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―― 目が輝いてないか?
サイジェスの講義を受けているとき、視界に入ったロイの表情に目がいく。心なしか嬉しそうに見える。
―― もしや、サイジェスとの好感度が、上がり中なのだろうか
ロイの視線を追うように、サイジェスを観察する。
顔は攻略キャラだから、整ってはいる。愛想がないからそのぶん、マイナスイメージを抱かれやすいが好感度が上がっていけば、笑顔を見せることもある。親しい相手には、優しさもみせる。ゲームではみなかったが、歳の離れた妹を大切にしていて家族思いだ。
なによりロイを、とても大切にしていた。画面越しに見た萌えイベントが、頭をよぎる。
―― よし
主人公であるロイが、幸せならそれで全てOKだ。
結論が出るまで講義が、進んでしまっていた。慌てて書き写して、講義に集中する。
「以上だ」
―― やっぱりサイジェスの講義は、分かりやすい
講義は段階が上がっていくほど、当然だが難しくなっていく。だから講義を受けただけでは、理解するのが難しいことも多くなる。大抵はあとで自分で調べて理解を深めていくのだが、サイジェスの講義はすごく分かりやすくて自然に頭の中に入っていく。教え方が凄く上手い。
講義が終わると早々に出て行く姿を見送りながら、また次も受講しようと決める。
―― あれ
ロイがサイジェスを追いかけるように、出て行く。もしや萌えイベント到来だろうか。
こうしてはいられない。早く追いかけないと、見逃してしまうかもしれない。荷物を手早くまともて、鞄にしまう。
「あの、レイザード」
いざ行かん、萌えの楽園へと立ち上がると、ジルベールが声をかけてきた。そういえば講義室に入ったときに、声をかけられて隣に座ったんだった。
「なんだ」
早くしないと萌えイベントを、見逃してしまうかもしれない。焦りながら待つが一向に、続く言葉が聞こえない。
―― 一体なんだ
久しぶりに萌えを、摂取できるかもしれない。早々に立ち去りたいが、友達であるジルベールが声をかけてきているのに会話が終わる前に立ち去るのも気が引ける。
―― けど萌えが、イベントが!
友情と萌えが、せめぎ出す。少し前なら遠慮なく置いていけたのに、なんで悩んでいるんだとも思うが現状はジルベールを置いて行くのに抵抗を覚えている。
―― よし、こっちから言ってしまえ
萌えと友情が頭の中でバトルを開始し始めたとき、いいことを思いついた。ヴァルにジルベールの好きなものを聞いてくるって、約束していたからそれを聞くのに丁度良い。
「昼の予定は、あるか? ないならつきあえ」
「もちろん!」
―― 間違えた
予定がないなら、つきあってほしい。そう言おうとしたのに、偉そうな言い方に――いつものことか。そういつも通りだ。俺が無愛想なのも、ジルベールが寛大なのもだ。
―― ところで
なぜジルベールは、俺の手を握ってきたんだ。返事と同時だったが、意味が分からない。
謎の行動に頭を悩ませて、同性ボッチのジルベールが友達に昼食に誘われたと喜んで奇行に走ったのだと結論づける。きっと今までそういうことが、なかったのだろう。
友達に誘われて喜んでいる。理由が理由だけに、無理に振りほどけない。
―― 全く
友達の手なんぞ握らずに、好きな相手の手を握ってこい。そうすれば少しは進展もあるだろうに。
―― 無理か
俺を練習台にして何度も予行練習をしているというのに、デートに誘えたという報告の一つも無い。それにあれだ、特別な相手だから、逆に気安く出来ないんだろう。友達相手なら出来ることでも、好きな相手になると難易度があがる。特別だからこそ出来ない。ジレンマだな。
―― だが危険だな
ここはBLの世界である。いくら俺がモブであるからと言って、男相手に手を握っていたらジルベールが好きな誰かが誤解しかねない。モブ相手にと思いもするが主人公と攻略キャラが上手くいくための踏み台みたいに使われるモブも一定数いるから油断はならない。
「この前、話をした中庭に、先に行っててくれ。俺は用事を済ませてから行くから、先に食べていても良い」
「待っているよ」
色々と考えて今は、そんな場合ではないことを思い出す。頑張って早口で伝えれば、やっと手を離した。
「そうか」
萌えイベントを堪能してからだから、待っている間に腹が空くだろうと気を利かせたのだが無用だったようだ。笑顔で返してきたジルベールに頷き返してから、サイジェスとロイの後を追った。




