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魔王信者に顕現させられたようです ~面倒なので逃げてスローライフをすることにしました~  作者: 杉田もあい


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108 自然災害は怖いけどこの世界では予知ができるからなぁ

 セシリアさんが息も絶え絶えになったから楽しい組手の時間はおしまい。


 ……なんて思ってたんだけど、ここで残りの3人からも組手のお誘いが来たんだ。


「おお、何かモテモテだね。よし、いっちょもんでやるか!」


 楽しい時間は終わらない! そう思って引き受けようとしたんだけど、ここでストップがかかった。


「ダメよ、アイリスさん」


「え~、なんで? クラリッサさん」


 私は不満の声をあげたんだけど、クラリッサさんは当たり前じゃないのって大きなため息をついた。


「あのね、私たちはこれからサリアに向けて出発しないといけないの。それなのに護衛がみんなへろへろになっていたりしたら困るじゃない」


「ああ、そうか」


 今日組手をやっていたのはいつものぺスパの家ではなく、旅の空の下だった。


 それもここからは街から離れるから、どんな危険があるか解らない道のりなのよね。それなのに護衛をへろへろに疲れさせたりするのは流石にダメよね。


「ってことで、ごめん。夜に軽く付き合うから、今朝はここまでってことで」


「依頼人からのお達しでは仕方がないですね」


 赤い閃光のみんなも、セシリアさんからの申し出では断わることはできないので朝の楽しい時間は今度こそ本当に終わり。


 軽い朝食を取った後、私たちは交易都市サリアに向かって出発した。


 そして何度かの小休憩をはさんで進み、お昼の大休憩の時に赤い閃光のリーダーであるセシリアさんがこう言ったのよ。


「なにかおかしいわ」


「何が?」


「魔物の気配が少なすぎるのよ」


 セシリアさん曰く、魔物にとって人間は安全に狩れるおいしい餌なんだそうな。


 だから比較的安全な街道でも、遠くからこちらを観察する魔物はある一定数いないとおかしいらしい。


「それがどうやら、いつもよりかなり少ないらしいのよ。そうよね、シェリー」


「うん。ここは何度か通ったことがあるけど、こんなに少ないのは初めてよ」


 シェリーさんは赤い閃光の斥候担当らしくて、結構広範囲の気配を探れるスキルを持っているんだって。


 そのシェリーさんが言うには、いつもの半分以下の気配しか感じ取ることができないみたいなのよ。


「魔物の気配が少ないのなら、それだけ安全ってことでしょ。それならその方がいいじゃない」


「今の状況だけを見ると確かにそうとも言えるんだけど、その理由次第ではそうも言っていられないのよ」


 魔物がいつもより少ないのなら、それには必ず理由がある。その理由次第によっては、私たちにも危険が降りかかるかもしれないとセシリアさんは言うんだ。


「理由って、どんなことが考えられるの?」


「過去にあった話だと、山が火を噴いてその辺りが火の海に包まれたとか、大きな嵐が来て大きな被害に見舞われたなんてのもあるわね」


 なるほど、天変地異系の危険か。それなら確かに、私たちにも危険が及ぶ可能性がある。


 なにせ自然現象が相手だから、私やシャルロットのレベルが他に比べて高いと言ったってどうにかできるものじゃないからね。


 ただなぁ。


「シャルロット、ミルフィーユから何か聞いてる?」


「いえ。そのようなアイリス様に危険が及ぶ前兆があれば必ず連絡があるはずですが、今のところは何も」


 となると、そのような自然現象が起こる可能性はほぼゼロと言っていい。


 例えば地震なんかだと、現代の科学でも予知は難しいわよ。でも、私たちには精霊がいるからなぁ。


 土の上位精霊であるベヒモスを常時支配下に置いている以上、大きな地震が来るようならまず間違いなく教えてくれるはずだもん。


 それに台風だって状況確認にシルフを使っているそうだから解らないはずがないし、火山にしても噴火しそうな山があるのならやはりベヒモスが教えてくれるだろう。


「そもそも、この近くに火山なんてないはずよね?」


「ええ、だから山が火を噴くことは無いと思うけど、嵐は遠くからすごい速さでやってくるから」


 確かに時速30キロとか40キロとかで来るから、この世界の基準だとすごい速さだろう。


 でも精霊を使っている私たちからすると、いくら早くても予知は簡単なのだから何の問題もない。


「あとは地揺れね。大きいのが来ると大変よ」


「そうだねぇ」


 それは無いと断言できるのだけど、上位精霊の話をしたところで信じてはもらえないだろうから曖昧にうなずいておく。


 だってその説明なしに、みんなを安心させる方法なんて思いつかないもん。


「まぁ、火山の噴火以外なら何とかなるでしょ。いざとなったら安全な場所に家を出して引き籠ればいいんだし」


「ああ、そうか。ひどい嵐に会うと折れた枝が飛んで来たりして馬車の中に避難しても危険なことがあるけど、あの家なら大丈夫そうね」


 私たちは普通の旅人と違って、安心安全のシェルターがある。


 だから大丈夫だと話すと、クラリッサさんは少し安心したようだ。


「この辺りは大きな川も崩れてくる山や崖も無いですからね。たとえ地揺れでも、あの家に籠って数日耐えれば安全は確保されるでしょう」


 それにセシリアさんも太鼓判を押してくれたから、とりあえず危険はないだろうという話になった。


 でもなぁ。


「もし嵐や山の噴火、それに地震、じゃなかった地揺れが原因じゃなかったとしたら、魔物はなぜ少なくなっているんだろう?」


 さっき確認した通り、ミルフィーユからの注意喚起は今のところない。ならば魔物が少ないのには、また別の理由があるはずなんだけど……。


 私が小首をかしげながら考えていると、赤い閃光の一人であるイザベルさんが笑いながらこう言ったのよ。


「案外、アイリスさんやシャルロットさんが怖くてみんな逃げてしまったのかもしれないわね」


「なに、人をまるでドラゴンかなにかみたいに言ってるのよ。そんなはずないでしょ」


 私の反撃に、みんな大笑い。でも、私だけは顔で笑っていても心の中では全く笑えなかった。


 だって、私とシャルロットがドラゴンより強いのは事実だもん。


 案外、イザベルさんが言ったことが正解だったりしてね。


 読んで頂いてありがとうございます。


挿絵(By みてみん)


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