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12.麦引き護衛

麦引き護衛。任務ランクはC、報酬は銀貨2枚。

任務ランクのわりに報酬は低めだが、クレイルは気にせずにそれを受けた。そういう約束だった。ちなみに、通常、荷馬車の護衛などといった任務は、EかD程度だ。今回それがCまで引き上げられている理由は、ひとえに出発時間にあった。


あたりはうっすらと陰り始めている。時間にして17時。今は昼の時間が比較的長い季節だが、それでも光の時間から闇の時間へと移行を始める時間だ。この時間から出発して、麦を引いて戻るとなると、20時を超える。あたりがすっかり夜になってしまう。夜道は視界が悪い。そのため、任務ランクが少し高めに設定されていた。


「ごめんな、こんな時間に」


任務の指定場所に行くと、荷台にたくさんの麦袋を乗せた青年が待っていた。


リリアの髪と同じ紺色の深い短い髪に、布で作られたつばの短い帽子をかぶっている。少しくたびれたシャツの袖をまくり上げ、手には作業用の手袋。足元は動きやすい素材で出来たズボンにブーツ、腰に荷物をいれるポシェットを下げ、さらに倉庫の鍵のようなものが複数ぶら下がっている。ボタンのないベストを着て、首元にスカーフを撒いた、優しそうな顔立ちの青年。

今回の護衛の対象でもある、リリアの兄、ルセルだった。


「リリアが、破格の報酬で依頼を受けてくれる人を見つけた、って言ってたけど、フォルテヴァラだったんだね」


すこしのんびりとした口調でルセルが口を開く。話好きのリリアに対して、兄の方はおっとりとした青年だ。自分とどことなく近い雰囲気があるその青年は、クレイルにとっては話やすい人でもある。


「俺としてはありがたいけど、よかったの?」

「はい、むしろ僕らとしても助かるというか……」


そう言いながらちらりと後ろを見る。そこにはフォルテヴァラのメンバーが全員そろっていた。ソフィアの隣にミーニィが控え、その隣を浮かびながらイルシュア。そして、件の少女、ジャンヌが眠そうに立っている。彼女は、薄く黒いヴェールを頭からかぶり光を避けているようだった。

これが日中の任務だったら、一緒に来てくれたかどうか怪しい。だが、夕方以降、暗くなり始める時間だから、と言ったらついてきてくれた。


今回の任務を受けた主目的は、ジャンヌと、どうにかして会話をすることであった。なので、大事なのは、まずは一緒に行動できること。そのための任務があること、それだけで十分ありがたい。クレイルとしてはありがたいのだが、ルセルはこれでいいのだろうか。


「でも何でこの時間に出発なの?」

「街道に魔物が出るようになってから、出来るだけ遅い時間にしようってずらしてるんだよねぇ」


同じことを思ったらしいソフィアがルセルに聞く。あちらはあちらで理由があるようだ。


「襲ってくる魔物も夜には寝ることが多いからさ、あとは今まで俺たちもずっと昼間に動いていたから、なるべく時間をずらした方が安全かなって」

「なるほどね」

「だからと言って暗くなりすぎても危ないから、こんな感じの時間、なのかなぁ」

「なのかなぁって」

「細かい時間は、リリアが設定してくれたから」


そうふんわりと説明するルセルにソフィアが不安げな目を向けている。無理もない、ルセルはどうにも細かいことは妹に任せきりなのだ。俺はあんまり頭使うの得意じゃないんだ、と言うのがいつも口癖だ。

なんとなくそれっぽい説明をルセルがしてくれたが、リリアがこの時間を指定したのは、ひいてはクレイルの要望を叶えるためもあるのだろう、と思う。

それを言い出したらまたジャンヌに嫌な顔をされそうだったから言わなかったが。


「まぁ、なんにしてもさっさと終わらせちゃいましょうよ」


ソフィアもあまり深く考えるタイプではない。ちょっと不自然な出発時間にも大して疑問を抱かずにそう言ってくれた。クレイルはそれに内心で胸をなでおろす。そして一同を見回した。


「そうだね、護衛任務だから、暗くなるまでは明かりは使わない。先頭はソフィアとミーニィ、その後ろにルセルさんと荷車、両脇に僕とジャンヌさん、後ろにイルシュア、でいいかな」


そうして軽く陣形を確認する。

ソフィアは頷いてミーニィを撫でた。ルセルも頷いて、イルシュアが問題ないよと空中でくるりと一回転。最後にジャンヌが、小さく頷いた。


「……わかった」


ひとまず、無視はされなかったことを確認して、クレイルは街の外に目を向けた。

空はゆっくりと、薄明に染まっていた。




■  ■  ■  ■




ハイト街の南の入口から出てしばらく、街道が細く分岐しているところで一同は足を止めた。

このまま南下したら山から下りて王都や別領地に行くための道、分岐を西に進めば水車小屋へとつながっている。


「前に、魔物に襲われたのが、この水車小屋に行く途中の道だって話だ」


ルセルが声を少しだけ低くしてそう話す。

その道は、主要なものと違い、必要がある人しか使わない道だ。広く整備されているわけでもなく、荷台を通したらほぼ余裕はない。襲われても前か後ろにしか逃げ場はなかった。


「狭いね」

「そうね、ちょっとやりにくいわ」


道を歩きながらソフィアがそうつぶやく。水車小屋までの道のりは、森とまではいかないが木が多く、竜騎士の得意とする空中戦には若干向かない。体の大きいミーニィの動きにも悩むところだ。

クレイルはちらりとジャンヌを見る。護衛任務を初めてしばらく、いまだジャンヌと会話をする機会には恵まれていない。そもそも、クレイルもジャンヌも自分から口を開くほうではないのだ。さらに、きっかけがいまだ無い。


「そういえばさ」


ふと、ルセルがクレイルを見ながら、少し気の抜けた雰囲気で口を開く。


「フォルテヴァラ、なんか一人増えた?」


それから、ジャンヌを見る。

今更か、というのが半分と、そういえば話してなかったか、というのが半分。街の人であるルセルとは、個人で顔をあわせることはあれ、パーティ単位で会うことはあまりない。

話題に上がったジャンヌは、ちらりとルセルを見るだけで、口は開かなかった。


「ええと、彼女はジャンヌ。イルシュアの知り合いで、吸血鬼なんだって」


クレイルが代わりに説明をする。とはいえ、そのくらいしか説明できないのだが。

ルセルはジャンヌに微笑む。


「そうか、よろしくお願いします。俺、何か気を付けることある?」

「……別に、魔物が出たときに騒がなければいい」

「逃げたほうがいいのかなぁ、邪魔になるから」

「やめて、そこから動かないで。ちょろちょろされたほうが困る」

「わかった、静かにしてるよ」


すごい、ジャンヌと会話できている。とクレイルは少しだけ感心した。ジャンヌはルセルを見なかったが、視線は合わせずとも会話にはなっている。

ルセルはそこで言葉を切ると、今度はクレイルに向き直った。


「……気難しい人?」

「まぁ、そうかな」


とはいえ、やはりそう感じたらしい。ちらりと小声でクレイルにささやく。クレイルも、曖昧に苦笑した。

ルセルはもう一度ちらりとジャンヌを見てから、ふふ、と小さく笑う。


「昔のリリアみたい」

「そうなの?」


そうこぼされた言葉に、今度はクレイルがルセルに聞く。あまりイメージがなくて首を傾げた。リリアとジャンヌだと、まるで真逆のような印象を受ける。ルセルは思い出すように歩きながら少し遠くを見た。


「人見知りで、俺にしかなつかない時があってさ、……あったよね?」


誰に言うともなく確認するようにルセルがつぶやく、あったよねと言われても、昔のリリアを知っているのはルセルだけである。


「どうしてそこで急に不安になるのさ」

「いやぁ、記憶があいまいで」


いつの間にか荷台に乗り上げていたイルシュアが会話に参加してくる。

二人にクレイルたちが会ったのは、クレイルたちがハイトの街に来てからなのだ。昔のリリアについては、兄であるルセルがもっと自信をもって言ってほしい。

こういうふわふわしたところが、ルセルらしいといえばルセルらしいのだが。


「水車小屋、見えてきたわよ」


そんな話をしていたら無事に水車小屋が見えてきた。

ひとまず魔物に襲われることはここまではなかったので胸をなでおろす。一方で、ジャンヌと会話をするような機会に恵まれてもいない。

魔物が出たら連携の一つや二つで声掛けはできただろうか、魔物が出なかったことを残念がるのはソフィアみたいだな、と、クレイルは心の中で少し反省をする。


何もないに越したことはないのだ。




■   ■   ■   ■



水車小屋についた頃にはすっかり辺りが暗くなっていた。

備え付けの魔道具に灯りをともし、ルセルが作業をする。麦を挽き、粉にして袋に詰めなおす。

クレイルたちは、それを待っている間外の見張りをしておくことにした。


「でも、なんで魔物が出るようになったのかなぁ」


魔物の被害が出るようになったのは最近だと、ルセルが言っていた。それまでは別にそんなことがなかった。暗くなった森の奥を見ながらクレイルがつぶやくと、隣にいたイルシュアが顔を上げてそちらを見る。


「魔力異常、ではないの?」


そこにふいにジャンヌが口をはさんできた。クレイルは驚いてそちらを見る。

荷台に腰を掛けていた少女が、闇に溶けるようにそう呟いてきた。


魔物とは、発生に条件がいくつかある。この辺に出る魔物は大体、野生動物が魔力を取り込んで変異したものだ。つまり、魔力自体が濃くなれば、魔物に変異する動物が増える。魔物が増えれば、その分人間を襲う個体も増える。

ジャンヌのいた遺跡も、魔力異常を感知してジャンヌが起こされたのだから、魔物が多いのもそれが理由ではないか、というのが彼女の見立てだ。


だが、イルシュアがそれは別の可能性を口にした。


「どっちかっていうと、食べるものがなくなったからじゃない?」

「食べるもの?」

「魔物だって、生命維持のために食事は必要としてるはずなんだよね」


グライフェンの魔力異常は、祐一がこの世界に呼び出されたときに観測されている。おそらく、それは一過性のもので、魔物を大量発生させる要因であるとは考え難い。

それよりも、原因となる異常はこの世界に発生していた。


「この辺の魔物はもともと野生動物を主食にしてたはずなんだよ。魔物になる個体より、ならない個体のほうが多い、動物がいるのにわざわざ人間を襲うまでもない。でも、ここ数年、新しい野生生物が生まれない。すると、どうなる?」

「あ、そうか、食べるものがないから、街道に出てくるしかない」


そう、もっと重大なこの世界の異常。13年、新しい命が生まれていないというものだ。


13年というのは人間にとっても長いが、動物にとってもかなり深刻な問題になる。この世界の動物は割と寿命が長く、短いものでも20年近くはあるが、それでも新しい生命が産まれないのであれば、残っているのは老体だけになる。


「不思議と、魔物は新しく生まれるみたいなんだけどね」


さらに問題なことに、動物は生まれないのに、魔物は生まれているらしかった。すると、魔物の数は増えるのに、魔物のエサとなる動物の数は増えない。

結果、増えすぎた魔物が縄張りを変えて、人間を襲うまでになる。


「まって、新しい命が生まれていないって、何?」

「ああ、ジャンヌは寝てたから知らないんだっけ」


だが、そこまで言ってからジャンヌがもう一度口を開いた。長いことグライフェンの遺跡で休眠をしていた彼女は、その辺の事情を知らないらしかった。


「ジャンヌさんって、何年くらい寝てたの?」

「……さあ、10年は経ってる、と思う」


この世界に新しい命が生まれていないこと、国がそれの解明を急いでいるようだが、まだ具体的な結果が出ていないことを説明する。

そこまで説明してから、ジャンヌは納得したのか、興味をなくしたのか、不意に目をそらした。


「そう、人間って大変ね」


吸血鬼は1,000年程度はざらに生きるらしいから、彼女にとっては大した問題ではないのだろう。淡々とそう言ったジャンヌに、クレイルとイルシュアが顔を見合わせる。

とはいえ、クレイルとしては、少しながら彼女と会話ができてうれしかった。一応、会話をしてくれる余地はあるらしい。彼女が興味のある話であれば。


その時だ。荷台にぼんやり座っていたジャンヌが急に立ち上がり、少し離れたところにいたミーニィが低いうなり声をあげる。




草木を分ける音。魔物の、気配がする。





「クレイル!出たわ!」

「ルセル!小屋から出ないで!」


続いてソフィアの鋭い声に、クレイルもそちらに駆けていく。

イルシュアは小屋の入り口のほうに向かい、中にいるルセルに声をかけた。


クレイルは剣を抜いて森の奥を見る。

暗い中から赤く光る瞳がいくつか、こちらを見て唸っている。やがて姿を現したのは灰色の毛をした狼のような魔物。視認できる範囲で5匹。


「フォレストウルフ?」

「みたいね」


クレイルの隣で槍を構えたソフィアが低く腰を落とす。

フォレストウルフは通常群れを成している。リーダーとなる個体がどこかにいるはずだが、それの姿は見えなかった。もしかしたらこの五体だけではないのかもしれない。

そう思ったときにはソフィアが踏み出していた。


「先手必勝!」

「ぎゃう!」


一番近くの一体の喉元を、鋭い踏み込みで一突き。それに続いてミーニィも駆け出す。だが、ウルフも動きは速い。すぐに残りが走り出し、ミーニィの突進を避けて回り込んだ2匹がミーニィを襲う。


「待ってって!」


あまりに早い戦闘開始に、慌ててクレイルが続き、ミーニィを狙った一体を後ろから切り伏せる。もう一体はそのままミーニィに飛び掛かるも、先にミーニィの太いしっぽがその体を横から払う。吹き飛んだ先にはソフィアがいる。彼女は飛んできたその体を叩き落すと、そのまま上から槍を突き刺した。


「抜けた2匹は…?!」


そして残った2匹を探すと、そちらはすでにジャンヌの足元で事切れていた。

速い。


クレイルは慌ててジャンヌの元に向かう。


「ごめんジャンヌさん、ありがと……」

「まだよ」

「っ?!」


ジャンヌは森の奥に目を向けたまま鋭くつぶやいた。

その言葉にクレイルもあわてて振り返る。森の奥からはまだ声がする。複数の狼の鳴き声、それらが草をかき分ける音とともにこちらに飛び出してきた。


「群れの残り…?!」


クレイルはそう考えたが、どうにも様子がおかしい。追加で飛び込んできたのは3匹だが、ここにもやはりリーダーらしき個体が見つからない。

すると、その後ろから、のそりと、違う影が姿を現した。


周りの木に体をこすりつけるように現れたそれは、低い草木を踏み荒らしながら歩いてくる。大きな体に鋭い爪をもったそれは、毛むくじゃらの体をしながら二本足で歩いている。2メートルを優に超える巨体が、小屋の明かりを受けて怪しく光った。




「ワイルドベア……」




それは、熊の見た目をしたウルフより上位の魔物だ。

その手には、先ほどのウルフたちより一回り大きいウルフを抱えている。群れのリーダーだったのだろうそれは、その体を爪で貫かれており、すでに命はない。


もしかしたら、先ほどのウルフたちはこれに追われながらこちらに来たのかもしれない。


とはいえ、魔物からしたら敵の敵は敵というわけでもない。ただ倒さなければいけない魔物が増えただけの状況だ。クレイルは戦況を整理する。


「どうする……?」


水車小屋の前にはイルシュアがいる。彼がいる限りルセルの安全はまず問題ない。であれば、フォレストウルフ3匹と、ワイルドベアを残るメンツで倒せばいい。

位置取り的には、水車小屋入り口にイルシュア、そこから森に向かってクレイルとジャンヌがいる、その先にフォレストウルフが3匹、少し離れたところにソフィアとミーニィがいて、ワイルドベアがその前に立っていた。


クレイルは迷う。ワイルドベアはクレイルたちで倒せない相手ではないが、一人で対峙するのは危険すぎる。できれば先にフォレストウルフを3人で片づけて、そのあと全員でワイルドベアに向き合いたいところ、なのだが。


「らぁ!」


なのだが、クレイルが状況を整理する前に、ソフィアがもうワイルドベアに手を出していた。

ソフィアがそのベアの胴体めがけて槍を突き出す。だが、その巨体に似合わない速さでワイルドベアは身をかわした。


「速いっ」

「ガァアア!」


そしてソフィアに向かって腕を振り上げる。ソフィアは素早くその場を飛びのく。ワイルドベアがたたきつけた地面がえぐれた。


「ああもう、こうなるとは思ったけど…!」


クレイルは慌てて声を上げる。あの位置取りだったらソフィアはまぁでかいほうを狙うだろうと思われた。ミーニィもいるから多少は安心だろうが、加勢には加わりたい。

クレイルは途方に暮れたようにジャンヌを見たら、彼女はあきれたような顔をしてため息をついていた。そしてクレイルを見る。


「ジャンヌさん……」

「……いいわ、オオカミはやる」

「あ、ありがとう!」


ジャンヌの言葉を受けてクレイルは走り出す。

動いたクレイルを追うためにフォレストウルフもその姿を追ったが、すぐに絡みつくように伸びてきた闇に体を捕らえられ、悲鳴のような鳴き声を上げる。

クレイルは振り返らない。


「ソフィア!」


ソフィアに向けて再度両手を振り上げるワイルドベアの元へまっすぐ駆け寄って、そのままその足を狙う。両手で剣を構えなおし、走りざまに右足を一閃。だが、手ごたえがない。


「かたすぎる…!」


金属のような手ごたえではなかった、確実に肉ではあった、だが、筋肉が厚すぎて刃が通らない。この巨体で自分たちと同等の動きをするのだから、相当なものだろう。

ソフィアが払うように振った槍の一撃も、たいして効いていないように見える。


ワイルドベアが振り向き手を払ってソフィアを横に薙ぐ。ソフィアは槍を立て、それを受け止める。その一撃を防ぐことには成功した、成功したが。


「きゃあ!」

「ソフィア!」


そのまま、踏ん張りきれずに地面を転がる。さらにワイルドベアが追い打ちでその手を振り上げる。クレイルは咄嗟にその間に入り、両手の爪を剣で受けた。


「ぐっ……!」


受けた。受けられたが、重い。押し込まれる。そして、咆哮。大きく口を開けて今度はその口でクレイルを狙った。まずい。避けたら後ろのソフィアに当たる。だが、押し返せるだけの腕力がない。

ミーニィがこちらへ駆け寄るが間に合わない。

そのまま大きく顔をあげたワイルドベアが、牙をむき。


――――閃光と共に、大きくのけぞった。


「ガァアぅ!!」


ぱん、と、目の前で火花が散る。続いてベアの悲鳴。イルシュアだ。小屋の入り口から、こちらの戦場、さらにはベアの目の前に、正確無比な小さな閃光のアシスト。


「クレイル!口!」


そして叫ぶ。クレイルの目の前には、いまだのけぞったままで開かれたベアの口がある。大きく開かれた口。

クレイルはその意図を理解する。

筋肉が厚くて刃が通らない、関節を狙うなども期待はできない、なら。


そしてもう一度、剣を構えなおす。右手でしっかり柄を握り、左手は柄の下に添える。


「ああああああああ!!」


そして、その刃を真っすぐに、ワイルドベアの口の中に、差し込んだ。


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