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風属性がハズレだなんてありえない! ~転生令嬢が魔法と前世の知識でQOLを上げるまで~  作者: ほすてふ


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5.暴力よりQOLですわ

本日は3話投稿しています。2話目。

「ミルカ、あまりお父様やお兄様を巻き込んではしたない真似をしてはいけませんよ」


「はい、お母様」


「まったく。返事だけはいつも立派なのだから。今回はお父様が認めたから許しますが、本来わたくしたちはあのような荒れ狂う魔法を使うべきではないのですよ」


「わかっておりますわ。わたくしたちの本分は家を守ることですわ」


 戻りながらお母さまに叱られます。


 家を守るのが本分、というのは前世の認識と比べると、もっと範囲が広く。そして実力行使や政治的な意味も含みます。


 より危険な仕事に向かうのが殿方の役割。

 淑女の役割は、彼らの帰る場所を守ること。もちろんその場所は淑女自身の居場所でもある。


 この国のジェンダーの認識はこんなところです。

 日常的に魔物と闘争し、時には人間同士でも争うこともあるこの世界、少なくともこの国では、前世の平和な時代とは違う価値観で動いています。


 お母さまは比較的そういった規範に厳しいので、わたくしはよく叱られています。


「ふぅ。まあ今日はいいでしょう。ハナ、この子をよろしくね」


「はい、奥様」


 ハナにも釘を刺してから、お母様は去っていきました。今日はお父様と過ごす予定だったでしょうから、少し申し訳ないことをしたかもしれません。


 そして、自室に戻ったわたくしは腕を組んでうなりました。


「結局解決はしなかったわね」


「お嬢様……」


 魔法を一つ試しただけで風属性の立場向上ができるわけはありませんが、空振りだったのはやはり残念です。


 そもそもわたくしの立場では、戦術魔法についてどうこうしようというのは無理があるのかもしれません。

 戦いの前線に出て大活躍でもすれば見直されることがあるかもしれませんが、淑女の身ではそれ自体が否定されることでしょう。


 お父様やゲイル兄様がインスピレーションを受けて何か上手いことやってくれるかもしれませんが、それに期待するのも違うでしょう。

 わたくしはわたくしで目的のために動くべきです。


 ではどうすべきか。


「戦闘力評価が重視されすぎなのではないでしょうか」


「お嬢様やわたくしの立場からするとそう感じることは否定しませんが、あまり口にすべきではないのでは?」


「いやね。ここにはわたくしとハナしかいなくてよ」


「それはそうですが」


「聞き耳対策もしておりますから大丈夫です。それより、そうですわね。食料調達の半分を担う作物栽培などはもっと評価されるべきではありませんか?」


「それですと風属性とはそれほど関係ありませんが」


「それはそう」


 今日の生存がまずありき、というのは間違いのないこと。

 その次に衣食住が来るでしょう。


 食料の半分は魔物素材。

 残り半分が農作物。

 魔物素材は戦闘によって手に入るものである。


 とすると、やはり戦闘者の評価が高くなる。


「うーん。社会の余裕が足りないですわね」


「社会の余裕ですか?」


 衣も、魔物由来のものがほとんどです。魔物の皮、魔物の毛織物、クモの魔物の糸を使った繊維。採取してきた植物繊維。

 農作物としての繊維は限定的です。食料が優先されているためです。


 正直服の肌触りはよくありません。魔物糸を織った服は最も良いですが、魔法伯爵令嬢でも普段着にできるほど流通しておりません。

 よそいき用といざというとき用に所有しておりますが、まあ贅沢品です。


「今の贅沢品が当たり前になるような発展を遂げれば、重視されるものも変わってくるとは思いませんか?」


「それは体を張っている方々が評価されにくくなるということでは?」


「あー。よくないかしらね?」


「嫌がる方は多いかと思います」


「ですわねえ」


 しかし、社会に余裕がない状況もまたよろしくないと考えます。


 ものに溢れた前世の記憶のせいかもしれません。


 しかし、もしも何かのバランスが崩れれば滅びかねない戦いに満ちた社会よりは。

 余裕があるということは、もしもの時の可能性が増えるということでもあるはず。


 そんなような理論武装を頭の中で泳がせながら、わたくしは考えを巡らせます。


 そして。


「やはり食料からですか」


 つぶやいたわたくしを、ハナが困ったような表情で見つめるのでした。

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