28
なぜかジルベールが、自分の顔をどう思うかと聞いてきた。
―― いきなり、なんだ?
誰に言われなくても、美形だってわかってるだろう。お前は公式で唯一、美形認定されているキャラだぞ。攻略キャラはみんな顔が良いのに、言及はされていない。美形と書かれているのは、ジルベールのみだ。ということはこの世界では、ジルベールが一番顔が良いってことになる。
だというのに、なんでわざわざ聞いてくるんだ。外見を褒められて悦に入りたいのか。お前、そんな承認欲求の塊だったのか。
―― 大体、言われ慣れて……
格好良いだの顔がいいだの、耳タコレベルで言われてるだろう。全く意味が分からない。分からないが、事実を伝えてから気づいた。ジルベールは承認欲求が膨らみすぎて、自分の外見を褒めたたえられたいわけじゃない。
ただ好きな相手に、格好良いと言われたいだけだ。
ほら見ろ、俺があんな返しをしたから、顔が赤くなりすぎている。
―― すまない、ジルベール
バグとは言えジルベールが、俺を好きという現実をうまく消化できていないらしい。いや分かってはいる。理解もしている。バグが、発生しているんだ。けど自分で思っている以上に、現実を受け止め切れてなかったらしい。
―― 誰にとっても、デメリットしかない
モブが好きだと思わされているジルベールも哀れだし、もしかしてジルベールに淡い恋心を抱いているかもしれないロイも被害者だ。あと俺の萌えが、バグのせいで発生しない。現在、絶賛消滅中である。腐男子に萌えは、空気のようなものだ。ないと生命に、関わる。
俺が自分をロイだと思い込めればいいのだが、そうもいかない。あまりにも違いすぎる。できるならロイだと思い込み、自分の顔をロイの顔に当てはめて客観的に見られればいいのだが……そんな器用さは持ち合わせてない。
そもそも俺は自分が当事者になるのは、求めてない腐男子だ。どうやっても、そっち方面の妄想をするのは向いてない。
「俺の顔のことは、どう思う」
「すごく綺麗で、優しいと思う。レイザードの内面が……」
何か話題を変えなければと考えて、自分の話にもっていこうとして良いネタが思いつかない。しょうがなくキングオブモブである顔面について、尋ねるというむなしいことをしていた。
―― なんだろう、罰ゲームだろうか
ため息をつきそうになるのを堪えていると、ジルベールがおかしなことを言ってきた。
俺の顔が綺麗で優しくて、それが内面から来るものだと言ってきたんだ。いくら俺の顔面に褒める要素が、欠片もないからといって……いや苦労して捻りだしたのか。
いうまでもなく俺の顔に褒める要素は、何一つない。だからどんな言葉を使って褒めたところで、世辞が過ぎて嘘くさい。だから頑張って考えた結果が、内面を持ち出す言葉なのだろう。
だが俺の中身に、綺麗も優しい要素もない。なんといっても、腐ってるからな。ほら俺は、腐男子だし。
「そうか……ありがとう」
ジルベールからしてみたら、好きな相手の見てくれに褒める要素が一つもない。けど好きだから、褒めたい。なんとか良く言いたい。その結果なのだから、無理して嘘言わなくてもいいぞなんて本当のことは言えない。かと言って、そうだろうと、同意もできない。だから俺も頑張って、なんとか捻りだした礼の言葉を返した。




