23.協力を要請いたしますわ
「風車さんの用件を聞こう」
飛行部用の据え置き魔道具の実験が終わり、魔道具部へ戻ってまいりました。
そして本来なら実験のまとめをするタイミングでわたくしの用件について尋ねられます。申し訳ないですね。
「本日は三件のご相談を持って参りました」
わたくしは魔道具部の皆様の前で、指を三本立ててみせます。
五名とも、わたくしの指に注目しています。
わたくしは改めて指を一本立てて説明を始めます。
「一つめは、風車家でわたくしが発明した魔法構造を魔道具にしたいのですが、試作品の外装などの製作に手を貸していただけないか、ということです。契約と報酬は用意できます」
「ふむ。それは、学園の魔道具部とは別の活動として行うということかな?」
「そうなりますわ。皆様に頼れなければ当家の魔道具師を使うことになるのですが、現在、風力式揚水機の保守整備で出払っているのと、魔道具部の皆様なら必要と思う属性が揃っていらっしゃるので」
わたくしが考えている構想では、地と火があるとよいはずなのです。装置自体ではなく実際の稼働を考えれば水も。
「我々も君が持ち込んだ案件を抱えているんだが。まあそれは置いておいて、どういう魔法なのかな? いや、魔法構造? ということは風力式揚水機と近いものか?」
輝石部長の頭の中で話が進んでいます。
わたくしはそれを見て二本目の指を立てました。
「それが二つ目の相談に関係あるのですが。輝石部長のお考えのように、風力式揚水機と近い要素を持っています。魔法だけで完結しない、組み合わせの産物なのです」
「大変興味深いね。しかも大層自信があるようだ。しかし、風車家の事業に我々が関わってもよいものなのかな?」
「それなのですが、実は現物を見れば再現はとても簡単なのです。例えば、風羽さんならすぐに同等の物を作れるようになるかと思いますわ」
「自分がですか」
「魔法構造だけなら学園に通う程度の風属性持ちであれば用意でしょう。魔道具制作を嗜んでいれば装置の再現もできますわ」
「まだ完成していないのだろう?」
「設計の段階でそれがわかるくらい簡単なのですわ」
わたくしが組み上げた風力式冷熱魔法構造(仮)は、魔法としては初歩の物しか使いません。
前世の知識が無ければ苦労するでしょうが、丸コピーするだけなら簡単でしょう。
「簡単なので、有用であればすぐに真似されてしまいます」
「真似をされるほど有用と言いたいわけか」
「便利ではあります。そして、それは仕方のないことなのですが、別の問題がありまして」
この国には発明者の権利を守る制度などありません。
もっとも、そういった制度があった前世でも技術盗用は問題になっていましたが。制度に穴があったのでしょうか。
「完成品の魔道具を分析すると、おそらく人が死んだり大けがを負うことになるのです」
「んん? どういうことだい?」
圧力をかけるものは大体爆発します。
完全コピーするだけなら火傷するくらいでしょうが、思い付きで高圧をかけたりするとどうなるでしょう?
甘く見て防御魔法を使わずに試す方が一定数いると思うのですよね。
「それは実際に見ていただければわかることですから、提案を受けていただけたら御覧に入れますわ」
問題はそこではないので。
「そこで、発明者からきちんと技術を提供されている者という証明を発行しようと考えておりますの。個人へ向けて」
つまりこういうことです。
風力式冷熱魔法構造(仮)についてきちんと伝授した証明を渡すことで、証明を持っていない者が真似をして作ったパクリ製品については、こちらでは知ったこっちゃありません、という宣言をするのです。
同時に、風力式冷熱魔法構造(仮)に使われている技術を応用した実験を勝手にやっても、風力式冷熱魔法構造(仮)の製品そのもの以外のことも関与しませんという宣言でもあります。
資格制度みたいなものですね。
どこまで意味があるかはわかりませんが、それを以ってわたくしは悪くないよねぇという主張を押し通す所存です。
「個人というのはどういうことかな?」
「わたくしの発明なのに将来家を出ることがあった場合に関われなくなるのは嫌なので」
風力式揚水機の保守整備は、風車家と懇意にしている家単位で発注しています。
たいていの契約は家単位で行うものなのです。その方が守る可能性が高くなりますしね。
ですがわたくしの将来を考えると、家単位では関われなくなってしまう可能性があります。
それは嫌なので新しい枠組みを作ろうと考えているのです。
もちろん社会的に通用するものになるかは別です。
しかし、風車のブランドがあれば、言い張り続けることで既成事実化できるのではないかと踏んでおります。
「協力していただければ、皆様にも発行させていただきますわ。所属する家が変わっても通用する証明を」
「それはちょっと面白そうな考えだ」
「嫁いだ後も自分に残るわけですか」
「そうでなければわたくしが真似する側になってしまいますもの」
個人より家の方が信用があるのがこの国の認識です。
家の利害の方が重く扱われるからです。気まぐれや暴走を止められやすい。
そこをあえて個人の扱いにすることで起きる変化を、この時はまだは甘く見ていました。
「最後の三つめは?」
三つめ。三つめですか。
改めて考えると大体お願いしたいことは言ってしまいました。
なんで三つあると言ってしまったのでしょうか。
とりあえずかぶるかもしれませんが。
「現状できているのは基礎構造だけなのですわ。ですので、魔道具化の際に不具合や改善点が出てくるかもしれません。その際に皆様の知恵と経験を貸していただければと」
「それはもちろん、参加することになればそうするがね。皆、どう思う? この件は魔道具部とは別の活動だから全員で関わる必要もないが」
「自分は風車さんの新しい発明に興味があります」
風羽さんは前向きのようです。一番に発言するほどです。
「わたくしは今のところあまり役立てないかもしれませんが、個人の証明書のほうも気になりますわね」
糸車先輩の領分は、確かに今のところあまり関係ないかもしれません。
ですが、資格制度的な考えの方に興味を持ってくださったようです。
さらに水瓶先輩、焚火先輩もせっかくだからと乗ってくださいました。
どうも結婚後も手元に残るというのが興味を引いたようです。
この仕組みが通用するようなら、女性技師の可能性が広がるかもしれません。
「では、学園の日は今まで通り。休日を使って風車さんの件を進めることにしよう。それなら文句は付けられないだろうから」
輝石部長がそう言って締めてくださいました。
こうしてお休みの日にお友達を家に呼ぶことになったわけです。外見上。
面白かった、続きが気になると思ったら、いいねと評価をお願いします。




