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16.護衛開始

ハイトの街から、王都ヴェルディナに向かう。

一言でそういっても、その道のりは長い。

ハイトを出てからヴェルディナまで、途中でいくつかの村や小さな集落で休憩をはさみながら、順調に進んでも5日から6日はかかる。今回は馬車が2台だから6日のほうで見ておいた方がいいだろう。


その間、護衛は徒歩での移動となる。王国兵の数名は馬に乗っていたし、ソフィアも今回はミーニィに騎乗で護衛にあたっているが、基本は徒歩だ。


とはいえ、護衛、といったものの常に警戒をしているわけではない。

適度に話をしている余裕は意外とあったりする。あったりするのだが。


「へぇ~!リリアちゃん宿屋の看板娘なんだ、俺もリリアちゃんの手料理食べてみたかったなぁ~」

「ほんと?王都でもどこかの食堂でお世話になる予定だから食べに来てよ」

「マジで!絶対行く行く!!」

「ダルクさんって何が好きなの?覚えておくよ」

「割となんでも食べるぜ。君が作ってくれたものならな」

「わぁ、じゃあ一番高い料理お出しするね!」


緊張感のかけらもない会話を馬車の中と外で繰り広げているのが、ダルクとリリアだ。

馬車の窓から顔を出して話しているリリアと、その隣を大股で歩くダルク。別に警戒をしなければいけないわけではないから、構わないのだが、どうにも緊張感に欠ける。


ちらりと王国兵の方を見たが、彼らは真面目にまっすぐ前を見続けていた。


彼らは王国兵ではあるが、最初にあった時と違って王国の紋章などは外して護衛をしていた。

顔合わせの際は、身分の証明でつけていたが、さすがに護衛時にまで紋章をつけていたら、いかにも王国が大事な人を連れて歩いていますという形になってしまう。


なので、今の装いとしては、少しお高い傭兵の護衛、といったていだった。


王国兵は基本、人の乗る馬車の方を護衛している。元々彼らの任務は「異世界転移者の護衛」なのだから当然だ。なので、その後ろに続く荷馬車の方は冒険者であるクレイルたちが担当しないといけない。

ソフィアはちょうど馬車と馬車の間のあたりにいて、ダルクが人の馬車の方でリリアと話をしているから、クレイルとエルは後方寄り、荷馬車の周辺を担当している。

イルシュアは、荷馬車の上に寝転がりながらあくびをしていた。


「ジャンヌ、平気そう?」

「問題ないわ」


光を避けるように荷馬車に乗り込んで膝を抱えて座っているジャンヌに声をかけたら、眉をしかめてはいるものの元気そうな返事が返ってきた。

前方の、リリアとダルクの笑い声が響くとその眉のしわを増やす。


「……耳障りな声が聞こえることを除けば」

「わぁ」


ジャンヌは、思ったよりもだいぶダルクのことを嫌っている。この態度を見れば、当初のクレイルに対する態度は可愛いものだったのかもしれない。

ジャンヌの嫌いなタイプにあまりにも合致しているから、もしかして、ダルクが嫌いだから軽薄でナンパな男が嫌いなのだろうか。

今のところ、ダルクは、軽薄だが光に強い吸血鬼という情報しかない。知り合いだったら何か聞けないだろうかとも思ったが、あまりにもそんな雰囲気ではなかった。


クレイルはジャンヌに話を聞くのはあきらめて、荷馬車の左側を位置取った。


「エルはさぁ、なんで冒険者になったの?」

「別に、なんでもいいだろ」

「え~、あるじゃんほら、腕試しとか、世界を見て回りたかったんだ、とか」


そこでは、荷馬車の上に陣取ったイルシュアが、エルに話しかけていた。

彼も今のところ何もすることがなくて暇なのかもしれない。ソロで冒険者をやっているエルが珍しいのか、面倒くさがられることも気にせずに適当な会話を広げている。

明らかに話したくないオーラが立ち込める相手に果敢に話しかけられるのは、イルシュアの強みだと思う。相手の反応を気にしないのはソフィアも同じだが、ソフィアは相手から返事が返ってこなかったら面倒くさくなって話しかけるのをやめるタイプだ。

その点、イルシュアは返事があろうがなかろうが勝手に喋る時がある。


どっちにしても、フォルテヴァラは割と相手の反応を気にしないのが多いといえる。

それがクレイルにはすこしばかり羨ましかった。

自分だったら、あんな話しかけるなオーラを出しているエルには話しかけづらい。面倒くさがられて無視されるのがおちだ。ジャンヌとだって最近ようやく自然に話せるようになったのに。


「……自分で何でもできるようになりたいんだよ」

「自立のためってこと?なるほどね、いいじゃん、若者だ」


だが、意外にもエルは面倒くさそうな反応はするが、イルシュアを無視することは無かった。

それどころかイルシュアの質問にもちゃんと丁寧に答えている。


「お前こそなんなんだよ。どうして冒険者やってるんだ」

「僕は保護者だよ。クレイルとソフィアのね」

「というかおまえ、なんだ、魔族か?」

「失礼な、魔族じゃありません。こんなかわいい猫ちゃんになんてこと言うの」

「猫は喋らないんだよ」


さらに、思ったよりちゃんとツッコミも入れている。

イルシュアが何なのか、というのは、割と大体の人たちはそういう種族なんだな、と思って受け入れるところではあるが、エルはそうは思わなかったらしい。


「王都でかなりの種族見てきたが、お前みたいなのは居なかったぞ」


続いた言葉になるほど、と思う。エルは各地を旅しているのだろうか、王都にも行ったことはある。そしてイルシュアみたいな生物は王都でも珍しい。

ただの喋るペットじゃなかったということだ。


「王都がすべてじゃないさ、南の群島諸国にはもっといろいろいるんだよ」

「そうか。そっちの出身か」

「いや、違うけど」

「…………さてはお前、適当だな」


うんうん、とクレイルはその話を聞きながら誰ともなく頷く。そう、イルシュアは適当なのだ。


どこまでが本当でどこまでか冗談なのかいまいちわかりづらいところがある。だからクレイルはイルシュアの話は大体話半分で聞くと決めている。

前に聞いたときは自分はこう見えてハーフエルフなんだ、とか誰かにのたまっていたし。ちょっと前には祐一に自分は乙女だみたいな話もしていた。


「まぁ、なんでもいいじゃないか。……詮索なしで行こうよ、お互いにさ」

「……先に聞いてきたのお前だろ」

「そうだっけ」


それを境に二人の会話が一度途切れた。


一方で離れたところのダルクとリリアの話し声はまだ続いている。話が尽きない人たちだな、と思いながらクレイルは改めて街道を見る。


この通りは主要な通りであることもあって、道は悪くない。山道ではあるがなだらかに整備されているし、馬車もすれ違えるだけの広さがある。

まだまだ周囲は木々が多いが、次の村に行く頃には幾分か視界も開けてくるだろう。


この調子なら、今日の夕方には休憩地点の村に着くはずだ。

このまま、平穏に終わってくれればいいとクレイルは思った。





■  ■  ■  ■


その願いの通り、1日目は順調だった。予定通りに村に入って、村の宿屋でそれぞれが休む。宿の部屋も十分にあったし、馬や竜を休ませる場所もある。

旅程を王国兵と冒険者で互いにすり合わせて、ゆっくり休む。

この流れで行ければ、もしかしたら6日はかからないかもしれない。


そんな思いが打ち砕かれたのは、2日目の昼過ぎだった。


休憩してから道を歩いて数時間、というところで、突如前方の馬が嘶き、全体の歩みが止まった。


「敵襲!」


前方の王国兵の叫び声。一団に一斉に緊張が走る。


その声に動いたのは4人。リリアを馬車の中に押し込んだダルクと、ミーニィから飛び降りたソフィア、それから、エルと、クレイル。冒険者の4人が馬車前方へ走り出す。

王国兵は護衛のために馬車の周りで陣をとる。


クレイルは走り出しながら叫んだ。


「イルシュア!」

「荷馬車は任せて~」


後方の荷馬車にはイルシュアとジャンヌがいる。その二人が荷馬車を囲っている以上そちらの心配はないだろう。それを確認して、クレイルは前を見た。


考えるのは後、否、動きながら考えろ。ジャンヌに言われた言葉を忘れずに、足を止めない。




「お前たち!何のつもりだ!」


馬車の先頭に立った王国の壮年兵が高らかにそう叫ぶ。その言葉を受けて、街道を塞ぐように道のど真ん中に立っている男の集団が笑った。

服装に統一感はあまりないが、誰もが動きやすく、使い古された服を着ている。ガラの悪い集団だ。


「俺たちは盗賊団『幽冥の契り』だ!」


彼らが名乗るまでもなく、盗賊団だという見た目をしているのはある意味有難かった。だが、その名に、何か聞き覚えがあったような気がする。

エルやダルクも一瞬何かに気がついたように眉を顰めたが、誰一人として足を止めることはない。


盗賊団は、すでに各々武器を抜いて道を塞いでいる。数としては10人以上は居る。思ったより多い。


「お前らが王国の護送団だってことはわかってんだ! 悪いことは言わねぇから中の……」

「せいっ」


そして、その宣言を待つことなく、ダルクが短刀を投げた。


まっすぐに放たれたそれは、盗賊団のリーダーと思しき男、今先ほど名乗りを上げている相手の眉間に向かって真っすぐ飛んでいく。

それが当たる寸前に、男は慌てたように飛んできたナイフを、持っていた剣で弾き飛ばした。


「どあぁ!!あぶねぇなこら!」

「こっちが喋ってんだろうが!」


今のは結構な奇襲だったと思うが、それを弾くだけの反射神経と実力は備えているらしい。並みの盗賊団ではないのかもしれない。

慌てたように叫びながらダルクを見て叫ぶ盗賊団リーダー。


「襲撃中にベラベラ喋ってる方が悪いだろ」

「なっ……」


そして、その集団の後ろにすでに回っていたエルが、低い体勢で剣を抜いた。

盗賊団の集団、その端にいたひとりの足を狙って一撃。反応しきれなかったそいつは、そのまま地面に転がった。


速い。


フォルテヴァラより先に、この二人が初撃を打ち出していることにクレイルは驚く。ソフィアだってかなり速いほうだが、それ以上だ。スピードに特化しているのかもしれない。


「くそ!ふざけんなよ!もういい、やれ!」


ほぼこちらからの襲撃の形になった状況に、名乗りも口上もあきらめて盗賊団が叫んだ。


「ソフィア!倒さなくていい!止めて!」

「わかったわ!」


今回の任務は護衛である以上、馬車側に盗賊を通すわけにいかない。

エルとダルクがすでに相手側に切り込んでいる以上、数を減らすのは二人に任せて、クレイルとソフィアは盗賊の足止めに専念したほうがいいだろう。

クレイルの声にソフィアも応えた。


だが、人数が多い、あまり広がられるのは困る。王国の護衛もいるが、いかんせん数が不利だ。どうしても乱戦になる。


「はぁ!」


クレイルは左手に展開させた障壁で相手の攻撃を受け流し、距離を取りながら別の盗賊をいなす。ジャンヌから教わった戦い方は、1対1のみでなく、複数を相手にするのにも有効だった。


ひとりを押し返すたびに息をつく。その都度周りを確認したが、幸いにも、どこも戦線は崩れていない。


クレイルが3人目の盗賊を押し返した時だった。

ダルクと打ち合っていたリーダーが叫ぶ。


「……ちっ、荷馬車はいい!人だ!人が乗ってる馬車のほうを狙え!」


その声にクレイルが振り返った。

だが、護衛側はそもそも盗賊を後ろに通してはいない。狙いを指示するまでもなく、荷馬車を狙っている盗賊はほとんどいなかった。最初からほとんどの盗賊が、人が乗っている馬車を狙ってきている。


であれば、今の号令は何の意味もない。

ならなぜ、わざわざ口に出した?


クレイルはその違和感に、盗賊団のリーダーを見てから、馬車を見る。その、視線の先。

馬車の左側の街道脇の木の上に、光を受けて反射する何か。


「弓兵がいる!!」


クレイルが叫んだのと、その矢が放たれたのが同時。

そして、直後、馬車を引いている馬の腿にそれが突き刺さった。


「まずいっ!」

「きゃぁあ!!」


誰かの焦る声と、馬の嘶き。

負傷した馬が驚いて暴れだすと、その後ろの馬車が大きく揺れた。馬車の中から悲鳴が響く。

このままでは馬が逃げ出してしまうか、最悪、馬車が倒れる。


「――――キゥアァアアアアアッッ!!」


だが、次の瞬間、近くに控えていたミーニィが吠えた。

吠えた、というよりは、怯える馬に向かって咆哮をあげる。その声は空気を震わせて、まっすぐ馬を捕らえた。瞬間、暴れる馬が静かになる。


否、ドラゴンに吠えられた馬が、恐怖のあまりに失神したのだ。



一瞬の、沈黙。



突然上がったドラゴンの咆哮に、敵味方問わず動きが止まる。

子供とはいえ、この世界における最高峰の存在だ、その威圧感に誰もが息を呑む。


ただ一人を除いては。


「よくやったわ!ミーニィ!」


ゴン、と。重い音を立てていつの間にか弓兵の潜む木の上にあがっていたソフィアが、槍の柄でその後頭部を殴り倒す。

間をおいて、どさりと弓兵が木から落ちる音。その音に、一斉に時が動き出した。






「クッソ!話がちげぇじゃねぇか!いったん引くぞ!動けないやつは拾っていけ!!」

「あ、こら!」


さすがに不利と悟ったか、盗賊団がすぐに撤退を指示して動き出す。


現れるのも突然だったが、それ以上に逃げ足も速い。負傷者を素早く抱えて森の奥に散り散りに去っていく。追いかけるかどうか迷ったが、馬の負傷もあるし、護衛対象を放り出して追うわけにもいかない。


そうこうしている間にあっという間に盗賊団たちが逃げていく。


「……なんだったんだ……」


なんにしても、盗賊団のことは追い払ったということで、よしということになった。






■  ■  ■  ■


「汝を己とたらしめる、巡り湧き支える血よ肉よ骨よ。願え、祈れ。拭い、癒し、正し、再生を促すことを―――ヒール」


その言葉と共に、イルシュアの手の先から淡い光が零れ、負傷した馬の太腿の傷を癒す。

中級の光魔法にあたる、治癒魔法だ。


先ほどの戦闘で負傷した馬は、この状態だととても馬車が引けないので、一度護衛の馬と交代をすることにはなった。

だが、それでもこのままでは歩けない。回復薬を使うか、治癒魔法を使うか、となったときに、選んだのは治癒魔法の方だった。回復薬は効果が早いのでいざという時のためにとっておきたい。

歩ける状態にするだけだったら、治癒魔法のほうが良いだろうという判断だ。


「ほわ~……すげぇ」


馬車から降りてきた祐一がその様子を見て感心した声をあげる。

治癒魔法と聞いて、ぜひ見てみたいと、見学を名乗り出たのだ。


傷が治った馬の背を、御者が優しくなでている。ひとまず、歩くことはできそうだった。


クレイルはそれを確認すると、馬車の中を覗き込んだ。

馬車の中には、座席に座って小さく膝を抱えるリリアを、老夫婦とルセルが宥めていた。


「大丈夫?」

「うん、ちょっと、馬車が揺れたから驚いちゃったみたいで」


クレイルがそう声をかけると、リリアの背を撫でながら、ルセルがゆっくり答えた。


「こわかったよ~お兄ちゃん」

「そうだね、もう大丈夫だよ」


リリアは涙目でルセルにしがみついている。馬車の中から大きい悲鳴が聞こえていたから心配していたが、やはりこういうことには慣れていないのだろう。ルセルの袖を掴む手が、いつもより強く握られている。


祐一は気を効かせたところもあるのだろうな、と、クレイルは改めて、イルシュアの隣で馬に話しかける祐一の姿を見た。彼の元気も、少しだけ空元気のようなものがありそうだ。


「なんにしても、けがは無さそうで良かったかな」


そのまま荷馬車の方に足を向ける。ソフィアとダルクが話している隣を抜けて荷馬車の後ろへ。

ジャンヌは荷馬車から一歩も動かなかったが、仕事のほうは完璧だった。もとより荷馬車側に盗賊はほとんど来なかったが、それでもジャンヌがいるかいないかではだいぶ違っただろう。


いつの間にか荷馬車の近くに戻ってきているエルは、森の奥をじっと見つめていた。


「少年、すこしいいか」

「あ、はい」


その時、前の方から王国兵に呼ばれてクレイルがそちらに向かう。

どうやら、今後の進路についての相談らしい。


「このままだと、夜の間に麓の村にたどり着くのが難しそうだ」

「襲撃もあったし、馬の負傷もありますしね」

「ああ、そこでだ。この先に野営ポイントがある、このまま無理して進むよりは、早めにそこで野営するのがいいんじゃないか?という話になってな」

「わかりました、みんなにもそう伝えます」


王国兵の判断に異論はない。無理して進んで変な場所で野営をする羽目になるよりは、場所がしっかりしているところでちゃんと野営をした方が良いだろう。

「少年」


その旨を一同に伝えようとして歩き出そうとしたクレイルを、しかし、壮年の王国兵はもう一度引き留めた。

何事かとクレイルは足を止めてそちらを見る。王国兵は、難しい表情をして周りを見てから、もう一度クレイルに目を向けた。


「君は、護送対象と友人だと聞いている」

「祐一ですか、ええと、はい」

「そうか、だから君を信頼して、言うのだが」


そうして声のトーンを一つ落とす。


「どうも、この襲撃はおかしい」

「……おかしい、とは」

「君も気がついただろう、あの盗賊団は、荷馬車よりも人の方を狙っていた」


言われて気がつく。確かに。盗賊であればほしいものは物資の方だろう。わざわざ抵抗するであろう中の人間を狙うより、荷馬車を襲ってものを奪っていった方が効率はいいはずだ。

だが敢えて馬車を狙った、ということは、人間そのものに用があったのだ。


「祐一が、狙い…?」

「加えて、盗賊団は、明らかに待ち伏せしていた」

「偶然ではなく?」

「我々が王国の護送団だと、言い切っていただろう」


そういえば、出会い頭に王国兵だということはわかっている、と言っていた。彼らは、現在王国の関係者だとわかるようなものはすべて外している。紋章しかり、装備品しかり。

馬車も普通の乗り合い馬車なのだ。

その馬車を止めてまで、名乗りを上げている。


つまり、この馬車が王国依頼のものだと、知っていた、ということになる。


「最初から、この馬車を襲うつもりだった?」

「ああ、我々がこの時間にここを通ることを知っていないと、呼び止められないだろう」


クレイルの背中に冷たい汗が流れる。

あまり考えたくないことだが、王国兵の言いたいことを理解してそちらを見た。わざわざピンポイントでこの馬車を狙ってきた盗賊。

もちろん、道行く馬車すべてに声をかけてきた可能性もないことはないが、そんなに楽観視してもいい事態ではないだろう。

クレイルを信頼しているから、という前置きで話された内容。それの意味するところは。



王国兵は声を殺してクレイルの耳元に口を寄せる。




「……内通者が、いるのかもしれない」





その言葉に、クレイルは静かに息を呑んだ。


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