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魔王信者に顕現させられたようです ~面倒なので逃げてスローライフをすることにしました~  作者: 杉田もあい


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99 ユニット化しても家はそこそこ大きい

「ところで、今日はどのようなご用事でお戻りになられたのですか?」


 スクランブルジェッターの話が終わったところで、ミルフィーユから当然の質問が投げかけられた。


「ああ、ちょっと旅をすることになったから、道中で使うSサイズの家を買って持って行こうと思ったのよ。確かテント型のがあったでしょ」


「ええ、ございますが、どちらへいらっしゃるのですか?」


「確か交易都市サリアだったかな? 私がポーションを売ることになったウォルトン商会の本店がそこにあるらしくて、クラリッサさんと行くことになったのよ」


 私がそう話すと、ミルフィーユは意外という顔をする。


「サリアですか? それですとアイリス様がお住いのぺスパから100キロほどあります。それほどの距離を、馬車で移動なさるのですか?」


 これには私もちょっと困惑。だってクラリッサさんからは明後日行くわよって軽く誘われたでしょ。


 だから、そんな遠いとは思ってなかったもの。


「そんなに遠いの?」


「はい。この城から見ましてぺスパとは反対方向に、約60キロほど行った場所にございますから」


 二つの都市の直線上にうちの城がある訳じゃないから参考くらいにしかならないけど、ミルフィーユが言っていることは大体合ってる思う。


 それに馬車が通る街道も当然直線ではないことを考えると、実質的に120キロ以上の距離を移動するってことか。


「やはり、夜休む場所は大事みたいね」


「はい。村などに滞在できればよろしいのですが、道中のすべてに、そのような場所があるとは思えませんから」


 野宿に備えて家を買っていくという判断に間違いはなかったようね。


 そう自画自賛をしていると、ミルフィーユからこんな質問が飛んできた。


「それで、どれくらいの人数で行かれるのですか?」


「そうだなぁ。クラリッサさんと錬金術師のカレンさん、それに私とシャルロットが確定として……御者をする人とクラリッサさんのメイド、あとは護衛の冒険者さんたちくらいかなぁ」


「冒険者の人数は解っているのでしょうか?」


「私がクラリッサさんと出会った時と同じなら、4人ね」


 私が出会った時はメイドを一人しか連れていなかったから、多分今回も同じだと思う。


 ってことは今回も同じ冒険者さんたちを雇うのなら総勢10人ってとこかな。


 それを伝えるとミルフィーユは少し考えた後、


「その人数ですと、テントの家では少々手狭ではないかと」


「そう?」


「はい。馬車で移動する以上、夜は馬を休ませる場所が必要です。それにその人数ですと、Sサイズの家の中でも一番小さなテントの家で休むのは難しいかと」


 言われて気が付いたけど、そう言えばテントの家は住宅地が実装された時に一緒に追加された家だっけ。


 だからその大きさもかなり手狭で、確か大きめのプレハブくらいしかなかった気がする。


「そっか。じゃあ、Mサイズの家とかを持って行った方がいいかなぁ?」


「いえ、それでは少々過剰すぎます。ですのでSサイズでも一番の大型で、なおかつ移動時に寝泊まりしてもそれほど違和感のないゲル型をお持ちになられてはいかがでしょうか」


 ゲルと言うのはモンゴルの遊牧民が使用している布製の家のことなんだけど、実物はそれほど大きくないみたい。


 でもウィンザリアではテントの家と差別化するためか、かなり大型になっているのよね。


「言われてみれば、あれが旅には一番向いているかも」


「わたくしもそう思います」


 そんな訳で、持って行く家はゲル型に大決定!


 その上、内装や家具の用意なんかはミルフィーユがやってくれると言ってくれたので、旅先で忘れ物に気が付いて大慌てなんてこともなさそうね。


「その際ですが、わたくしから一つ提案がお座います」


「提案?」


「はい。シャルロットから、アイリスさまはストレージのことを秘密にしていると報告がありました。それならば家を持ち運ぶ道具として、一番小型の収納箱を利用してはいかがでしょうか?」


 ミルフィーユ曰く、家を持ち運ぶなら収納箱を持って行った方がいいそうな。


 と言うのも、旅の最中は家を何度か出し入れすることになるでしょ。


 そうするとクラリッサさんから、家ユニットを見せてほしいと言ってくるんじゃないかとミルフィーユは言うんだ。


「通常トレードでストレージからストレージへと移動させることからも解る通り、家ユニットはとても大きく鞄に入れて持ち運ぶということは難しいです。ユニットを見せてほしいと言われる可能性が高い以上、その対策は必要かと」


「なるほど。それに収納箱を使おうって言うのね」


 収納箱って言うのは木工で作れる収納家具シリーズの一つで、名前の通り収納を増やす家具だ。


 私がやっていたネットゲーム、ウィンザリアがサービス開始した当時はまだ住宅エリアや家はまだ実装されていなかったのよ。


 その代わりにHPやMPを回復するのに使われていたのがレンタルルームと言う一部屋なんだけど、そこにこの家具を置くと収納場所が追加されるの。


 種類も大中小とあって大きさによって入れられる物の数が違ったんだけど、大きくなるほど必要な素材や木工スキルが高くなるから、値段の関係で私は中型を使ってたなぁ。


 まぁ、そんな訳で初期は木工職人の主力商品になるくらい売れたんだけど、家が実装されたことで事態は一般する。


 家そのものにストレージとは比べ物にならないほどの収納数があった上に、収納家具はそれとは別に収納数は増えるけど置いてある場所に行かないと取り出せないという欠点があるんだ。


 だから、家を買ってからはイベントなどの記念品入れ位にしか使われていなかったんだよね。


「死にコンテンツだった収納家具に、そんな使い方があったのか」


「はい。一番小さいものですと指輪入れ位の大きさですから、持ち運んだとしても邪魔にはなりませんから」


 実際、ゲーム時代は小さな宝石箱型のを一輪挿しの花瓶と一緒に本棚の上とかに乗っけて飾れたからなぁ。


 それくらい小さいんだから、持ち運ぶのにも便利だろう。


「それに収納箱なら、蘇生ポーションなども一緒に入れられますでしょ。ゴーレムマスターであるシャルロットは回復魔法や蘇生魔法が使えませんから、救急箱的に持たせるのも良いかと」


「なるほど、私に何かがあった時の保険って訳ね」


 正直、この世界で何かに襲われて私が怪我をしたり死んだりすることは想像できない。でも、未知の病原菌によってならあり得ない話じゃないでしょ。


 だから私は、このミルフィーユの申し出をありがたく受け取ることにしたんだ。


 読んで頂いてありがとうございます。


挿絵(By みてみん)


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