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風属性がハズレだなんてありえない! ~転生令嬢が魔法と前世の知識でQOLを上げるまで~  作者: ほすてふ


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8.園芸部見学ですわ

 風魔法には基本的な情報収集の魔法が二つあります。

 ひとつは風に魔力を乗せて音を伝達するアクティブソナー。

 一つは耳元で音を増幅するパッシブソナー。

 名前については流派によって若干の差がありますので、わたくしの前世の記憶から仮に付けたものです。


 アクティブソナーは魔力視によって容易に見つかってしまうことが弱点です。

 送信もできるようになれば音声通信魔法となりますので、ちょっと通信してましたと言えばごまかすこともできます。


 パッシブソナーはバレにくいのが特徴です。防御魔法を纏うことは魔法使いとして当然ですから、自身へかける魔法ならわかりません。

 しかし、人が多いと聖徳太子にならなければなりません。それから急に大きな音がなると耳が壊れます。

 音を選別したり、音量に上限を設定できるようになれば一人前です。


 風属性の筆頭貴族ともなれば、このような情報収集は当たり前に行っていることでしょう。

 音属性など特化した派生属性でもなければ、秘伝の質も量も、筆頭家にはかなわないでしょう。



 そんな風属性筆頭の令嬢、風祭アリアは現在、わたくしとおてて繋いで共に園芸部の見学をしています。


「こちらは菜の花。地上の茎や葉、ものによっては花をも食べることができる花たちですわ」


「おおー」


「こちら一帯は根の花。地下に可食部ができる花たちですわ。地上部は食べられるものと食べられないものがあるので、詳しいものに確認していただいたほうがよろしいですわ」


「ほうほう」



 園芸部で育てている作物は、ほぼ食用でした。

 花が咲いているかはまちまちで、季節によってどれかが咲くようにしているのか、それとも収穫のタイミングを調整しているのかと言ったところでしょうか。

 素朴で可愛らしい花にアリアが至近距離まで接近して観察しています。


「遠くから見たほうがかわいいかも」


 そう言いながら顔をしかめるアリアに引っ張られるわたくし。ハナがあわあわしております。大丈夫よ。


「こちらは花魔法での育成実験をしている区画ですわ。百花さんが活動しているのは主にこちらなのですよ」


 ルビエラがハナを見てそう教えてくれます。通常は従者は居ないものとして扱うのが作法なのですが、学園ではそういう扱いはしない慣例なのかもしれません。

 確かに無視していては共に学ぶことはできませんね。



 さて、この世界の農業は魔法が前提となっています。

 地属性魔法使いが理想の畑を調整し、水属性魔法使いが水を与える。

 これが基本なのだそうです。


 ここから限定的とはいえ水魔法を代替することに成功したのが我が風車家が生んだ風力揚水機というわけです。

 魔法に寄らない風と水源があれば広く水を使えるのです。

 派生技術として水車も存在しているらしいですが、わたくしは見たことがありません。


 話を戻しますが、そんな魔法農業の中で魔法を使って育てると表現する育成技術とは何なのか。


 それは植物を育成する魔法を使うというものです。そのままですね。


 その魔法は花属性と呼ばれています。ハナとルリの百花家はその花属性を使う家の一つです。


「百花さん、と呼ぶとややこしいですわね。お名前で呼ばせていただきますわ。ルリさん、いまどのような実験をしているのか説明してさしあげて」


「かしこまりました」


 ルビエラに指名され、ルリが前に出て説明を始めます。


「花魔法は地属性の豊穣魔法を抜きに植物を直接育成することができます」


 それも、即座に成長します。

 ならば花魔法で無限に作物をとれるのではないかと思うかもしれませんが、花魔法使いの数と、規模の限界がボトルネックとなっているそうです。

 基本的には一株。特別腕の良い方でも畑一面ほどが限界とのことです。


「これを利用して、どのような植物なのかを調べることが花魔法使いの役目の一つなのですが、いくつかおかしな特徴を持つ植物があるのです」


「おかしな特徴ですか」


「はい。ひとつは、花魔法で育てると可食部がができるのですが、地属性魔法だけではうまく可食部が膨れない根の花です。葉はよく茂るのですが」


「なるほど……」


「そういうよくわからないものは置いておいて、他の作物を育てればよいのではなくて?」


 アリアが小首をかしげてそう尋ねると、ルリが答えます。


「ですが風祭様。食味がよいのですわ」


「味ですの? おいしいに越したことはありませんが、量の方が大事なのでは」


 おっと、ここは啓蒙しなければなりませんね。


「おいしさは重要ですわ、アリアお姉さま。おいしいものを食べれば気力が湧いてきます」


「うふふ。風車さんわかってますわね。いいですわ、せっかくですのでお試しに召し上がっていただきましょう」


 ルビエラからの評価が上がったようです。


「かしこまりました。ハナ、見ておきなさい」


 ルビエラの指示に従い、ルリが作物に魔法をかけます。


 するとつるがするするとのびて葉が茂り、綺麗な花が次々に咲き乱れます。前世で育てた朝顔に似たラッパのような形です。


「地下に実が出来ているのですか?」


「茎や葉も食べられますが、地下で膨れる根の部分がとても素敵なのですわ。みなさん、収穫と調理をしておいてくださる? 皆でいただきましょう」


 ルビエラが園芸部員の皆さんに指示を出すと皆さんてきぱきと動いてよく茂ったつるをかき分け、地下の実を掘り出していきます。


「デッカ……大きい!」


 アリアが驚くのも無理はありません。

 掘り出されたのは立派なイモでした。人の顔ほどもありそうです。火を通すのも大変そう。


「ほかにもですね、花魔法でしか育たない植物があるのです。こちらは通常の畑ではそもそもきちんと育ちません」


「地属性で調整しても育たない植物があるのね」


 うんうんと頷いているアリアですが、このくらいの、初回の見学で教わる程度の情報は把握しているのではないでしょうか。

 おイモさんなんておいしいに決まってますから、試食できるよう誘導した疑惑がもちあがります。したたかな子!


「この問題を解決できれば、高品質な作物を広めることができるのですが」


「ですが?」


「昔は畑でも育っていたものも、育たなくなったりしてまして、このままでは魔法文明の敗北ではないかと」


 肩を落とすルビエラ。


 なるほど、厄介な問題が起きているようです。


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