかれてしまった。
シキ「…誰ですか、その聞くからにIQの低そうな名前をつけた人は。」
リアム「だから!それがリゲルマスターだって!間違いねぇ!俺よくこの声や話し方聞くし!!」
ラルド「待て待て!仮にそのアホそうな奴がリゲルマスター本人であったとして、なんでアイディアルに一切姿を現さないリゲルマスターと面識があんだよ!?」
リアム「えっと…なんつーんだっけ?ゲーム友だち?…ネッ友か!」
リアムさんの話をまとめると、最近彼は新しいオンラインゲームにハマっているそうで、そこでハチャメチャ強いプレイヤーと出会った。それが、アカウント名“ロリシェイレアてぇてぇ”さん。なんかのはずみで縁ができてそれ以来最初はウザがられたもののしつこく絡みに行ったら今では一緒にゲーム内で行動するほどの仲になったらしい。今となっては逆に“ロリシェイレアてぇてぇ”さんの方が自分のハマっているアイディアルのことや趣味のことを捲し立ててもはやなにを言っているのかよくわからないんだとか。最初はチャットでのやり取りだったものの、あまりに捲し立てがすごくゲームのしながらでの字面が追えなくなったリアムさんは“ロリシェレアてぇてぇ”さんと音声チャットをするようになった。その彼の声が言葉使いがリゲルマスターと全く一緒ということで、リアムさん曰く同一人物で間違いない、という話だった。
ロイド「僕とノアマスターも同じバスを利用するクラスメイトだったんだ。そういう縁もあるのだろう。」
ラルド「うっっっっ!!!…らやましいぃ…!!おい!そのゲーム教えろ!俺もやる!!」
クラウン・ロイド《おいおい主!これからイベントに向けて本腰入れてくんだろ?さっきもインスピレーションが沸いたような手応えがあったじゃないか。ゲームしてる時間なんてあるか?》
ラルド「………ねぇ、けどぉ…。くぅ……!」
ロイド「僕が代わりにやろうか、ゲーム…?」
ラルド「それじゃ意味ねぇだろ!?」
リアム「とりあえず、そーゆーことならリゲルマスターのことは俺に任せろ!!図らずとも仕事に貢献する振る舞いをしていたとはさすができる先輩、リアム先輩だ…!」
自分で言わなければ、本当に心の底から感謝したのに。この一気に熱が冷める感じはなんだろうか。
シキ「わ〜さすがだなぁ〜尊敬しちゃう〜〜。」
リアム「ハハハハハ!もっと敬っていいんだぞ!後輩!!」
−キーンコーンカーンコーン
ロイド「あ、予令だ。そろそろ戻った方がいいな。」
シキ「今日は貴重な休み時間にお話聞かせてくれてありがとう。記事の草案ができたら確認のためにまた連絡するね。」
リアム「掲載用に後でユアディアルの方にも遊びに行かせてもらうわ。」
ロイド「はい、わかりました。待ってます。」
ラルド「…。」
リアム「このイベントちゃんと真剣に頑張れたら終わった後一緒に遊ぼうな!リゲルマスターにも上手いこと話しといてやるよ。」
そう言ってリアムさんは落ち込んだ様子のラルドくんの頭をわしゃわしゃと掴むように乱雑に撫でた。
ラルド「マジか…!」
リアム「だから、お前たちはお前たちらしく今しかできない最高に楽しくかっこいいを本番でも見せてくれな!」
顔を見上げたラルドくんは期待とやる気に満ちた若々しくとてもいい顔をしていた。ロイドくんもそんな彼を見て力強く頷いた。
ロイド&ラルド「「はい!!」」




