4.家族の交流ですわ
本日は3話投稿しています。1話目
「お父様、音が外に漏れるようなので、遮音結界をお願いできます?」
「おお、任せておけ」
食事のあと、親子四人で、再び練習場に向かいました。
四人と言ってもそれぞれ直属の従者は当然連れています。
ガイルお父様に、練習場の結界に遮音結界を重ねてもらいます。これであの雷鳴のような轟音で近所迷惑になることも無いでしょう。
「そのまえに、ちい兄様がやってみてくださいます?」
「ああ、そうだな。なぜできなかったのか比較してみよう」
ゲイル兄様には、片付けの前に簡単に話していました。
そして練習場を片付けている間に、知らないうちに試してみたということですが、成功していたら危なかったかもしれません。
いえ、さすがに気づいて防御することはできるとは思いますが。
片付けの手間が倍になっていたでしょう。
再現できなかったのは助かりました。
ゲイル兄様が風の結界を生み出し、それを縮めて小さな球体とします。
「あ、なるほど」
「わかったか?」
「ちい兄様、結界の中の空気がちょうどいい感じのままになってますね。こうです」
もともと、呼吸のための結界であるため、ちい兄様は結界の大きさを変える際に内部の環境を快適な状態のまま維持しているようでした。
そこでわたくしは実践してみせます。ほら光った。
「おお、これは……まぶしいし熱いな?」
ガイルお父様がわたくしたちの周囲に新たに結界を張ると、熱さが和らぎました。
「これを解放するとドカンとなったのですわ。ちょっと元に戻してみますね」
わたくしは圧縮した結界を元のサイズに戻しました。
すると、光は消え、熱さもなくなってしまいます。
断熱圧縮、断熱膨張という現象に近いことが起きていたはずです。
内部の総熱量は変わらず、圧縮されると高温になり、膨張すると低温になります。おそらくですが。
真空だと絶対零度になるのでしたか。
発光したり熱を放射したりしているので実際には総熱量は低下しているかもしれませんが、大きさを元に戻せばほぼ同じような温度に落ち着くのでしょう。
先ほどは初めてで加減がわからなかったのですが、わかれば威力も調整できるのではないでしょうか。
「なるほど。内包する空気の量はそのままで結界だけを縮小するのだな?」
「そうです、ちい兄様。思ったよりすぐ熱くなるので気を付けてくださいまし」
「先ほどはどの程度でやったのだ?」
ゲイル兄様も試してみたいようです。
「大きさが五分の一ほどですから、百二十五分の一に圧縮したことになりますか」
「なるほど……ゲイル、やってみるか?」
「はい!」
そうして、ゲイル兄様が実際にやってみました。
ガイルお父様がわたくしたちを守ってくださいます。
練習場は再び光と熱と、衝撃波で蹂躙され、クレーターがもう一つ出来上がりました。
「破壊力はあるが、消費する魔力はそう多くないな」
「そうですね、中級の結界を使うだけですから」
男性陣が話し込んでしまったので、わたくしはハナのようにひっくり返ったエリーゼお母さまを助け起こします。
「あ、すまないエリーゼ!」
お父様が気づいてすぐにやってきましたが、お母様はすでにご機嫌斜めになっていました。
「ミルカ、もうこんな魔法は使ってはいけません」
「はい、どうしようもない時以外は止めておきますわ」
「そうしなさい」
お父様を無視してわたくしを叱るお母さまを見て、お父様は情けない表情になりました。
しかし、すぐに気を取り直して話しだしました。
「ミルカ、大事な話をしておこう」
「あなた?」
「風魔法使いにとって特に大事なことだ」
非難しようとしたらしいお母さまをとどめて、お父様は真面目な表情で続けます。それを見てお母様は引き下がりました。
「はい、お父様」
「風属性は範囲と射程に優れる属性だ。しかしそれを無秩序に使うとどうなるかわかるかい?」
「どうなるのでしょうか」
「味方を巻き込む」
なるほど、もっともなことです。
範囲攻撃の課題はやはりフレンドリィファイア。
敵だけを一方的に攻撃できることが理想であり、自爆や自傷を伴うことはよろしくないということはわかります。
仮に有効であっても、味方の信頼を損ないかねません。
何より犠牲は少ない方がいいに決まっているのですから、味方を巻き込む攻撃はよろしくない。
「だから風属性の魔法使いは範囲の制御にとても気を使うんだ」
「そうだったのですね」
「今見せてもらった魔法は制御されてない風を暴れさせるものだ。魔法で制御されていないからこそ、風魔法の防御で容易に止まる。しかし、風属性使いが守らなければ傷ついてしまうだろう。わかるね?」
「見落としがあるといけませんわね」
「それもあるね。だから大規模な攻撃魔法は気を付けなければならないんだ。魔法で守るのは安全に攻撃をするアプローチの一種類に過ぎない。風の大規模魔法を扱うのはよくよく勉強する必要があるんだよ」
「それが、学園で殿方が学ぶことの一つですのね」
「そういうことだね」
「わかりましたわ。不用意に使わないようにいたします」
わたくしが頷くと、お父様は微笑んでくださいました。
「それともう一つ、強力な魔物にはこの魔法は通用しないだろうから、いざというときにあてにしてはいけないよ」
「そうなのですか?」
「攻撃性の魔力を乗せていないといけないんだ」
「攻撃性の魔力、なるほど。わかりましたわ」
風属性の打撃力不足。そのカギはそこにあるのだと理解しました。
そうなると、すぐには対策は思いつきません。魔法の理屈は前世の知識にはないのです。
「殿方が持っている問題が少しわかりましたわ。お父様、ちい兄様、ありがとうございました」
「とはいえ、これを応用すれば……」
「そうですね」
わたくしが納得したところで、殿方チームは再び話し込み始めました。
わたくしはお母様と顔を見合わせ、戻ることにいたします。
お父様、ゲイル兄様、片付けの方、よろしくお願いいたしますね。
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