↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
BLゲームの世界でモブになったが、主人公とキャラのイベントがおきないバグに見舞われている  作者: 青緑三月
<ジルベール>シリアス ルート

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
127/133

9

 ―― 嬉しそうだな

 狭いテーブルに、沢山の料理が並んでいる。全てヴァルが、作ったものだ。

 中庭でジルベールの好物を聞いて、ヴァルに伝えた。買い出しを手伝おうとしたけど、もの凄く嬉しそうな笑顔で断られる。

 いくらなんでも三人分の材料を、一人で買うのは無理だ。ついていこうとしたけれど、スキップしそうなテンションで出て行ったからそのまま見送った。


「とても美味しいです」

「それは良かった。どんどん食べてくれ。レイザードも」

「ああ」

 料理を勧めてくるときも、俺とジルベールが話をしているときも、ずっと始終笑顔を浮かべている。

 こんなに嬉しそうにしている理由は、俺がずっとボッチだったからに他ならない。友達だと誰かを紹介したのもジルベールが、初めてだ。


 ―― ずっと気にしていたのかもしれない

 やることと言えば術の研究に稽古だけで、子供らしく友達と遊ぶこともしない。そんな俺を気にかけてくれていたのだろう。ありがたいと同時に、申し訳なくもなってくる。


「それ、まだ苦手なのか?」

「苦いだろ……食べる」

 皿に残っているものに、ヴァルが気づいて指摘してくる。少し苦みがあって、苦手な香草だ。別に食べられないわけじゃない。ちょっとだけ、苦手なだけだ。子供じゃないんだから、食べられる。


『ちゃんと、食べなきゃだめよ』

『だって苦いもん……』

 ―― なんだ?

 いきなり砂嵐の耳なりのような音が聞こえる。そのあとに、女の人の声が聞こえてきた。続いて子供の声だ。聞き覚えがある。前に見た夢だがバクだかわからないもので見た。親子だ。


『――、それが苦手なのか?』

『うん』

 また聞き覚えがある声だ。子供の父親だったはず……

 なんでこのタイミングなんだ。今は食事中だぞ。さすがに時と場所を、選んでくれないだろうか。


『そうか、でもそれを食べると良いことがあるぞ。父さんみたいに大きくなれる!』

『本当!?』

 絶対に嘘だろうって思うけど、子供は信じたみたいだ。声が明るくなった。

『ああ』

『じゃあ、食べる!』

 勢いよく子供が、苦手らしい野菜を口に入れる。知らない野菜の苦みが、口全体に広がる錯覚を覚えた。



「なっ泣くほど嫌だったのか!? ほら皿に、出していいから!」

「レイザード大丈夫かい? 水を飲む?」

 ヴァルの声の狼狽した声が聞こえる。それと同時に親子の会話も、聞こえなくなった。耳障りな耳鳴りも、消えている。

 ―― 泣く?

 意味が分からなかったが、焦った様子で皿を差しだしているヴァルと、心配げな表情をしてジルベールがこっちを見ている。状況から言って、俺が泣いているということらしい。

 確認のために顔に手を当てると、濡れているのが分かった。どういうことだろうか。もしかしてあのバグが発生すると、脳にとってストレスなのか。


「思いのほか苦かった。ヴァル大丈夫だ。ジルベール、水をもらえるか」

「うん、はいどうぞ」

 食事をしていたら、いきなり涙を流したんだ。ヴァルじゃなくても驚く。とりあえず苦手な香草を食べたからだと思われているから、変な言い訳をせずにのることにして答える。


「皿によそった分は、残していいからな」

「……大丈夫だ。食べる」

「レイザード、誰にも苦手なものはあるから、残しても良いと思うよ」

 言い訳をしなかったせいでもあるが、完全に苦手なものを食べて泣いたと思われている。恥ずかしい、もの凄く恥ずかしい。ヴァルには完全に子供扱いされている気がするし、ジルベールの気遣いが気恥ずかしさに拍車をかける。

 だが此処で違うと否定すれば、じゃあなんて泣いたんだって話になる。そうすると適当な理由が思いつかない。


 ―― もしかしてバグのせいかも、なんて言えないしな

 頭がおかしいと思われるだけならまだしも、ヴァルは心配性なところがあるから言えない。ジルベールにしても、心配かけたくないしな。


 ―― だが厄介だな

 バグの発生なんて、モブにはどうしようもない。そしてモブの都合なんて、全くお構いなしにバグが発生する。ということは店を開いているときにも、起きるかも知れないということだ。頭が痛いだけならまだしも、接客中にいきなり泣いたら目も当てられない。

 うん、そうだ、こうやって頭が重くなるだけなら、まだしも――




「レイザードに、友達が出来て嬉しいよ。ずっと仲良くしてあげてくれ」

「はい、もちろんです」

 ―― あれ?

 二人の声が上から、聞こえてくる。どういうことだと思ったが、自分がテーブルに突っ伏して寝ていることに気づく。

 たしか食事が終わって、しばらく話をしていた所までは記憶があるんだが――寝たのか。友達を家に招待して、寝たのか。最悪だな。

 突っ伏したまま後悔する。なんか俺の事を喋っているし、タイミング的に起きづらい。


「この子には、幸せになってほしいんだ」

 ゆっくりと、頭を撫でられた。

 なんかしんみりした空気を感じる。聞こえてきた声に、ヴァルに予想以上に心配をかけていた事を知る。なんかもう、親目線だ。


 ―― 今、起きるか

 まさに今、起きましたという体で、顔を上げよう。そうしよう。


『すまない』

 ―― 短時間、過ぎないか!?

 腕に力を入れようとしたときだ。声が聞こえた。


『辛い記憶なら、いっそ……』

 黒い、真っ暗な闇が広がる。けど恐怖はない。

『君の名前は、レイザードだ』

 知ってる。ヴァルとのファーストコンタクトだ。

 ―― なんだ、バグじゃないのか?

 そうヴァルと、初めてあったときの場面だ。けどなんだ、さっきの謝ってきた声も、ヴァルの声だったような気がする。もしかしてその前に、会っているのか?


 辛い記憶――そんものない。好きなゲームの世界に来れた。バグは続いてるけど、それ以外は何も嫌なことはない。ドラゴンに丸焼きにされたことはあるが、生きているから問題ない。騎士とか王族とかに、関わったけど今は問題ない。借金があるけど生活していけるし学園にも通えてる。萌えの供給が少ないけれど。妄想で補完してなんとかしてる。こればかりは、ロイと攻略キャラの都合もあるしな。


 もしかして最後のは俺の記憶で、あとはバグだろうか。俺じゃ無い誰かとヴァルが、話して――いや会話をしてない。ヴァルの声しか聞こえなかった。相手は誰なんだろう。これも先生の記憶なのだろうか。そうなると先生とヴァルは、知り合いと言うことになる。 ―― 今度、それとなく聞いてみるか


 ―― 今考えたところで、何も分からないしな。

 タイミングを逃した気がするけれど、いつまでも狸寝入りをしているのも気まずい。起きたら寝たことを謝って、あとヴァルに礼もして、招いたのだからジルベールを送って行こう。

 色々と頭の中で考えてから、重くなった頭を起こした。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。