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魔王信者に顕現させられたようです ~面倒なので逃げてスローライフをすることにしました~  作者: 杉田もあい


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103/110

101 この城にある物について少し勘違いしてたのかも

 子供たちが楽しそうにしているお祭り空間。そこを私はゆっくりと歩きながら見て回る。


「あれ? このゲームって」


 そこで気が付いたんだけど、見たことはあっても一度も遊んだことのないゲームがちらほら混じっているのよ。


「えっ? ここってもしかして私の記憶が元になっているんじゃなく、ちらっとでも見て確認したことがあるものがすべて再現されてるとか?」


 そう言えばお酒もほんの少しをなめた程度のものまで娯楽室のバーカウンターに並んでたっけ。


 ってことはもしかして私の記憶にあるものを再現しているのではなく、私の記憶から抜き出したものやキーワードを検索して元の世界から情報をダウンロード。それをこの世界に顕現させたのがこの城にあるものなんだろうか?


 それに気が付いた私は家庭用ゲームの部屋を飛び出し、入口の端末の元へ。モニターを覗き込みながら背表紙くらいしか見たことがない専門書がある場所を検索して、その場所へと向かう。


 そこで本を一冊取り出して開いてみると、私が読んだ覚えのない専門的な知識が詰まっていた。


「うわ、ほんとにちゃんと中身が書かれた専門書だよ。もしかしてここに並んでるの、全部そうなの?」


 周りの本棚にぎっしりと詰まっている専門書の数々を眺めながら、私は少し圧倒されていた。


「そう言えばエクレアも、私がほとんど見たことのないグレイターZのアニメを見たと言っていたもの。それも同じ理屈なのね」


 専門書がこの状態ってことは、シアタールームや映像が閲覧できるライブラリーも多分同じなのだろう。


 そうでなければ私が見たことがないアニメをここで見ることなんて出来るはずが無いもの。


 そしてそんなものまで再現されているというのならもちろん、私が昔読んだものもここにはあるということで。


「そっか。じゃあここでならもしかすると、昔読んで内容をほとんど忘れてしまったマンガや小説がまた楽しめるのかも?」


 そう思って再度入り口の端末へと行こうとしたんだけど……。


「アイリス様。いきなりどうなされたのですか?」


「そうですよ。すごい勢いで走っていっちゃったから、近くにいた子たちがびっくりしてゲームをやめちゃってましたよ」


 ああ、そうか。何も説明しないで走ってきちゃったからなぁ。


 いきなりそんなことをされたら、周りの子供たちが驚くのも無理はないかも。


「いやね、あそこにあるゲームを見ていたら図書館にある蔵書がどうなっているのかが気になっちゃって」


「なるほど、だからこのような区画にいらっしゃったのですね」


 そう言って周りにある専門書を眺めるミルフィーユ。


 ここには専門書しか並んでいないから、なんでこんなところに居たのか疑問に思ってたんだろう。


「ここの蔵書、本当にすごいですもの。城の運営に携わっているわたくしたちだけでなく、料理人や鍛冶職人などもこちらにはよく足を運んでいるそうですよ」


「そう言えばこの間出てきた新しいデザート、料理人がここで見つけたレシピを再現したって言ってたっけ」


 ああ、そうか。私も自炊をしていたから料理本や料理サイトにはお世話になったし、何より本屋に行けばいやでも目に入ってくる場所に並んでいるもん。


 背表紙を見たことがあるだけで中を読んだことがない専門書まで並んでいるくらいなんだから、案外世界中の料理の本がここには揃っているんじゃないかな。


「そう言えばミルフィーユも、ここで調べ物があるって言っていたわね」


「はい。アイリス様がお帰りになられた後、閲覧するつもりです」


 それじゃあ、あんまり長居はしない方がいいかなぁ? そんなことを考えていたんだけど、ここでエクレアが私の袖を引っ張った。


「アイリス様はゲームで遊ばないんですか? 子供たち、多分待ってますよ」


「えっ? でもさっきは私そっちのけで遊んでたじゃない」


「さっきはそうだったけど、いきなり飛び出して行っちゃたからみんな手を止めて私たちを見送っていたから」


 ああ、そう言えばさっきそんなことを言っていたっけ。もしそんなことになっているのなら子供たちがかわいそすぎる。 


 てなわけで、私たちは家庭用ゲームの部屋へと戻ることに。


「あっ、アイリスさまだ!」


「どうして、はしってっちゃたの?」


「いっしょにあそぼうよぉ」


 するとあっと言う間に囲まれてしまってびっくり。


 エクレアの言う通り、みんな心配して待っていてくれたんだなぁ。そう思った私はにっこり笑いながら、エルフの子供たちにこう言ったんだ。


「私はいいから、みんなが遊んでいるところを見せてほしいなぁ」


「うん、いいよぉ」


「あたし、これすき!」


 そう言って四方八方にかけ出していく子供たち。早速そこに並んでいたゲームを遊びだしたものだから、私は宣言通り見て回ることにした。


「ほんと、新旧いろいろなゲーム機のゲームが揃っているのね」


「簡単なのから難しいのまで、いろいろなものがあるから自分に合ったゲームが選べるんですよね」


 言われてみると確かに、小さな子供たちは比較的古い簡単なゲームを、少し大きな子供たちは新しめの複雑なゲームで遊んでいるみたいね。


 そんなことを考えながら歩いていると、私はふとあることが気になったのよ。


「もしかしてウィンザリアがあったりして」


 この体のもとになったMMORPG、ウィンザリアもゲームなんだから、もしかしたらあるんじゃないかと思ったの。


 でもね、残念ながら見つけることができなかった。というか、ネット専用ゲーム自体が、ここには無いみたいなのよね。


「よくよく考えるとネット環境が無いんだから、ネット専用ゲームがあるはずないか」


 そう思いながらも、少し残念な自分がいる。


 だってもしウィンザリアがあってログインできるのなら、私の居たクランが今どうなっているかが解るもの。


「何より、本物の私とコンタクトが取れる可能性があったからなぁ」


 顕現させられた私はあくまでコピーである。これは私の出した推論であって、それがあっているのかどうか、本当のところは解らないでしょ。


 でもゲストでゲームにログインしてクラン『フェアリーガーデン』に加入希望のメッセージを送れば、クランマスターである私とコンタクトがとれるはずだったのよね。


 そして私とコンタクトがとれるということは、私がコピーであるという何よりの証拠な訳で。


「ウィンザリア自体が無いんじゃ、それを試してみることもできないんだよなぁ。でもまぁ少し残念ではあるけど、今の自分が人間ではないという確固たる証拠を示されなかったということでもあるのよね」


 覚悟はしている。でも、自分が本当にただのコピーであるという証拠が突き付けられた時どうなるかなんて私にも解らないもん。


「それほど強い人間であると自信が持てないのだから、これはこれで良かったのかも」


 そんなことを独りごちながら、私はゲームを楽しそうに遊ぶ子供たちの笑顔に癒されるのだった。


 読んで頂いてありがとうございます。


挿絵(By みてみん)


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