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家に戻ってからテーブルに、突っ伏す。長い溜息が出たが、どうしようもない。
―― 危機は脱した……いや、してないだろ
結論の先延ばしを、しただけだ。そもそも根本的な原意は、バグである。何も解決してない。
―― 断るって言って、済ますことも出来たのにな
バグとは言えど攻略キャラたるジルベールと付き合うなんて、歓迎すべき事案じゃない。俺は当事者じゃなくて、一モブとしてキャラのあれやこれを拝みたい派なんだ。
少なくともあいつの誘いを、常時断っているときなら出来たはずなのに。まだジルベールのことを、主人公が絡まなければモテてムカつくだけの美形とか、爆発してしまえと思ってた頃なら――きっと躊躇なく『断る』で済ませてた。
けど色々と迷惑かけたり巻き込んだり、友達と思うようになって親友にまでなった。これでもちゃんと友達だって、思ってたんだ。
―― だから、傷つけたくなかったんだ
断ったらどんな言い方したって、傷つくだろ。きっとあいつのことだから、嫌な顔をしたりせずに微笑んで平気な振りをする。それで迷惑をかけてごめんねとか、君が望むなら二と度近づかないとか良いそうだ。
―― 想像しただけで、腹が立つ
恨み言の一つでも言えば良いのに、あいつは言わない気がする。バグのせいでモブの俺を好きだと思わされて、告白までするはめになった。それだけじゃなくて振られて傷つくなんて、なんであいつそんな目に合わないといけないんだ。
苛々する。もの凄く腹が立つ。バグならモブの俺程度で、済ませておけ。なんでジルベールが傷つくかも知れないバグが発生するんだ。
あいつのバグが消えるなら、全部引き受けてやったって良い。誰かしらない親子のバグも、なんか不穏な映像や声が聞こえるバグも我慢してやる。だからジルベールのバグよさっさと修正されろ。
―― うん?
そういえば最近、バグらしきものが発生してない。以前はちょこちょこと発生していたのに、いつ頃からだ。ヴァルが帰ってきたあたりか。
―― まさか
俺の所にバグが発生しなくなった代わりに、ジルベールのバグが生じたのか? 嫌まさか、そんなことあるわけがない。
―― 待てよ
そもそもジルベールのバグは、いつから発生していたんだ。
もしかして茶を飲もうと、誘ってきたあれもそうなのか。ボッチだから友達がほしくて、声をかけてきたんじゃなくて、あの時には既にバグが発生していたのか。そうだとしたら、だいぶ前じゃないか。
―― そうか、そうだよな……
よく考えれば攻略キャラのジルベールが、モブと友達になりたいなんてありえない。あれはバグのせいで、俺を好きだと勘違いしたが故の行動だったのか。
―― そうか……
親友以前に、友達ですらなかったんだ。ジルベールはただバグの被害にあっていただけだ。
「……」
なぜだろうか。意外にショックを受けている気がする。もしかして友達が出来て喜んでいたのは、ヴァルだけじゃなくて俺自身も嬉しかったのだろうか。
そんな自覚はなかった。別にボッチでも、特になにも思わなかったはずだ。
―― なのに
なんでこんなに気分が、落ちていくのか。
また溜息をつきそうになったとき、ヴァルの顔が浮んだ。友達が出来たと伝えたら、輝かんばかりの笑顔になったときのだ。
―― 隠しておかないとな
凄く喜んでいた。それこそ目が輝いて、本当に嬉しそうに。ずっとボッチだった俺を、心配してくれていたが故の笑顔だ。言えるわけがない。
―― うん、大丈夫だ。何も問題ない
バグが直れば、めでたしめでたしだ。俺はまたボッチに戻るだけだ。ただそれだけだ。
だからなるべく早めに重大なバグを、修正してくれ。そっちの方が、あいつは幸せになれるから。
バグよ、さっさと消えろ。なんなら俺のはた迷惑なバクを、復活させても良い。頭が痛くなったり心臓に良くないときもあったが、それくらい我慢してやる。
―― だから
一刻も早くジルベールのバグよ、さっさと消えろ。その方がジルベールは好きな相手といられるかもしれないし、俺は萌えを摂取できる。良いこと尽くめのはずなのに、考えれば考えるほど気分が重くなっていった。




