98 私が頼めば通ることもある
図書館に行くはずが、何故かその前にミルフィーユの元へ行くことに。
と言うのも、
「アイリス様。この期待に目を輝かせている子供たちを後回しにできるんですか?」
エクレアのこの一言で、グレイターZ型ゴーレムの翼、スクランブルジェッター型ゴーレムの作成許可をもらいに行くことになったから。
「うう、行きたくないなぁ」
でも、間違いなく反対されるでしょ。だから足取りはものすごく重く、でも後ろで嬉しそうに見送ってくれている子供たちのことを考えると引き返すこともできない。
結果、そんなに時間をかけることなくミルフィーユたちの執務室に到着してしまったんだ。
コンコンコン
「はい」
ノックをすると中から返事があり、ドアが開く。
それを見ててっきりミルフィーユかパルミエが開けてくれたのかと思ったら、専属の子なのかな? メイドさんが立っていた。
「ミルフィーユ様。アイリス様がお越しです」
「えっ? 今日、お帰りになるとは聞いていなかったのですけど」
ミルフィーユ、私が帰る時はいつも城の入口で待っていてくれるからなぁ。いきなり現れたら、そりゃ驚くか。
「急にいるものができたからそれを自販機で買ってそのまま帰る気でいたんだけど、エクレアに捕まってしまって」
「捕まったって、ひどいじゃないですか。アイリス様が自分でグレイターを見に来たのに」
ぷりぷりするエクレアを何とかなだめながら、私は本題に入る。
「実は、ミルフィーユに頼みたいことがあるんだけど」
「はい、なんでしょう」
「エルフの子供たちにせがまれて、エクレアのゴーレムの翼を作ってあげようと思って」
内心、あきれられるか怒られるかだろうなぁと思いながらそう言ったんだけど、帰ってきた返事は予想外のものだった。
「よろしいんじゃないですか?」
「えっ、いいの?」
てっきり否定的な言葉が返ってくると思っていたから、これにはちょッとびっくり。
でも、それ以上に驚いているのはエクレアだ。
「えー、なんで? 私が頼んだ時は頭ごなしにダメって言われたのに」
「それはそうでしょう。あなたのゴーレムは城の防衛も考えてアイリス様が所持されている最高の素材を使って作られているのです。それに匹敵する翼を作るとなると、どれだけの貴重な鉱石が失われるか」
これを聞いた私は、エクレアに質問する。
「翼を作るのに、どれくらいの鉱石がいるの?」
「ドラグニア鉱石なんかを各20個づつくらいかなぁ?」
これを聞いて私は首を傾げる。
「ミルフィーユ。それらの鉱石って、確か数百個あったわよね? それでもダメなの?」
「エクレアが所望する鉱石は、どれもトレードボックスから入手できないものばかり。もう二度と手に入れることができない可能性が高いのですから、むやみやたらと消費してよいものではないのです」
なるほど。自販機で買えるものと違って、それらはゲーム内の採取ポイントで採ってきたものだからなぁ。
ミルフィーユの言う通り、この世界に来てしまった以上もう手に入れるのは不可能だろう。
「あれ? でも私が頼んだ時はすんなりとOKが出たよね? なんで?」
「アイリス様の所有物をアイリス様がご使用される。それに何の問題があるのですか?」
なるほど。NPCであるエクレアが勝手に使うのはダメだけど、私が使う分にはいいってことか。
「ただ必要のないものに使うことに関しては、少々思う所はありますが」
「まぁ、そうだろうねぇ」
私でもいらないと思うもの、グレイターZの翼。
子供たちが目をキラキラさせて作って欲しそうだったから許可しただけだし。
「ですがアイリス様が作るとお決めになったのなら仕方がありません。エクレア、やるからには最高のものを作るのですよ」
「うん。もっとも頑丈で最も早く飛べるゴーレムを作るよ」
よかった。エルフの子供たちのがっかりした顔を見ないで済みそうね。
ミルフィーユとエクレアのやり取りを眺めながら、私はほっと胸をなでおろすのだった。




