34.刹那で忘れましたわ
大変失礼いたしました。ミルカでございます。
先日の異常は何があたのかと申しますと。
「あ、そうですわね。こちらの温度の方が先に上がってますわ」
ということがあったのです。
焚火さんが温度の高低を結構な制度で認識できていたのです。
火属性魔法使いにとっては当たり前の知覚なのだそうで。
わたくしたちが風の流れを知覚できるのと同じようなものでしょう。
火の革ミトンに続き、大失態と言えましょう。
あの検証の時間はなんだったのか。
温度計の魔法?
刹那で忘れました。
火属性魔法使いの知覚を出力する魔法を作ればいいじゃないですか。
基準値を決めて魔道具化すれば定量的に確認できますよ。
おお、もう。
わたくしは不甲斐なさに動きを止めました。来世はもっと人を頼ろうと思います。
さて。
冗談はこのくらいにいたしまして。
最近他の属性を学べば学ぶほど属性の評価が妥当ではないかと思い始めましたがそれもさておき。
まず尋ねたのは、魔道具化が可能かということです。
「ええと、この程度の低い温度なら問題はないかと思います。しかし、結果をどうやって示すかをかんがえるところからですわね」
低い温度なら問題はない。
なるほど。
風属性としては風の流れをほかの属性に見られたくないのと同じでしょうか。
魔力を介していれば魔力視でバレバレではあるのですが。
火属性にとっては高温帯の温度変化を見られるのは抵抗があるのかもしれません。 それを見て何がわかるのかというのは、わたくしにはちょっと想像できないのですが。
サーモグラフィ?
それは今回の温度帯の内側ですわよね。
結果の出力方法については提案するとして、他にわかることはないか尋ねます。
「燃やせそうかそうでないか、ですかね」
「ほほう。例えばこの火ネズミの革は燃やせそうかい?」
「大変そうですわ」
「燃やせるようだね。いや、ちょっと面白いな。風車さんの考え方は。次々疑問が湧いてくるよ」
輝石さんが謎の楽しみを見出し始めました。
「属性による知覚の差というのは面白い研究対象かもしれない。私達は生まれつき違う知覚を持って生きているらしい。私は熱を高い精度で認識できないし、風の流れを見ることはできない。地属性にもそういったほかの属性にない知覚があるのか。どんなものが考えられるだろうか?」
「地面が硬いか柔らかいかなどは?」
糸車さんが輝石さんに応えます。
「わかるね。石についてもわかる。作物がよく育つかどうかは、君たちは見てわかるかい?」
「わかりませんわ」
「百花さんはどうかな?」
「はい。作物がよく育つ土かどうかはわかりますわ。ですが、石の硬さはわかりません」
給仕をしているハナまで話が振られます
「花属性と地属性の違いだね。水属性はどうだろう?」
「どうと言われましても……」
水瓶さんは困っているようです。
水属性特有の知覚とは何でしょうね。
わたくしも気になってきました。
「水が飲んでも害がないかはどうでしょう」
「わかりますわ」
「作物に水が足りているかはどうかな」
「気にしたことがありませんでした」
「空気中の水蒸気はどうですか?」
「水蒸気? 空気に含まれる水のことであればわかりますわ」
「すると、その水を介して風の流れがわかるのでは?」
「お待ちください。……意識すればなんとか」
「雨が降るかなどはどうでしょう」
「少し前にわかります。皆様はわからないのですか?」
「空気の感じが変わることはあるね。そのまま降らないこともあるけれど」
「待ってください。少し前というのは具体的には?」
「四半時よりは短いですわね」
急な夕立は避けることが出来そうですね。
「こういった認識の差は、家や属性の枠組みで研究しているのでしょうか?」
風羽さんがぼそりとつぶやきました。
質問するのが楽しくなっていたところに水を差す形でしたが、わたくしと輝石さんはおかげで一旦落ち着きました。
「しているならば、学園で教えてもよさそうなものだけれど」
「していないか、どこまで差があるかは秘匿したいか?」
仮想敵が情報を得ているかどうかというのは大事な情報です。
「共有していろいろなことに生かせればよいですのに。魔物征伐とか」
水瓶さんのことばは染み入りますね。水だけに。
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