#24 最強の理由
クレア・ノア「そんな…!そんなつもりじゃ…!!」
ノア「ねぇ、やっぱり『命令』じゃないとダメ?俺の『お願い』じゃ聞けない…?」
クレア・ノア「…ごめんなさい、心配かけて。でも、心配してくれてありがとう。」
ノア「約束して。」
クレア・ノア「…。」
リアム「なぁ、IDollが戦うのって防衛システムなんだろ?IDollがマスターを守るための。システムとして組み込まれてるものなんだから、守らせてあげた方がいいんじゃねぇの?」
ノア「外野は黙ってろよ!それじゃ俺がクレアを守ることができないじゃないか!」
クレア・ノア「あたしは守ってもらわなくて大丈夫だよ。でも、ノアに心配かけたくないから、今度から討伐はみんなにお願いするね。」
ノア「うん…。」
クレア・ノア「じゃあ、取材のためにみんな集めてくるね。」
そう言ってクレアちゃんはどこかに消えてしまった。その後ろ姿は心なしか悲しそうに見えた。
ノア「っていうか、クレアが何もなしにあんたたちみたいなのに捕まるわけないと思って、ここに来るまでにクレアのデータ見たけど、お前がさっきの悪性ウィルス連れてきたの?」
怒りの矛先が今度はこちらに向いてきたことがわかった。ここは余計に感情で弁明するより、冷静に真摯に誤解を解いた方が効果的だろうか?
シキ「それが見れているのであれば、こちらが襲われた側であったこともその後にクレア・ノアさんに対してした説明もご存じなのではないですか?」
ノア「…。」
ノアマスターはそう言われて手元にあるノートパソコンで確認し始めたようだ。その表情は真剣なものから次第にうまく読み取れない複雑な表情に変わる。もし、クレア・ノアちゃんとのやりとりが全て記録として残っているのであれば原因は間違いなく、クレア・ノアちゃんがノアマスターへの想いを打ち明けたあの会話だろう。
ノア「まぁ…完全に疑いが晴れたわけじゃないけど。まぁ、いいか。事情はわかった。」
そう言うノアマスターは真剣を装おうとしているが嬉しさやにやけが隠し切れてないように見えた。
シェイラ「…ってゆーか、マスター襲われたのぉ!?」
リアム「えー!?どうして言わなかった!!?」
…あ、そうだ。言ってなかったんだ。
シキ「いやぁ…クレア・ノアちゃんのおかげでことなきを得たから、余計な心配はかけないでいいかと思って…。」
シェイラ「ちょっとクラウンどーゆーこと!?マジありえないんだけど!!アンタがマスターと合流するって言うからウチはマスターと一緒にいなかったのに…!コテで火炙りの刑に処すよ!!?」
クラウン「いや、俺もこんなことになってるとは…!」
ノア「何…?お前のIDollはマスターの状況を把握してないの?」
リアム「ホウレンソウ大事って散々リズに言われてたよな!?」
シキ「いやぁ、あはは…。」
カオスな状況にもはや笑って誤魔化すことしかできない。そんな時ちょうどよくクレア・ノアちゃんが他のノアシリーズを連れて戻ってきてくれた。
クレア・ノア「ねぇ、ノア。フィオとニーノに何か任せた?いないんだけど。」
ノア「は?いないって何?」
クラウン・ノア「言葉の通り、どこ探しても見当たらないんだ。」
ノア「いや…俺は何も頼んでないけど…。まぁ、どっかの誰かさんが勝手に戦いに行くみたいに勝手にどっか行ってたりするか、イストあたりにまた捕まってるんじゃないの?」
クレア・ノア「も〜それはごめんって言ってるじゃ〜ん…。」
シェイラ・ノア「ノア、クレアにだけ過保護すぎ〜。イストにも全然会わせないじゃん。」
クレア・ノア「それはあたしがノアと一緒にいたいからであって…!」
シエル・ノア「でも、クレアがイストに絡まれたらそれはそれで嫉妬するよなぁ?」
ノア「うっさい!」
シェイラ・ノア&シエル・ノア「「ひゅーひゅー!お熱いことで!」」
クラウン・ノア「おい、兄妹ちょっと黙ろうな。」
―パシャ!
仲睦まじいノアシリーズのみんなのやりとりに心和ませ、ファインダーを切る。
うん、いい写真だ。アイディアルでは念じればカメラは出てくるし、重みを感じないから肩が凝らないでいいのはいいことだった。まぁ、あのカメラのずっしりとした重量感でさえカメラの良さだと思っているけど。
そこで、みんながシャッターオンに気がついてこちらに視線が集中していることに気がついた。
シキ「あ…失礼。どうぞ続けて。」
ニーナ・ノア「それで、取材でしたっけ?」
フィノ・ノア「私たちは何をしたらいいんですか…?」
シキ「特に難しいことは何もありませんよ。ただ、我々のインタビューにありのままでお答えいただくのと、皆さんやユアディアルの写真を撮らせていただければ、と。もちろん、撮った写真のデータは全て差し上げますし、その中から掲載する写真の選択もしていただいて構いません。」
ノア「答えたくない質問には答えなくてもいいの?」
シキ「もちろん。それもまた一つの答えですよ。それに、書いた記事は掲載前に必ずお見せします。悪意のある汲み取り等ないことはお約束しますが、ご自身の目で確認されないと信用しきれないでしょうしね。…という条件でいかがでしょうか?悪い話ではないと思うのですが…。」
ノア「まぁ、それが嘘じゃなければ…。」
シキ「はい。なんなら契約書に書き記しても構いませんよ。」
ノア「契約書は…。」
ノアマスターはわかりやすくたじろいだ。どうやら学生さんのようだし、こういう大人な話になると大事と捉えてとっつきにくいのだろう。困ったようにクレア・ノアちゃんに視線を向ける。それに気がついたクレア・ノアちゃんは優しく微笑んだ。
クレア・ノア「うん、あたしたちが今の会話を記録データとして保存してるから大丈夫だよ。」
シキ「それではー」
ノアマスターは最初は渋々と言った様子で、一問一答のようなぶっきらぼうな答えが多かったが、次第に場が和み、なじみ始めると、自身の音楽に対する思いを語ってくれた。特に面白い話は、彼の曲の特徴である物語のような展開は創ろうとして紡いでいるわけではなく、自然と頭に流れてくるそうだ。というのも、歌を担当するIDollの想いや関係の進展を歌にしているのであって、彼らの生活が創作の助けであり要になっているということらしい。曲に合わせてIDollの気持ちが変化したり、関係が発展しているのではなく、その逆であるため、流れがとても自然だ。無駄に手を入れずに自然に任せてる、それはIDoll達を信頼しているから成しえる技なのかもしれない。今後やイベントに関する抱負を聞くと、彼は心の底から彼のIDollを仲間だと思っており、最高の友達と共に挑むのだから『最強』だと照れながらも教えてくれた。また、少し踏み込んだ話でノアマスターはシリーズのIDollたちとずっとこうして音楽を続けていたいとのことで、将来性とかなんとか周りにとやかく言われたくないと言っていた。これは学生さんだからこそ進路とかで色々あるのかな、とも思ったが妙に親しくするのも踏み込むのも失礼だと思って、彼の思いを受け止めるだけにしておいた。一方でクレア・ノアちゃんは何か思うところがあったようだった。IDollは理解者を謳っていることから全肯定botのようにマスターに絶対口答えしないのかと思っていたが、それは本当に成長によるのかもしれない。ノアマスターが友達、仲間としてIDoll達を扱うから彼らは本当に対等で、間違っていることには「違う」と言える、良き関係を築きあえたのだろう。
シキ「ありがとうございます。続いてはIDollの皆さんにお伺いしたいのですが…では、クレア・ノアさんから。」




