クレイブ
ご覧頂きありがとうございます
「くっ…」徐々に虫が増え俺と虫の距離は半分まで押されていた。
軍勢の重みに耐えきれず割れた防護は何枚目か。数えるのを諦め、押し返すことに集中する
そんな鍛錬とベリーさんのサポートもあり
3日間は特に怪我もなく過ぎていった。
ベリー「ウィル、そろそろ戻るわよ」
ウィル「はい」
俺は手を震わせる
掌を握ったり開いたりを繰り返す。感覚に問題は無いようだ。
ベリーさんは足早にヴィッターさんとメービーさんの所へ向かう。俺も急ぎその後を追う
メービー「お二人共お待ちしておりました」
ヴィッター「私の準備はバッチリですわ」
ベリー「そう?」ベリーさんは腕を組みヴィッターさんをまじまじと見つめている。
メービーさんがそこに割って入るように
「皆さん、準備はいいですか?」少し何かを焦っているようにも見えた。
ウィル「もちろんです」
ヴィッター「行けますわ」
ベリー「当然よっ」
アリはベリーさんを起点に突破し
雪鬼は俺が片付ける
猿はヴィッターさんと力を合わせて攻略した。
そしていよいよ目前に迫る
50階層
朽木の臭いに、そこの見えない濁った湖
それと…
俺の手足は震えていた。
いや、自由が効かない。何かがつっかえたように俺の腕や足の動作を邪魔している。
かつて師匠を俺から奪っていった時の光景が
半分になった師匠の顔が、クレイブのハサミが
何も出来なかった後悔が頭の中を駆け巡る。
ベリー「もしかして怖いの?大丈夫よっ!私が居るから安心して暴れなさいっ」
ヴィッター「そうですわ!私は最高のパーティですもの」
メービー「今までの自分を信じましょう」
そうか、みんな各々のやりたいことのためにここまで来ている。
俺はみんなの方を向いて
ついに話そうと思った。
「俺は…かつて師匠がいました。師匠が今もこの先のドコカに居るはずなんです。俺はそのためにここまで来ました。俺は…」
言葉を続けたいが、上手く出てこない
みんなの表情が何かを察したような表情をしていたからだ。
もう生きていないと…言いたげな
「待っていると言ってくれた師匠を信じます。」
俺はペンダントを握り、俯く。これ以上みんなの表情を見ていられないからだ。
そっと俺の頭に手が触れる
ベリー「きっと居るわよ。あんたの師匠なんでしょ?あんたが信じられないくらい強いんだから、あんたの師匠もありえないことをやってのけてるはずよ」
ヴィッター「そうですわね」
メービー「きっと。そうですね。」
ベリー「じゃあ決まり!行きましょ」
ベリーさんは泥の湖に足を一方的近づけ盾を構える
俺達も続く。
ヴィッター「探知には1匹。中央辺りよ」
メービーさんはヴィッターさんの横で詠唱を始めた。
ベリー「ウィル、水中に道を作れる?」
ウィル「出来ます。ただ、お勧めしません。俺の防護が破られる可能性が…」
ベリー「その時は水を蒸発させればいいわ」
俺は水中にトンネルのような物を作る
そしてこれ以上先に伸ばせないような何かに当たった。
ウィル「できました」
ベリー「行くわよ。」ベリーさんは剣に炎を纏って俺の作った道を進む。
俺も後ろからついて行く
3メートルほど進んだとき
それは一瞬の出来事だった
ベリーさんの左腕が一瞬で吹き飛んだ。
俺はベリーさんに防護を10枚ほど掛けて居たにも関わらず…足りなかった。
そしてベリーさんの腕は師匠の半身を吹き飛ばした高圧の水弾によるものだ。
ウィル「ベリーさん」俺はベリーさんに駆け寄り最大限の防護を自分に纏い、やつに背を向ける
そして「ヴィッターさん!メービーさん」
俺は水中トンネルを進みベリーさんにエスケープの玉を持たせる
「ヴィッターさん、ベリーさんを!」
ヴィッター「わかったわ。エスケープ」
と、同時だろうか
俺の首筋に悪寒が走った
剣を抜き前に構える
「メービーさん。魔法を…そして、エスケープを…10枚張っていましたが足りませんでした。」
メービーさんは最後の呪文を口にする
「サンダービースト」
そして。俺はそのうちの2つを捕まえる。
2つほどであれば手を使わずとも維持できる。
そしてゆっくりとやつは泥の湖の中から姿を現す。
そして、やつの目に見覚えのある杖が刺さっている。
俺が俺でなくなったかのように何も考えずに
俺はクレイブに一直線に向かい
水面の上を駆け抜ける
そしてありったけの防護を剣に纏う
クレイブのハサミが俺の頭を掠める
クレイブの視界はこちらを捉え、高圧の水弾を放つ。
刹那
俺はそれを剣の面ではじき返す。そして構わず
クレイブに剣を叩き込んだ
はずが、やつは後ろへ下がった。
エビのようなしっぽがそれを可能にしているのだろう。小癪だ。
俺は構わずクレイブの脳天を狙い剣を振り下ろす
足場など防護で作れる。だから俺はずっと追いかけた。見失うと俺には見つける手段がないのだから。
「師匠をどこへやった!!!」
俺が剣を叩き込む瞬間、やつは下がる…と、同時に
俺は貯めていた1つのサンダービーストを放つ。
強い光は辺りを包み込み、クレイブは縦横無尽に暴れる
壁に張り付いたクレイブの右腕がちぎれている
すかさず
クレイブは尾鰭を使い俺に弾丸のように突っ込んでくる!
俺はもうひとつのサンダービーストを放つ。が…
やつは空を尾で弾くと起動を変える。
やつの左側を抉る程度にしかならなかった
クレイブはそのまま泥の湖の中へと潜ろうとする。壁を伝って徐々に水面へと降りていく
俺は…ここで帰る訳には行かない!!
防護を極限まで細く鋭く
狙うは装甲の繋ぎ目
俺から放たれた槍は甲高い音を立て向かって行くが
クレイブの装甲に弾かれる
そして
クレイブはジグザグに動き始める。
あいつはも俺の狙いを理解している。俺が装甲の継ぎ目を狙っていることを…
だから俺はあえて槍を持って接近する
クレイブの胴体に直角方向から刺す
ベギッメキッと音を立て光の槍はついにクレイブの背中付近の装甲に突立つ。これで位置が分かる。
それと同時か、もっと早くか、
クレイブは残っていた爪で俺を捉えた。
何重にも貼っていた防護が容赦なく割れる。
貼り直す隙もなく…
そして人間は水中で抵抗できないと知っているかのように迷わす水中へと俺を連れていく
俺はクレイブのハサミの周りを防護で咄嗟に覆った。
クレイブは俺が
手は捕まって動かない。足はじたばたする程度しか動かない。防護は自分を守るために強度を増やしているから今は攻撃に回せない。
と、考えているとでも予測しているのか?
俺を高々と上げ、じわじわとハサミを締める。
「馬鹿め」
半分ほどの防護が割れる
仕込んでいたカウンターが発動する
今まで攻略を始めてからずっと溜め込んでいたのだ。
俺を掴んでいたクレイブの爪はビビが入り割れた。
すかさず目に刺さっている師匠の杖にこの部屋いっぱいの特大の魔力弾を放つ。
クレイブから見れば俺が空に手をかざしただけのように見えたのだろう。
その隙を逃さずクレイブは尾ひれを使い全速力で後ろへ下がる。
だが、どこへ逃げようとも無駄だ。
俺はゆっくりと水面を目指す。
恐らく師匠のことだ、あんなに目立つ場所に杖を刺していたのだから何かあるだろう。
俺が水上に上がったころ
それは、発動した。
白く光を放ち、全てを溶かし、焼き上げ、辺りにあったであろうものを一瞬にして気化、昇華させた。
辺り一面は霧がかかる。
そして右側の方から確かに扉の空く音がした。
終わったのだ…
「師匠…どこにいますか?」
俺は自分が先程作った防護から出られない…
この先は恐らく高熱の嵐。出れば内部から火傷してしまうだろう。
もう一度声をはりあげ
「師匠!!師匠!!!」
むせるほどに声をはりあげた…
だが返事はない。霧が晴れるのを待つ訳にも行かない…俺の空気が持たないだろう。
うっすら分かっていた事だ…本当は待ってはいない。あの日、あの時、師匠はもう…
「くそっ」
俺はペンダントを握り拳を地面に叩きつける。
いや…まだだ、。
そして静かに立ち上がり
次の階層へと進む
もし、クレイブから逃げきれていたとして…
師匠はダンジョンの壁に穴を開けられるお方だ…
十分に有り得る。
微かな希望を胸に足を進める
次回もお楽しみに




