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#30 オフモード

シキ「ま、迷子かな…?」

シェイラ「え〜?IDollがマスター置いて迷子ぉ??それってちょーポンコツじゃね?」

女の子「失礼なー。ボクは超有能IDollだよ☆ボク欲しさに国が傾くレベルだってー。それに会いたがってたくせにー照れ屋さんだなこのこの〜☆」

シェイラ「…別にそんなスーパーローハイテンションのよくわからんIDollに会いたいなんて思ってないデスケド。」

女の子「きゃ、辛辣〜☆じゃ、秘密の合言葉教えたげるー『とぅっとぅる〜。おはこんにゃんにゃちは☆みんなのバーチャルアイドル、クレア・セシルだよ☆』」

シキ「え…。」

その女の子は、さっき見たクレア・セシルちゃんの挨拶を完璧に再現してみせた。こちらからの視点だと目の前に映し出されたウィンドウの数々がまだ閉じていないためちょうどクレア・セシルちゃんと隣り合わせの位置に女の子が見えた。

シェイラ「…は!?ほ、本物のクレア・セシル!?」

クレア・セシル「そゆこと〜。とぅっとぅるー☆」

シキ「でも、だいぶ姿が違うようだけど…。」

今まで見たIDollたちは動画内でもアイディアル内でも同じ格好をしていた。だからこそ、出会えば一目でどのシリーズのIDollかわかった。けれど、今目の前にいる女の子はアイドル衣装とは遠くかけ離れたパーカー姿にツインテールではなく、三つ編み。髪色も心なしか違うようで、他人と言われた方が信じられるレベルであった。

クレア・セシル「ボクちん今はオフモード〜。ほら、ボクちんってばちょー人気だから☆そのまま姿現したら大変なことになっちゃうしー、オンモード維持するの大変っていうか。」

シェイラ「身バレ防止ってこと?」

クレア・セシル「半分はそんな感じ〜☆」

まぁ、それなら納得できなくもない。世に言う有名人が世の中に溶け込むため変装するというのは、もはや常識に近い。

シェイラ「それで、じしょークレア・セシルがこんなとこで何してんの?暇なの?」

クレア・セシル「も〜疑り深いなー。ま、暇っちゃ暇〜?他のみんなは今はレッスン中だからー。ボクちんは優秀だからいらん感じー☆だからこっそりしっかりがっつりこうしてマイディアルをお散歩中なのだー☆」

シェイラ「抜け出してサボってるだけジャン。」

クレア・セシル「そともゆ〜☆」

シェイラちゃんは「テンション狂う」と言いたげな顔をしてため息をついた。

クレア・セシル「でも、イストたちがちゃんと楽しめているか、問題が起こってないかを見て回っているのは本当だよ。だってボクはシンパサイザーだし。」

その瞬間だけ、クレア・セシルちゃんの眼差しが別人のように見えた。

思わず誰もが言葉を失い、その場が静まり返る。

クレア・セシル「そしてこうしてボクちんに御用のあるキミたちに出会ったわけなのだ〜☆」

そう思った次の瞬間、今度はこちらを指差してパチンとウィンクをした。

……やっぱり、さっきの雰囲気は気のせいだったのかもしれない。

クレア・セシル「それで?ボクちんとマスターを探しているようだったけど?」

そこで、自分達がここに訪れた目的をすべて話した。クレア・セシルちゃんは話すたびにわざとらしく大きく首を振り、そのたびに被っているフードの耳が激しくぴょこぴょこ動いた。

シキ「…と言うわけで。」

クレア・セシル「いいよ〜。」

シキ「一旦話だけでもマスターに持ち帰…え?」

クレア・セシル「だから、いいよ〜。」

シキ「え、いいの?」

クレア・セシル「そー言ってるじゃーん。何度も言わせないでよ〜。面白そうだから受けてあげる☆」

シキ「マ、マスターに話を通して許可をもらったりとか…?」

クレア・セシル「あーナイナイ。ボクちんの判断をまーちゃんは信じてくれるから。キミはいい匂いがするから信じてしんぜよう〜☆」

そう言ってクレア・セシルちゃんは品定めでもするようにこちらの周りをくるくる回った。本当に不思議な子だ。あのカリスマ性抜群のクレア・セシルとこうも違うと、やっぱり違和感がある。

“まーちゃん”…マスターのことだろうか。

クレア・セシル「…あ、その前にボクから一つクエスチョン。」

シキ「何かな?」

クレア・セシル「キミのシンパサイザーってクラウン?」

シキ「え?」

予想だにしなかった質問をされて3人で顔を合わせてしまった。

シキ「いや…特には決めてないというか、わからないというか…。」

シェイラ「どちらかというとクラウンは全然仕事しないし、ウチの方がずっとマスターに貢献してるから、勝手にウチだと思ってたんだケド。」

半分恨み嫉妬混じりのようにシェイラちゃんはクラウンくんを睨みながら言い上げた。肝心のクラウンくんは困ったように笑うだけで特に何も言わなかった。確かに言われてみればシリーズのレクチャーの時はシェイラちゃん主体でいつも行ってくれている。クラウンくんは肝心な時に後ろからサポートといった感じだと思っていた。

クレア・セシル「ふーん。ま、他のマスターの趣味には口出ししないけど。」

それを聞いたクレア・セシルちゃんはもう興味が失せたのか生返事をしてクラウンくんをじっと見つめた。それをクラウンくんも黙って見返す。

クラウン「…へぇ。」

なんだかただならぬ気配を感じたのでその場を繋ぐためにとりあえずクレア・セシルちゃんにもう少し聞いてみる。

シキ「どうしてそう思ったのかな?」

クレア・セシル「ん〜?ただぁ、キミのクラウンくんは雲行きみたいな人だなぁって☆」

そう言ってクレア・セシルちゃんは空を指差した。しかし、ユアディアル内はピンクの空?で覆われていて雲の代わりに花びらや風船が舞っているのだった。

シェイラ「なに、雲って言いたいの?」

クレア・セシル「そうとも言うかもー?言わないかもー?」

なんだか妙に含みがあるようなないような不思議な表現だった。でも匂いで人を判別するくらいだし、クレア・セシルちゃんには特別な感覚があるのかもしれない。そう言われれば、いつも後ろから見守ってくれているクラウンくんが空のようにいつも見守っていて広いものという比喩表現に喩えられるとも思った。

??「こんなところにいたの?」

不意に男性の声がしてそちらを向く。そこには長い髪をゆったりと三つ編みにまとめた綺麗な人が立っていた。

クレア・セシル「あ!まま!」

クレア・セシルちゃんはその人を確認するとそう声を上げて走り寄っていった。と言うことはこの人がセシルマスター…?

セシル「シェイラたちが探していたわよ。また、レッスンを抜け出したんでしょ?」

クレア・セシル「だって〜。教えるのはしぇーちゃんだけで十分だしー、ボクちんがいてもすることないよ〜?ふぃちゃんもだいぶ育って様になってきたしね☆」

セシル「そう言ってすぐどっかに行っちゃう困ったちゃんには首輪をつけちゃおうかしら?」

クレア・セシル「にゃ〜ん☆」

セシル「それで、今日はお友達と遊んでたのかしら?」

ふっとセシルマスターがこちらに視線を送ってくる。それにはっとして慌てて立ち上がった。

クレア・セシル「そう〜インタビューごっこ☆」

セシル「インタビュー…?」

シキ「あ、えっと、この度開催するイベントの者でシキと申します。」

セシル「そんなに畏まらないで頂戴。ここのマスターのセシルよ。よろしくね。」

セシルマスターにはイベントの形式、それに伴って取材をグランドマスターの皆さんにしていることを話した。

シキ「…と言うことで引き受けてくださいますか?」


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