15.練習に対する姿勢ですわ
「ああっ!」
「きゃあっ!」
「やったっ! ってああっ!」
「一つにこだわっていては!」
「とめるのよ!」
木の葉六枚同時はやりすぎたかもしれません。
木の葉バレー(仮)のことです。
多人数の参加が求められ、二対二、三対三と増えていったり、全員ラインの内側に居なければならないようなどルールが提案され、取り消され、整備されていきます。
家では一対一の遊びでしたので、新鮮です。
同時に使われる魔法の数が増えれば予想外のことも発生します。
干渉し合って打ち消し、あるいは増幅。
強い風が吹いて体がラインを割ったのを見て押し出し合いになった時は故意にプレイヤーを狙うのは禁止となりました。
めくれ対策済みの飛行服なのはよかったと思います。
「わたくしたちは飛行部なのに何をしているのですか」
交代でコートの外に出たとき、呆れたような声をかけられました。
いまもコートの中で暴れているアリアに言ってほしいところです。
相手は風花魔法伯爵家のティア。先輩です。
風花家は初代が風、水、花の三重属性というとんでもない天才から始まった家。
とはいえ、それは初代だけで現在は風属性が中心の家です。
風祭家と非常に近い家であり、悪く言えば初代ほど期待されていないところを風祭家に取り入ることで補っているとも。
もちろんほかの風属性の家に劣らない伯爵家相当の実力を持っています。
むしろ風祭家の下でよく働いている武闘派家系と聞いています。
同格の魔法伯爵であるガイルお父様からの情報ですから間違いないでしょう。
ですから嫉妬による悪評という部分が強いのかと思います。
古い家からすると新興の成り上がりですからね。風車家もそういう目で見られることがあるのでわかります。
百五十年ほど続いている家でも新興扱いなのです。
この世界の皆さんはのんびりした感性のようです。
「恐ろしいからこそ、上達するのですよ」
ティアはまったくもう、という口調です。
しかし、わたくしとしては反対しておきたいところ。
実践主義、実戦主義のままですと、風属性の評価向上を見込めないでしょう。
変えていかなければいけないと思うのです。
「それができる方はそれでよいかと思います。ですが、複数の手法でより多くの方が飛行魔法を身に付けられるならその方が良いとも思います」
「風車さんが言うできる方も混ざって遊んでいるのはどうなのかしら」
「それはそれ、これはこれですわ、風花先輩。操作技術の練習にもなりますし、楽しいですから」
飛行魔法の練習ではなくその前段階ですから、飛行練習にはなりません。
なので木の葉バレー(仮)ばかりしていては飛行部としてはよろしくないでしょう。
それでも飛び降りの前段階の練習としてはそれなりに有用ではないでしょうか。
もう少しブラッシュアップが進めばなおよいでしょう。
魔法同士の干渉や気流同士の干渉なども比較的安全に体験できているようです。
そのようなことを主張してみました。
あと、アリアも喜んで参加していますし。
「風魔法使いが成長することはよいことですが……はしたなく声を上げながら騒いでいるのはどうかと」
「どうせなら楽しめるほうが良いのではないでしょうか。先輩方も、新入生に飛び降りさせるのを楽しそうにしていましたわ」
「そ、それも別の話ですわ?」
「そうですか? ……そうかもしれませんわ?」
当人が危機感を持って練習するからこそ成長するという理屈と、先輩方が新入生がビビってるのを見てにやにや……ニコニコしているのは別の問題、確かにその通りでしょう。
自分たちが受けた洗礼を次の世代が受けているのを見て愉悦するのは、前世で住んでいた国の、伝統的な文化だったかもしれません。いや、伝統的というには新しいかも?
そんな文化が今世でもあるのはなんとなく親近感を覚えますね。
あまりいい文化ではないような気はしますし、結束を高めるにはいいようにも思います。
同じ愚痴のネタを持っていると盛り上がりますものね。
それはそれとして。
「練習を楽しんでもいいと思いますわ」
好きこそものの上手なれという言葉もあります。モチベーションが効率につながることも前世では認識されていました。
この世界では魔法がシリアスに必要な武器であり生命線ですから、練習を楽しむというのは無縁なのかもしれません。
映画などでも軍隊の教練は大変厳しそうでしたしね。
どちらが正解なのかは正直分かりません。
ただ、シリアスだけではない方が、余裕があるのかと思います。
「数は力よ、ティアちゃん」
ティアと話していると、アリアが交代してコートから出てきました。
「今までなら諦めていた子が続けられるなら数が増える。よいことだと思うわ」
「アリア様」
「真面目なだけでは根気が続かない子も、遊びながらなら練習してくれるかも。ミルカちゃん、この遊びを広めてもいいかしら? きっと初等訓練にも向いているわ」
「もちろんですわ。風魔法使い全体の底上げになるなら、素晴らしいことです」
本当に底上げになるかはやってみないとわかりませんが。遊ぶばかりで逆効果になることもあるかもしれません。
効果測定とそれを踏まえた運用次第でしょう。
「ああ、そうですわ、アリアお姉様。別の話になるのですが」
「あら、なになに? また面白い提案?」
わたくしの言葉に、アリアは楽しそうに反応し、ティアは渋い顔になりました。
ひっかきまわされるのが歓迎しがたいのかもしれません。
「落下対策なのですが、魔道具は使わないのですか?」
魔道具とは、文字通り魔法の道具です。
魔法の補助から再現するもの、使い捨てから何度も使えるものまでさまざま存在しています。
「あー、魔道具ね。あれもちょっと問題があるの。以前にね」
アリアの困った表情は初めて見ました。
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