27<ジルベール>視点
―― 俺、いま世界で一番、格好悪い気がする
いざレイザードの家まで来て、呼び鈴をならそうとして手が動かない。
目の前に来てから迷惑かなとか、約束もしないのに嫌な思いをさせないかとか気になりだしてあと少し動かせば良いのに動けない。
鳴らそうとして引っ込めて、また戻してを繰り返してたら開いた扉に顔をぶつけた。
レイザードには不審そうな目で見られるし、冷やしてもらって手を煩わせるし格好悪いを通り越して迷惑すぎる。
―― 格好良いか……
気を遣わせちゃったんだよな。あんな情けないところを見せてしまって、格好良いわけがないのに。言われた直後は顔が熱くて、抑えるのが大変だった。けど少したって、自分を冷静に見れて気づく。
じっと見すぎたせいか横を歩くレイザードが、気づいて声をかけてくれた。慌てて当たり障りのない話を振る。
―― なんでこう、もっと気の効いた話ができないんだろう
レイザードの前では、格好良くいたい。いつでも余裕でいて何かあったら力になれて、そういうのが理想なんだ。間違っても格好悪いところなんて、見せたくない。
―― なのに
実際は理想とは、ほど遠い。朝から情けないところを見せて、手を患わせて気まで使わせて――はあ……現実が、ままならない。
隣を歩くレイザードに、気づかれないように息を吐く。
―― どうやっても、格好良くない……でも
レイザードは、お世辞をいったりはしない。ということは、少しは何かしらどこかに格好良いって思うところがあったのかもしれない。
―― 格好良い、格好よ……いかな?
自分の姿を客観的に思い浮かべようとして、途中で嫌な奴の姿が浮かぶ。とてつもなく残念で嫌なことこの上ないけれど、俺とユージスの外見はよく似ている。俺はあいつを格好良いと思ったことは、一度もない。腹が立つと思ったことは、何度もあるけれど。
でも人は寄ってくるから、顔立ちはいいのかもしれない。そういえば俺の周りには二種類の適正持ちという以外の理由で集まってくる人たちもいた。大体が顔を赤くして、格好良いと口にする。
―― もしかして
レイザードは俺の顔みたいなのが、好きなのだろうか。そういえば前にも、格好良いって言ってくれたことがある。あの時も情けないところを、見せた恥ずかしい記憶がある。
「あのレイザード、俺の顔のことどう思う? 変だとか、格好良いとか好みとか……」
「顔? 世界で一番、美形だろ」
「えっ? あっ、ありがとう」
少しは俺の顔が好きだと思ってくれてるんじゃないかって、期待はしていた。けど予想以上の言葉が、返ってくる。
また顔は熱をもって赤くなってる気がするし、声もどもって格好悪い。けど嬉しくて、口元がゆるむ。
―― この顔で、良かった!
見えないように、反対の手を握り締める。
初めて自分の顔が、好きだと思えた。レイザードが好きでいてくれるなら、あいつに似てる顔も大歓迎できる。
ほかの人に言われたら、外見だけ見て何言ってるんだと思いそうだ。けどレイザードに言われると違う。見た目だろうと性格だろうと、どこでも彼が褒めてくれるのが嬉しい。
―― こんな風に思うのは、レイザードだけだ
母国にいたときは、こんな気持ちを抱くなんて考えもしなかった。レイザードに出会えたから、知った気持ちだ。
―― 少しくらい、感謝するべきかな
この国に来る切っ掛けを作ったユージスの顔を思い浮かべて、すぐに消して今度何か送ってやろうと思った。




