イレギュラー
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36層
先程真紅の猿を倒して居るからだろうか
猿たちが俺たちを見るなり逃げてゆく。
ウィル「メービーさん。猿たちが俺たちを避けていますね。」もしかしたら別の危険視号の可能性を考えてメービーさんに尋ねる。
メービー「恐らく真紅の猿はレアポップに加え、この区切りの層のボスでもあります。そんなボスの臭いが私達に染み付いてるのは恐ろしいでしょうね。」
ヴィッター「それもあるのでしょうけれど…あれ…は…」ヴィッターさんは何かを見て口を塞いでいた。
ベリー「この先猿を殺し回ってる奴がいる」
ベリーさんが指を指す方向には首のない猿が沢山転がって血を流している。
俺たちは構える。あの切り口は鋭利な物だろう。
別のモンスターの可能性がある…よく見ると
加えて、猿たちの手には装飾が端整に施された指やオレンジ色の長髪の毛に金貨や…人の目?
あぁ…そうか…先の者達が居るのか…
まだ間に合うだろうか。
ウィル「ベリーさん、メービーさんを。次の階層の始まりで落ち合いましょう。ヴィッターさんごめんなさい!」
ヴィッターさんを片手に抱え
疾走!猿たちは弱いものと分かるとたかる。
つまり、1度盗られた事に気付かずに先に進み…取られたのだろう。
ウィル「ヴィッターさん俺は、探知が使えません。方向を教えてください!」
ヴィッターさんを抱えたまま
風よりも早く走る。ヴィッターさんに負担の少ないように普段より速度を落している。
揺られながら
ヴィッター「右よ!」
沢山の猿に囲まれ、右目を押さえた女性は
オレンジ色の長髪が片方だけ無い…そして指も幾つか無いようだった。
そして、、遅かった。
力なく倒れ込む、剣を持った黒髪の男性や
猿達に足蹴にされている男性達。
俺は即座に女性の前に立ち、
ウィル「ヴィッターさん!俺が護ります。手当を!」
ヴィッターは即座に目に手を当て始め、治療を開始した。
猿は俺を見るなり後ずさりした。
1匹足りとも逃しはしない。
「騎士に!!」俺は片手を掲げ空に手のひらを向け
同時に俺を中心に円形状に防護が展開され、
外側にも防護の壁ができる。
不思議猿たちに怒りや憎しみは感じない…
「誉れあれ!!」
静かな心持ちで俺は猿をまとめて潰す。
これはアーサーさん直伝の技だ。
猿たちを一掃した後
騎士たちの亡骸を集め
俺ができる最大の弔いは、この女性を送り届ける事だ。
彼らの死体を埋める…
女性は放心状態のようだった。
赤い目は元に戻り、手も動くようだった。
ウィル「ヴィッターさん急にすみませんでした…」
ヴィッターさんは俺に耳打ちをする
「いいのよ。それよりも、この子、この国のお姫様ね。どうする?引き返す?」
ウィル「一旦みなさんと合流してから意見を聞こうと思います。」
ヴィッター「お姫様、お体に触れます。」
ヴィッターは静かに女性を抱き抱える。
俺は荷台を作り、無言で次の階層の方へと進む。
女性はヴィッターの胸に顔を当て、涙ぐんでいる。
ヴィッター「お姫様は悪くないですわ。彼らも守れて本望だと思いますのよ。」
慰めの言葉は女性を楽にしているのだろう。啜り泣く声が大きくなっている。
37階層
ベリー「あ!キタキタ!」ベリーは手を振る
メービーさんは…気絶している!?
俺の視線に気づき
ベリー「手を繋いだら…こうなっちゃって」
なるほど…急ぐようなことがあったのか…
不可抗力と言うやつだろう。
ベリー「で、お姉様はなんでここに居るわけ?」
お姉様!?!?!?
俺は静かに思考を止めた。
ヴィッター「それが、話を聞くに恐らく王位争奪戦が絡んでいるようね。」
ベリーは荷台から降りた女性に
ベリー「バカね…どうせお姉様の婚約者の為に来たんでしょ?」泣いてるお姉様にそんな事を言っていいのだろうか
女性は静かに頷く。
ベリー「ふんっ…それぐらいなら私に頼めば?」
意外とお姉様思いなのか。
ヴィッター「ベリーちゃん。無茶言わないの」
ヴィッターさんはベリーさんの口に人差し指を当てる。
メービーさんは起き上がるなり
「ええ!?第3候補妃ィ!?」あわあわあわあわわ
と言い俺は手を引かれ森の中に連れ込まれた
「ウィルさん…何が!?」
ウィル「どうやら、王子様の手柄のために来た見たいです」
メービー「なるほど…ありがとうございます」
その場にメービーさんは座り込み何やら地面に書き出す。
俺はメービーさんに防護を掛けて
ベリーさん達の所へもどる。
確か挨拶はこうだったか
ウィル「神聖なる王の候補妃さま、お目にかかれて光栄にございます。私はウィル・ライトと申します。現在このパーティの仮のリーダーを努めさせて頂いております。軽い挨拶のみであることをお許しください。」…あっているのか?ベリーさん達を見るに、背筋を伸ばし立っているから合っていそうだ。よかった。俺はお辞儀をしてベリーさん達に駆け寄る。
お姫様は頷き上の空のようだった。
ウィル「ベリーさん、ヴィッターさん!お姫様を40層まで連れていきますか?引き返しますか?」
ベリー「私は行くわ。そしてSランクに上がるつもりよ」
ヴィッター「私も同じです」
ウィル「お姫様が亡くなる可能性があってもですか?」
ベリー「もともあんたが助けなければ死んでたのよ。それにお姉様や私の代わりは居るの。だからできる所までやるしか選択肢はないの。分かる?」
俺は良く王族の事や統治の事は知らないが、凄く冷たい世界なのだろう。代わりなど居ないのに。
メービーが後ろからぬっと現れ
「私も連れいていくことに賛成です。これ勢力図なのですが」と良い、魔法で3人の王子様らしき人とお姫様、そして力のある貴族の駒を簡易的に動かす。
「今最も力があるのが第2王子です。次いで第1王子。第3王子はそもそも乗り気ではないようであまり参加していません。ですが、後ろ盾の貴族はのし上がる事に夢中です。」
なるほど…第3候補妃がこんなところに居たのは後ろ盾の貴族の差し金という訳か。
「そして我らが冒険者ギルドは第3王子の名のもとに活動を行っています。備品や無料の朝食はその取り計らいによるものです。無論固定給もです。」
現状維持をするか、掛けるか…か。
ウィル「つまり、第3王子にはある程度の地位で留まって頂かなければならないわけですね?」
メービー「その通りです。加えて、我々ギルドが後ろ盾となることが出来れば、このような危険なことをする行動は控えて頂けるはずです」
メービーさんは口が上手い。俺の信条をよく知っている…これは視点を変えれば困っている、助けて欲しい人なわけで、俺は其れを叶える為に動く。断る道理も余地も無いわけだ。
ウィル「では、候補妃の守備は皆さんで…」
候補妃と言う程だ、魔力が多いのではないか…?
ウィル「ヴィッターさん。候補妃とメービーさんではどちらが猿の気を引きますか?」
ヴィッター「圧倒的に候補妃ね。候補妃は魔法こそ使えないものの魔力量だけ見ればSランク相当かと思いますわ。」
メービー「私は魔法を沢山打てるので多く見えますが、そんなに多くは無いのです。効率よく使っているに過ぎません。」
効率よく…か…後で聞くとしよう。俺もまだまだ改善の余地があるかもしれない
ベリー「ウィル、あんたなら余裕よね。囮が2人に増えたところで」ベリーさんは先程から本心を言っていないように聞こえた、何故ならベリーさんはずっと下を向いて居たから。そしてヴィッターさんの服の裾を掴んでいる。
俺はベリーさんの頭を軽く撫で視線を合わせて
「余裕です。出来ないと思いますか?」
微笑んでみせる。
ベリー「ッ!…できるから言ってるのよ!」ベリーさんは駆け足でお姫様の所に向かう
ヴィッターさんもその後を追う。
そうだ、今のうちに頼んでおこう。
「メービーさん。今度地上で試したい事があるのですか、よろしいですか?」
メービー「構いませんよ。お力になれるのなら」
ヴィッターさんとベリーさんがお姫様を中心に俺たちの元へ来た。
ベリー「お姉様も行きたいってさ」
37層へ
先頭俺
ヴィッターさんとベリーさんの間にお姫様。
最後尾はメービーさんの並びで歩く事になった。
入ると同時に念の為1匹の猿を捕まえ見せしめの様に殺す。
幸い猿たちは俺たちを遠目に見るだけで
追ってくる様子も、襲ってくる様子もない。
が、姫様の怯えの気配は俺たちを襲うのに充分な理由を与える。だから隙なく過ぎなければならない。
階段に足を踏み入れ
「ふぅ」とベリーさんが息をつく
緊張しているのだろう。
緊張で動きが遅くなることを良くアーサーさんから指摘されて居た事が脳裏を過ぎる。
ウィル「ベリーさん。もしよろしければ盾に防護をかけても?」
これは安心させる為に行った行為だ。
もとより掛けてはある…が、俺の防護があると分かれば多少気が楽になるだろう。
ベリー「カウンターもお願いできる?」
ウィル「もちろんです。」
ベリーさんの盾に手を当て
「エンチャント」
メービー「何度観ても無駄のない工程ですね」
俺は予想外にメービーさんに褒められて嬉しい。
ウィル「ありがとうございます」少し照れくさい。
階段を下り次へ向かう
先程から後ろの声を聞くに
ヴィッターさんとお姫様の距離が近い気がする。
ベリー「ちょっとあんたたち、くっつき過ぎよ!見てて暑苦しいわ」その通りだ…あんなに腕を組んで新婚のようだ。
よく考えると
オレンジ色の鮮やかな姫様の髪に対して
ヴィッターさんの髪はたまに見える程度だが
恐らく琥珀色。遠縁の関係なのだろうか。
目の色はグレーと群青色で違うが…
あっという間にこの階は終わった。
39層
変わらない景色をただ進み行く。
道中お姫様が少しだけ笑っているようだった。
残酷な先程の光景を目の当たりにして
…私のせいで…と嘆いて居た彼女は束の間の安堵を手に入れているようだった。
40層
真紅の猿戦がここを超えたら始まる。
レンガと石畳の間を
俺たちは迷わず超える
俺は作戦通り真紅の猿が入る箱を防護で作り。
メービーさんとお姫様は俺のはこの前に立つ。
じゅわじゅわと木々は焼け爛れ音が近づく。
震えるお姫様を前にメービーさんは1歩前に出た。
真紅の猿はメービーさん達を見つけ
少し笑ったように見えた。表情は隠れてて見えないのだが、そんな気がした。
俺は良くない考えが頭をよぎる。
もし、1体でないとしたら。ベリーさん達は俺の後ろで待機しているのは相手の思惑通りなのでは…と。
俺はベリーさん達に無言で、手でここで待つようにサインをし、
反対側へ向かう。音よりも早く動く俺は、目の見えない猿には気づかれない。
俺は木々よりも高く飛び上がり辺りを見回すと
木々が倒れているところが3箇所あったのだ。
もし仮に、もし仮に既に猿たちが潰しあっているとしたら?
そして既に分裂しているとしたら???
このイレギュラーがベリーさん達の反応を遅らせた。
俺が戻るとベリーさんとヴィッターさんが臨戦態勢だ。何かあったようだ。予感が的中した
メービーさんとお姫様を真紅の猿の前から救い出す。
そして両手に抱え
ウィル「ベリーさん!!ヴィッターさん!防護っ!!」
俺は2人を護り、ヴィッターさんとお姫様を2人の傍に置き、4人をさらに上から防護で覆った
ウィル「ここから出ないでください。カウンターで敵はそのうち倒せますから。」
俺はそう言い残し目の前の真紅の猿を叩き切る。
やつは分裂し
俺はその瞬間に閉じ込めた。
目の見えない猿と耳の聞こえない猿の方のみ倒し切る。
そして口にマスクのような物をはめた猿をヴィッターさん達の前に持ってく。
この間にヴィッターさん達の周りにはカウンターで対処出来ただろうか?
目の見えない猿の死骸が3つ
耳の聞こえない猿の死骸が3つ
ヴィッターさん達に当たっては血を吹き出し
それでもなお当たり続ける影が3つ。
俺は当たり続ける猿を捕獲する。
俺が倒したものを含め
計4体分の対の猿が並ぶ。
ヴィッターさんと俺は顔を見合わせ
ヴィッターさんの神聖魔法が発動する刹那
俺は息を合わせ防護を圧縮するっ!
静かになった猿たちの死体を5人は静かに確認し
ガチャん!と扉が開く音で俺たちは安堵する。
ベリーさんとヴィッターさんはハイタッチをし
お姫様もそれに続く。そして
ベリー「お疲れ様」
ヴィッター「お疲れ様でした」
メービー「皆さん帰るまでがダンジョンですよ」
ベリー「わかってるわ」
ベリーさんはお姫様と手を繋ぎ
ヴィッターさんとも手を繋ぐ
メービーさんと俺も手を繋ぎ
ベリー「エスケープ!」と、唱えると
俺たちは町外れの洞窟の前に出た。
お姫様「みなさま、なんとお礼を申したら良いか…本当に私のわがままでしたのに。連れて行って下さりありがとうございました。褒美の使いはギルドへ走らせますので。」俺たちに頭を下げようとする
ヴィッターさんはそれを手で下から止める。
ヴィッター「私達は当然の事をしたまでです。ですからお止め下さい。」
ベリー「そーよ!お姫様!とにかく無事で良かった!!」
ヴィッターさんも無事に帰って来れて胸を撫で下ろしていた。
ベリー「じゃあ、次は50層ね!挑む時は呼びなさいよ!じゃあ私たちはお姉様をお城へ送り届けるわ!」
元気にベリーさんはヴィッターさんとお姫様の手を取り駆け出す。
俺は手を振り見送る。
ウィル「メービーさん行きましょうか。」
ギルドに猿の首を届けよう。
次回もお楽しみに!




