93 化粧水は化粧品であってポーションじゃないよ
顔は笑っているけど、目が全く笑っていない。
というより獲物を狙う目になっているクラリッサさんにロックオンされた私は、なるべく大したものではないですよと言った感じで説明をする。
「ああ、これは化粧水と言って、朝晩やお風呂から上がった時、顔とかにつける水よ」
「水? でも、わざわざ錬金台を使って作ってたってことはただの水ではないんでしょ?」
そこまで見られていたか。
そう思った私は、諦めてきちんと説明をすることにした。
「肌って乾燥に弱いの。顔なんか特にそうで、お風呂上りなんかはすごく乾燥するのよ。だからなるべく潤いを与えて保湿しなくてはいけないということで生まれた化粧品がこれ」
「なんだ、やっぱりただの水なんかじゃないじゃないの」
クラリッサさんはそう言いながら化粧水のビンを受け取ると鑑定を開始。するとすごく驚いた表情になったんだ。
「何よ、これ。すごい効果があるポーションじゃない!」
「いや、あくまで化粧品であってポーションじゃないよ。だって魔力は含まれていないし、薬草も使ってないから」
「えっと、それは何でできているのですか?」
カレンさんは私たちの会話を邪魔しないように後ろで控えていたんだけど、興味が押さえられなかったみたい。化粧水のビンを指さしながら、材料と作り方を聞いてきたんだ。
だから一通り教えてあげると、ふむふむとうなずいた。
「説明からすると、確かにポーションではありませんね」
「うん。今回は手っ取り早く錬金術で作ったけど、多少の手間を惜しまなければ誰でも作れるからね」
私が水蒸気を使った精油の取り出し方を教えると、今度はクラリッサさんが口を開いた。
「精油って、花の香りが付いている油を抽出したものなのね? それならその化粧水だけじゃなく、いろいろなものに使えそうな気がするんだけど」
「うん。お風呂に一滴たらしたり、ろうそくを作る時に混ぜたりすることで香りを楽しむことができるよ。それに花の種類によっては、リラックス効果があるものもあるし」
その他にも化粧品に使ったりボディオイルに混ぜて使ったりと使い方はいろいろあるんだよと教えると、クラリッサさんの目が鋭く光った。
「カレン。アイリスさんから精油の作り方と化粧水の作り方を詳しく教わっておいて。私はちょっと出てくるから」
そう言って軽く手を振りながら足早に部屋を出ていくクラリッサさん。
それを見送った後、二人で残っていたバラを材料に錬金術で精油を取り出したり、化粧水を作ってみたり。そうしてカレンさんが一通りやり方を覚えたころ、クラリッサさんが帰ってきたのよ。
そして、
「カレン、アイリスさん。二日後にウォルトン商会の本社がある交易都市サリアに行くわよ」
「ええっ!」
それと同時に大きな爆弾を落として私とカレンさんを驚かせたんだ。




