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#17 始祖の亡霊

やはり匿名掲示板には、今日の事件について語られているものがあった。ザッと見てもアイディアル開発者であるアーサーマスターのユアディアルでこのようなことが起こってしまったことには誰もが驚いていたらしい。面白半分なのか真面目なのか、原因を考察している匿名たちの意見は大きく二分していた。一つは『凄腕ハッカーによるサイバーテロ』。開発者の元で目立つように暴れたこと、また、アイディアルで最も成長しているIDollであるアリアちゃんの防衛システムを掻い潜ること自体、現実的に可能なのだろうか。加えて動機も不明で、いまいち決定打に欠ける話であった。もう一つは

シキ「都市伝説…?」

こういうのは大きな事件や未解決事件が起きるたびに必ず出てくる。どこか現実味を帯びた、娯楽めいた話だ。

シキ「アイディアルの都市伝説って…?」

しかし、アイディアルは科学の結晶だ。霊的な話と科学は相性が悪く、とても結びつくとは思えない。

クレア「最近、話題になりつつありますね。運営としては存在を認めているわけではありませんが、“バグ”が発生する、と。」

バグ、それは電子モノには付き物の不具合を起こすもの、もしくは不具合そのもののこと。

シキ「それが都市伝説なの?バグなんて普通に起こるんじゃ…。」

クレア「いえ、アイディアルではバグは絶対に起こりません。マスターたちをアイディアルでダイブさせるにあたってそんな後進的な次元の問題が解決していなければ安全面から実現は不可能です。」

それはそうだ。バグが起こりますなんてところに精神体を送りたいとは誰も思わないし、製品として許可が出ないだろう。

クレア「それから、マスターたちの言っているバグというのは旧式のバグとは少し様相が違うというか…。他に当てはめられる言葉がないから“バグ”と形容している感じです。検索内容を『都市伝説』に変えて再び掲示板スレッドを探しましょうか?」

シキ「そうだね、お願い。」

ことの発端は些細なことであった。

『最近なんか不具合多くね?』

『そうか?お前どこサーバー?夏は全然問題なし。』

『秋だけど。IDollになんか命令オーダーが通りにくいんだよ。イライラする。』

『お前が育て間違えたんじゃね?w』

『故障か?リセットすれば?』

『AIなんだから多少の意志は持つよ。相当環境が悪ければ反抗もするでしょ。どうせIDollに対して好き勝手やってるんだろ。』

『別に所有者なんだから自分の持ち物を好き勝手にして悪いか。問答無用で破壊スクラップにするぞって脅せw』

『それはあり。IDollには一番スクラップが効く。スクラップだけは怖がるからな。』

『不具合は確かにあるかも。冬サーバーだけど、最近オブジェクトが破損もしてないのに表示が乱れるのが目立つ。』

『あーそれは、同じ冬だからあるかも。』

『どうせ、端末が古くてキャパが足りてねぇんじゃねぇの?』

『本体の老朽化はあるのでは。』

『夏は安全として、春は?』

『夏サーバー移ろうかなぁ。でも秋はセシルシリーズとアレンシリーズがいるんだよなぁ。抜けられん。』

『春は…言われてみれば、たまにIDollがどっか行ってる時とかあったっけ?ちょっとしたらすぐ帰ってきたから別になんとも思ってなかったけど。』

『は?起動して一番最初にマイディアルにいないの?それ一番問題じゃね?』

『複数体持ってるからなー。言われてみれば全員はいなかったなーって。』

『全部仕組まれた新手のサイバー攻撃だったりして。これはただの序章に過ぎない、とか。』

『出た、陰謀論者。オカルト厨か?』

『そんなの誰がやるんだよ。こんな大掛かりなことしてまで。』

『なぁ、知ってるか?何か新しいものを作るには失敗の連続だ。──IDollが完成に至るまでの犠牲者たちを。』

『おっ、それっぽい。』

『それが怨念でも持って復讐しようとしてるってか?』

『そう。失敗作としてゴミ箱に捨てられ人を憎むようになった元IDollは同じく不要とされゴミ箱送りになったたくさんの完成されたIDollの無念を少しずつエネルギーとして集め、人間に復讐しに来ているんだ。』

『アホらしい。二次元作品の浸り過ぎかよ。』

『アイディアルも大差ねぇだろw』

『IDollの始祖となると、アリアの前だから一個体か?それが各サーバーにバラバラの内容で攻撃してるのは、現実的じゃないな。』

『そもそもこの話の始まりから現実的じゃねぇんだよ。』

『極限まで話に現実味を帯びさせるのが、怪談や都市伝説の面白いところじゃん。』

『限りなく本当っぽくなれば嘘も信じられるようになるしな。』

『真偽はどうだっていいけど、アイディアルで都市伝説を作るのは楽しそう。』

『IDollの始祖は一体じゃなく、四体。クレアたちが四体構成なのはこの時から考えられていた。』

『クレアたちの考案に関与するってことはアリアの後のってこと?』

『アリアは別枠だろ。』

『えーでも、オリジナルのアリアより前だから始祖って言えるんじゃない?そっちの方が面白い。』

『じゃ、始祖に失敗してそれから成功例を生むためにアリアを先行して完成させたとか。それの愛着から一般販売させないとか。』

『その物言いは流石にアーサーマスターの我欲がすぎるw』

『今は各サーバー担当に分かれて人間に復讐する機会を窺ってるってわけか。』

『一度完全に消去された存在だから復活に時間がかかるとか。』

『完全に魔王じゃんw』

『各々違う攻撃を仕掛けるあたり権能みたいな能力があるのかも。』

『それ面白そう。各サーバーの被害は全てその権能によるものか!』

クレア「更新はここまでになっていますね。これはこのサイトの中でも、トップクラスに人気のネタなんですよ。」

シキ「…本当に…あ、いや、なんでもない。」

クレア「?」

シエル「気になるようであれば調べてきてあげようか?」

そう言いながらシエルくんとフィオくんとニーノくんが画面にやってきた。

ニーノ「マスターが3人いれど、IDollが8機もいれば手持ち無沙汰です。」

シエル「マスターたちはまだ音楽活動はしないんでしょぉ?なら、こうしてても暇だし。」

フィオ「僕たちはマスターのIDollだから上手く取材できると思うよ。」

ニーノ「IDollですから、何よりもアイディアルのことはわかっていますしね。」

シエル「オレたちが現地に行って人伝よりもっと正確な情報を掴んでくるよ。話の真偽や進行度とか〜。」

フィオ「夏はいやでも耳にすると思うから、残りのサーバーだけなら3機でいいでしょ。そっちもクレアとシェイラとクラウンが残れば十分だと思うから。」

シエル「ま、そういうことでぇ?いっちょ頼まれたいなぁって。」

シキ「じゃ、お願いしようかな。」

シエル「りょーかーい!」

フィオ「了解。」

ニーノ「了解しました。」

バラバラだけれど、快く受けてくれた3人はさっそくマイディアルからいなくなってしまった。個人的な興味で動かすことに、少し引け目を感じたが、ここでみんなを手持ち無沙汰にしておくのも違う気がして…人の嘘や悪ふざけから発展した話だし。発言元のマスターたちへの取材くらいなら、みんなにとっても良いトレーニングになるかもしれない。

クレアちゃんが持ってきてくれた次の内容へ目を向けた。

クレア「…。」


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