秘策完成!?
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俺は毎日演習場へ通い
防護を自分で割ることを繰り返していた。
それと同時に分かったことがある。
俺の防護をもっと効率的に割るには両手を使って振り下ろす動作が1番早いと言うことだ。手を回すだけで防護の着いた手と空中に展開した防護がふれあい、割れる。
やがてそんな1週間はあっという間にすぎ
メービーさんとの約束の日を迎えた。
この間は3個を10秒と、留めていられなかった。
少しは留める時間が伸びてるといいのだが。
演習場の扉があき
メービー「こんにちは、今日もよろしくお願いします。」彼は深々と頭を下げた
俺もそれに習い
「こちらこそよろしくお願いします」
メービーさんは杖を掲げると
「では早速」
俺も防護をかける準備をする。
メービーさんは詠唱を唱え始める
「天は精霊の心、静けさは嵐の訪れ、大地の言葉に耳を傾け、我が言葉を伝とし捉えたまへ。
我が願うは熱の無い光、あるいは水の無い事象。その名を雷光。我が言葉は無垢なる言葉。光の精霊よ、風の精霊よ、大地の精霊よ我が魔力を糧とし、我が身に力を貸したまへ。ここに轟けサンダービースト」
光が発される瞬間。俺は防護を作り
メービーさんの魔法を閉じ込め、カウンターで増幅する。
今回は5つ。加えて前よりも格上の魔法だ。
「クッ!!」俺は歯を食いしばる。
防護を遠隔で支える手が重い…
俺は負けまいとガグガクと震える手を抑え
暴れ狂う魔法を必死に留めようとする
「ああっ!!」
限界だ…メービーさんにだけは当たらないようにっ
俺はまたも耐えきれずに空へ放った
メービー「お怪我はありませんか?」
彼は慌てて近づいてきた
ウィル「特にはないと思います。」
メービー「どのような感じでしたか?」
ウィル「師匠が、初めて俺に魔力を流し込んでくれた時に、俺の中で衝撃が暴れるように走り回ったようなその感覚に近かったです。」
メービーさんは少し顎に手を当ててから
メービー「つまり、魔力制御が効かないような状態に近いわけですね…」
肩を落とす俺に続けて
「ただ!ウィルさん。防護は割れていませんでした。訓練は無駄ではなかったようです。」
ウィル「本当ですか!?俺、これからも頑張ります」
メービー「いいですね!頑張りましょう」
ウィル「次課題があるとすれば何ですか?」
メービー「そうですね…魔力の器を広げる事…ですね」
ウィル「限界値とは違うものなんですね」
メービー「そうです。魔力の器はその人の一度に出せる魔力量と捉えていいでしょう。そしてそれを広げる方法は、手と手の間に魔力の塊を作るんです。体から離れないように。そしてそれを一気に吸収、もしくは放つのです。そうすると出口が広がります」
ウィル「こう…ですか?」
俺は手を近づけ魔力の塊を手と手の間に出す。
この状態は…魔力を別の魔法に変換する前の段階で止めているようなもので、ぐるぐると俺の手と手の間で魔力が滞留し、ある程度の大きさで止まった
メービー「そう、それです。そしてそれを吸収、もしくは放ってください。」
俺は防護の箱に打ち付ける
魔力塊は音もなく霧散していった。
ウィル「今のを繰り返すと…器が広がるということですか?」
メービー「そうです!ウィルさんは飲み込みが早い…とても素晴らしいですね」
ウィル「ありがとうございます!絶対50層に行くまでには形にしておきたいんです。頑張ります!」
メービー「わかりました。程々にしてくださいね。」
ウィル「はい!…あの、次はいつ出来ますか?」
メービー「そうですね…」
彼は予定表だろうか?メモを取り出す。
ハートが似つかわしくなく描いてある日がある…
あまり人の物を見るのは良くないと思い瞼をとじる。
メービー「来週の同じ日にいかがですか?」
ウィル「よろしくお願いします!」
そうして彼の魔力塊は彼自身のサイズを超え
ついには演習場では足りなくなり
アーサーさんに許可を貰い、裏山で練習を重ねた。
そして当日
メービーさんと俺は顔を合わせるなり
メービー「始めます。」いつもの穏やかなタレ目が少しきりっとしている。気合いが入ってるのが伺えた。
ウィル「よろしくお願いします」
メービーさんは呪文を唱え始める
天は精霊の心、静けさは嵐の訪れ、大地の言葉に耳を傾け、我が言葉を伝とし捉えたまへ。
我が願うは熱の無い光、あるいは水の無い事象。その名を雷光。我が言葉は無垢なる言葉。光の精霊よ、風の精霊よ、大地の精霊よ我が魔力を糧とし、我が身に力を貸したまへ。ここに轟けサンダービースト!!」
いまだ!
ウィル「エンチャントっ!!」
10秒 手は震えない
1分 少し手が震えるような感覚に襲われる
ここからだ…魔力の器を広げる訓練で分かったことがある。ある一定の感覚でこの震えが起きる…
その震えは魔力が不安定になり始めているということだ
俺は集中する。
森を駆け抜ける風もメービーさんの視線も、太陽も、鳥のさえずりさえも聞こえないほどに。
幾つの時間が経っただろうか。
俺の手には魔法の原型が乗っている
そして俺はゆっくりと天に向け放つ
それは一瞬太陽が落ちてきたかのように眩しく光を放ち、音もなく天を駆け上がりその周りには雷が纏われている。無音の竜骨だ。
メービーさんと俺は顔を見合わせ
ウィル「やりました!!」
メービー「すごいです!!お疲れ様です!流石はウィルさんですね。5分も持つのはありえないことだと思います!!」
5分か…まあもったところだろうか。
ウィル「ありがとうございます。この技は、50層でもし仮に、俺の防護でモンスターの装甲を突破できなかった時に使う予定なのですが…どうですか?」
メービー「ふむ…」
彼は顎に手をあてて
しばらく考えて
メービー「5分…50層…。ウィルさん、30秒でどれ程の威力が出せるかを見せていただけませんか?。それから決めましょう。」
俺たちは先程と全く同じ手順で
それを放つと、先程の威力や衝撃を感じなかったが…音もなくただ真っ直ぐ天に向かって突き刺さる。最初の頃とは違う雷を束ねたような柱が集まりかかっているようにも見えた。
そしてそれはきっと、クレイブの装甲を貫きまだ生きているであろう師匠を救い出す鍵になると思っている。が…本当にできるのだろうか。
俺達が山から降りると
ベリーさんとヴィッターさんが居た
べリー「あんたたちがアレやったの!?」
俺は頷く
メービー「ええ、ウィルさんの努力の賜物です」
ヴィッター「あれほどのものであればきっと50層クリアも出来そうですね」
ウィル「そうですね」
困ったことに、否定することが出来ない。が、肯定することも出来ない。
俺にはその自信がない。
ベリー「ウィル?何そんな顔してるのよ」
ヴィッター「そうですよ、大丈夫ですよ」
ウィル「ありがとうございます…」顔に出ていたようだ。
ベリー「ったく!辛気臭いわね!飲むわよ!」
俺はベリーさんに手を引かれ
久しぶりにベリーさんとヴィッターさんそしてメービーさんを交え食事をする。
初めて4人で食事した居酒屋で
思い想いに近況を報告し合い
ベリー「そういえば、お姉様から伝言よ。褒美は何がいいかって」
ヴィッター「まあ」彼女は手を顔の前で合わせる
ベリー「はい、ヴィッタ〜言って〜」
ちょっと呂律の回らない口調でヴィッターさんを指さす
ヴィッターさんは少し困ったように考えてから
「では、ドレスを…」
ベリー「それくらい私が買うわ」
ヴィッター「ありがとう、でも、すごく特別なドレスが欲しいんです。」
ベリー「分かったわ、費用とか出してもらう方が良さそうね。次、メービー」
メービー「私は…この国での身分が欲しいです。永住権といいますか…」
ベリー「たしかにエルフだもん〜!男爵あたりにしといたら?」
メービー「男爵だなんて!!とんでもないです…地位はなくてもいいですから、住めればと…」
ベリー「あんた…お姉様の後ろ盾になるなら地位は居るの〜それと、ヴィッターといい暮らしをしなさいよ!!」机にドンッとジョッキを起き
ベリー「だいたい、あんたたち付き合ってんるんでしょ〜?なんなよぉ!早く言いなさいよォ」
人差し指でヴィッターさんの頬をグリグリしている
ヴィッター「あら、バレてたの?」
ベリー「街で見かけたわ。ウィルも知ってるよ」
メービーさんが驚いた顔でこちらを向く
ウィル「付き合っていたんですか!!?たしかに街では見かけましたが…」
ベリーはおでこに手をペチンとあてて
ベリー「あんた鈍すぎよ〜っだいたいねっあんたね〜」
これは…相当酔いが回っているようだ
話題を変えないと夜が明けてしまいそうだ。
ウィル「ベリーさんは何を頼むんですか?」
ベリー「決まってるでしょ〜盾よ盾〜強い盾」
ウィル「なるほど、ベリーさんらしいですね」
ベリー「…私の事はいいの〜あんたは何を頼むの?」
俺は少し考え込んで
ウィル「俺は…そのうち…まだ決められなくて」
師匠に何かを贈りたいが、何がいいのだろうか。
ベリー「わかった〜未定ね〜じゃあウィル以外のは明日伝えるわ〜」
夜も更けて、俺たちは各々帰る
ベリー「じゃあ〜ヴィッター、私ウィルの所に行ってるわ」
ヴィッターは顔を真っ赤にして
ヴィッター「お、おふたり…いつからそんな関係に!?」
ベリー「違うわよ!!隣借りてるの!」
ベリーの頬が少し火照っている。酔いのせいだろうか
俺は、50層をクリアして、みんなを師匠に紹介して…あいつに勝てるだろうか。姿を思い出すだけで竦む手足を…俺は…越えられるだろうか…
うとうとしているベリーさんを荷台で運びながら
空を見上げてぼんやりと考える
宿に着く
ベリー「じゃあお休み〜」
ウィル「はい!お休みなさい」
ベリーさんはフラフラと俺の部屋へ入って行く
明後日がいよいよ決行日だ。
俺は静かに師匠の部屋の入口で眠りにつく
次回もお楽しみに!




