32<ジルベール>視点
久しぶりに従兄のラージィが、訪ねてきてくれた。ユージスが帰ってから色々と話したみたいで、心配させてしまっていたみたいだ。
「良かったね」
「まだ機会をもらえた、だけなんだけどね」
心配かけ通しでも悪いから、少し話すことにした。
言うつもりがなかったのにとは言わないで、思いを伝えて機会をもらえたことを話すと笑顔を浮かべて喜んでくれる。
―― なんで兄弟で、こうも違うんだろうな
ここにいるのがユージスなら、からかいの言葉が出てくる。素直に喜んでくれるなんて、絶対にあいつはしない。
ラージィは穏やかで、俺のことをからかったりはしない。ただ優しいだけでないことは知っているけれど、それでもユージスとは違う。
「でも機会をくれたってことは、ジルベールのこと好きだって思ってくれているんじゃないのかな」
「そっ、そうかな」
そうだと良い。でもレイザードは優しいから、断り切れなかった可能性もある。でもそうだとしても、機会をくれたんだから好きになってもらう努力は続けたい。
「ふふっ、顔が赤くなってるよ」
「あっ……このことはユージスには、言わないでほしい」
口止めしなくても、言わないと思う。けれど万が一知られたら、からかいの手紙が来る気がする。それは嫌だから、念のため口にした。
「もちろん、言ったりしないよ。でも良かった。とても良い顔してる」
「えっ」
なにか変わっただろうかって考えて、心配かけ続けたことに気づく。
「兄さんが強引に色々と、決めところがあるだろう? 良いほうに転ぶか悪いほうに転ぶか、行ってみないと分からないなんていうし。でも話を聞いているうちにジルベールにとって、良いことなのかもしれないって思えて。でもやっぱり心配は、心配で」
「ラージィ……」
ユージスは俺に話す前に父さんと母さんに話を通してて、俺が了承したら直ぐに話が済むように準備を整えてた。ラージイが話を聞いたのは、全部決まったあとらしくて凄く心配させてしまった記憶がある。
学園に入学することが決まった後に、一人で行くって言ったのも拍車をかけたと思う。
「今のジルベールを見てたら、反対しなくて良かったって思ったよ。まあ僕が反対しても、叔父さんと叔母さんを説得済みだったから意味がないけどね」
「ごめん、心配かけて」
「謝る必要はないよ。勝手に僕たちが心配していただけだから」
「僕たち?」
「ああ、ほら父さんと母さんもね」
尋ね返すと少し間が空いてから、笑みを返される。伯父さんと伯母さんに心配かけたのも嘘じゃない。けど誤魔化された気がした。
なんでだか気になったけれど、誤魔化したってことは話したくないってことだと思うからあえて聞き返すのは止めた。
「まあこの話は、ここまで。レイザードさんのこと教えてよ。どんな人なの?」
やっぱり追求されたくないらしくて、話題を変えてきた。
でも浮かべている微笑みからは、嫌なものは感じない。ユージスに同じことを聞かれても、絶対に答えたくない。あいつにレイザードのことを教えたら、何をするか分からない。からかわれるのがオチだし、レイザードに迷惑になりそうだ。もう思いしった。
けどラージィから感じるのは、純粋に俺に好きな人ができたことを喜んでくれている感情だ。
―― 何を話そうかな
周りにレイザードが好きだって話したら、迷惑になるかもしれない。そう思ってたから身近にいる人で話したのは、俺の気持ちに気づいたロイくらいだ。
なんだか楽しく感じて、どんなことを話そうか考えた。




