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魔王信者に顕現させられたようです ~面倒なので逃げてスローライフをすることにしました~  作者: 杉田もあい


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107 元ゲームキャラの体でも怠けると弱くなるのよ

 今日はぺスパを出発した初日ということで、持ち込んだ料理を温めただけの食事。


 そのあとお湯をたっぷりと使ったお風呂に赤い閃光の4人が驚いたりしたものの、特に何があるでもなくそのまま就寝した。


 そしてその次の朝のこと。


「アイリスさんって、錬金術師よね?」


「そうだけど?」


 何故かクラリッサさんにそう聞かれて、首を傾げる私。


「ポーションだけじゃなく、合金も作って見せたでしょ。錬金術師じゃなければ何だっていうのよ」


「いや、普通の錬金術師は、朝から戦闘鍛錬なんかしないから」


 ああ、なるほど。私がシャルロットと組み手をしていたから、クラリッサさんはびっくりしたのか。


「戦闘訓練じゃなくて組み手。技が鈍らないようにしているだけよ。仕方がないじゃない。ちゃんと体を動かさないと腕なんてあっという間に落ちてっちゃうんだから」


 ゲーム時代なら、例え数か月間何もしなくても弱くなったりしなかったのよ。でも、ここって悲しいけど現実世界なのよね。


 だからレベルこそ下がらないけどずっと怠けてるとすぐに筋力は落ちるし、ある程度の相手と訓練をしないと速さに対応できなくなってしまうんだ。


 でも、そこはゲーム由来の体。少しやるだけで現状維持はできるみたいなのよね。


 だからストレッチと10分程度の組み手を毎朝の日課にしていたんだけど、そんなことをする錬金術師はいないと指摘されちゃったわけだ。


「森に入るんだから、腕がなまったら危ないじゃない。だからこれは大事なことなのよ」


「そう言えばアイリスさんは森に入って自分で採取をする、めずらしい錬金術師だったわね」


 話をすれば組手の重要さを解ってくれたみたいで、クラリッサさんの追及はそこで終わったのよ。


 でも、私とシャルロットの組手に興味を持ったのは彼女だけじゃなかったの。ほかでも無い赤い閃光の面々だ。


「アイリスさんがすごいのは前に助けられた時に見て知ってたけど」


「うん。そっちのメイドさん、とんでもないわね」


 どうやら興味は私ではなく、メイド服のまま組み手をしていたシャルロットに向いたみたいね。


「アイリスさんの動きも目で追うのがやっとだけど、それを軽々と捌くなんて」


「子ども扱いというか、師匠と弟子の組手というか。ただ、すごいとしか言いようがないわ」


 反応速度の鍛錬だから威力よりも速さに重点を置いた組手ではあったんだけど、それでも思考加速とかはしてないのよ。


 だからそれほど動きが素早いとは思ってなかったけど、赤い閃光の面々からするととんでもない速さに見えたみたい。


 その驚いている姿を見てクラリッサさんは、これってそんなにすごいことをやっていたのかとびっくりしてるんだ。


「もしかしてアイリスさんたち二人って、あなたたちの国でも最強クラスの達人だったりするの?」


「まさかぁ。私なんてうちの国じゃそれほど強くないよ。それにシャルロットより強い人も何人かいるし」


 そうよねってシャルロットに言うと、黙ってうなずいた。


 事実ゴーレムを使ってもいいというのであれば話は変わってくるけど、物理戦闘でとなるとバトルマイスターの職についてるガレット・デロワと組み手をしたらあっという間に負けてしまうんじゃなかろうか。


 でも、赤い閃光の面々にはそれが信じられないみたい。


「うそでしょ」


「さっきの組手、多分Aランクの冒険者でもついて行ける人は少ないと思うよ。それなのに、そんなに強くないって……」


 私たちのレベルを考えるとそれも当たり前と思うけど、本当なのだから仕方がない。


「シャルロットは私と同じで純粋な戦闘職じゃないもん。それを本職にしてる人に勝てるはずないじゃないの」


 そう言って笑うと、赤い閃光のリーダーのセシリアさんが少し顔を引きつらせながらこう言ったのよ。


「私も前衛職だけど、さっきの組み手の速さには絶対ついていけない自信があるわ」


「いや、そんな自信を持たれても。それにさっきの組手は威力を考えず、速さに重点を置いてたからね。それを意識すれば、セシリアさんでも案外ついて行けるんじゃない?」


 私が苦し紛れにそう言うと、セシリアさんは少し真面目な顔になってこう言ったの。


「それならアイリスさん、その組手の相手をさせてもらえないかな」


 この提案にはちょっとびっくり。だって私は冒険者でもなければ前衛職でもないもん。


 ただの錬金術師にそんなことを言ってくるとは思わなかったから、どう返事をしようかと悩んでたのよ。


 でも、そんな私にやってあげればいいじゃないと言った人が。クラリッサさんである。


「朝からみんなに見えるところでやってたってことは、何か特別な技を使ってて秘密にしなければいけないって訳じゃないんでしょ」


「そうだけど」


「それならいいじゃない。本当に戦うって訳じゃないんだから」


 その一言で、私とセシリアさんは組手をすることになったんだ。


 因みに審判はシャルロット。この子なら危ないと思ったらすぐに止めることができるからね。


「それでは始めますが、アイリス様はけして余計な力を入れないように。ご自分の速さだけで組み手をしてください」


 これは戦闘モードには絶対になってはいけないという意味よね。


 まかり間違ってそのモードになってしまったら、どんなに手加減をしようと思っていても絶対にケガをさせてしまうもん。


 それは流石に解るから、私は黙ってうなずいたんだ。


「セシリアさんも、けして熱くならないように気を付けてください。アイリス様はあくまで錬金術師であり、冒険者ではないのですから」


「うん、解ってる」


 こうして始まった組手なんだけど、これが思ったより面白いのよ。


 私の場合、戦闘モードにならなくてもそこそこの速さは出せるし、反応速度自体もモード中とほとんど変わらない。だからやる前は楽勝だろうなぁって軽く考えていたんだ。


 ところがセシリアさんは冒険者だけあって、シャルロットとやっている普段の組手と違って何をしてくるのか全く解らないのよね。


 だから一つ一つ丁寧に捌きながら、力を入れないよう速さだけで隙を突く作業が楽しいこと楽しいこと。


 このままずっと続けたいなぁなんて思いながらやっていたんだけど、


「降参。流石にもう無理」


 セシリアさんが息も絶え絶えって状態になってしまって、お楽しみの時間は終わってしまった。


 う~ん、残念。


 読んで頂いてありがとうございます。


挿絵(By みてみん)


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― 新着の感想 ―
以外に戦闘好きだったのね〜 組み手はカンフー映画っぽいと想像して読んでま〜す
「姉御」って呼ばれるようになるんですねわかります。
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