32.検証実験の時間ですわ
さて。
研究の傍ら学生生活で青春しているのですが、どうでしょう。青春はいつでも見ることができますから、要望が無ければ研究の方をお伝えしていきましょう。
熱伝導性を調べる方法を考えました。
まず熱伝導性が高いものを調べる方法。
こう糸で吊って、長さをそろえて片方を触って片方をあぶる。熱くなる時間差を見る。
火傷しそうなので中止しました。
あぶるのではなく沸騰するお湯につける。
温度がほぼ固定されるなので比較しやすい点も利点でしょう。
火属性の素材ですからおかしな反応をする可能性はありますが、それはそれで。
対照実験の基準とする側、何と呼ぶのでしたか。
習ったような気がしますが忘れましたね、まあいいです。
基準側は銅。銅と同等かそれ以上の効果が出なければ、銅を使う方がいい。
逆に、断熱性が高い、つまり熱伝導性が低いものを調べる方法。
これは二重の箱の隙間に充填して使う想定です。
どうしたらいいでしょうね。
ミトンでも作って熱いものを触ってみましょうか?
それで候補を絞った後、別の試験方法でより詳細に。
あまり熱いと怖いので、40度くらいのお湯が入った鍋などどうでしょう。
鍋を調理場に借りに行ったところ、なんとそこには!
「お嬢様、どうなさいました?」
革のミトンを使う料理人の姿が!
「そ、その手袋は?」
「これですか、火ネズミの革なんですよ。熱い鍋を持っても全然熱くないので重宝しております」
見せていただいたミトンは、ずいぶん使い込まれていました。
観察力ぅ、ですかね?
幼い頃より調理場に通ってきたわたくし。どうやら頭脳が大人でも名探偵にはなれそうもありません。
世界はヒントに満ちているのにわたくしはなぜこんなにも鈍いのか……。
気を取り直しまして。
火属性の毛皮、革、毛織物、フェルトで比較してみました。
火吹きトカゲは革だけですが。
その結果、体感ですが、革はこの中ではそんなに断熱性が高くないことがわかりました。
魔法的な加工があれば別なのかもしれませんが。
しかし防具と言えば革の印象が強いです。物理防御力との兼ね合いでしょうか。
そしてなんとなくですが、毛皮とフェルトが高めで革と毛織物が低めであると感じました。
ここで二つが脱落です。
しかし、フェルトと毛皮はどっちがいいかちょっと判断が尽きません。
手で触った感覚ですからね。
定量的な比較が出来れば明白なのですが。
温度計を先に作るべきでしょうか。
どうやって作ればいいのでしょうか。水銀を細い管に入れる? でしたか?
水の沸点が百度かどうかもわからないのですよね。ここは前世とは違う世界ですから。
ガラス管に水を一滴入れて、真ん中あたりまでもっていき、そのあと密封し、沸騰している温度と、凍っている温度の時の位置を記録して目盛りを……。
透明で均一なガラス管……?
閃きました。
わたくし天才かもしれません。
盾の魔法のような物理的な干渉ができる力場を使えばいいのです。今作っている装置の魔法モデルではそうしていたではありませんか。
完全に定量的にとはいかずとも、大まかにどちらが上かはわかるでしょう。
こうして、わたくしは温度計(仮)の魔法を組み上げ、検証を進めました。緻密な操作は得意な方ですので!
もちろん指標が沸点と凝固点ですから、それを超えるとそれ以上としかわかりませんが。
ただし、あまり役には立ちませんでした。
毛皮よりフェルトの方が充填するにははっきりと使いやすかったからです。
フェルトもフェルトで、重い内箱を乗せると潰れてしまうので箱を支持するための足が必要なようでした。
しかし、足を通じて熱が通りそうですよね。
しっかりした強度は必要ですが、そこから熱が出てしまっては本末転倒。
骨?
鉱物?
わたくし考えました。
結局断熱性は空気でした。前世の記憶。発泡スチロール。二重ガラス窓。そして今回の実験結果。
対流しない空気が重要なのではないか。
それと新たに思い出したこととして、囲炉裏や七輪、線香立てなどは火を使い、なおかつ熱が外に漏れませんよね。
これって役に立ちませんか?
灰は断熱性が高いのでは?
それなら灰が固まった凝灰岩はどうでしょう?
どんどんアイデアが! ああ!
弁解させていただくと、この日はちょっと夜更かししてしまっておりました。
面白かった、続きが気になると思ったら、いいねと評価をお願いします。




